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第一章 最初の国エルローズにて
第18話 いざ
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全速力でデリル村へと戻った総一朗はその足で村長宅へと向かい、残金を全て精算した。
「はい確かに。しかし……よく三日でこの額を揃えて来ましたね」
「それはもう。何としてもあの家に住みたかったので」
「はははっ。ではこれであの家はあなたの物ですな。そしてようこそデリル村へ。この村は若い者が少ないので移住は大歓迎ですじゃ。若い者はやはり都会が良いのじゃろうなぁ」
「それは人によるでしょう。若者でもこの村が気に入り残る者もいるでしょうし、俺のように移住して来る者もいる。俺は気に入ってますよ、ここ」
「ありがたい事じゃて。何かあったらいつでも訪ねてきて下され」
「はい、ではまた」
そうして支払いを済ませた総一朗は購入した家に向かった。
「あ、総一朗さん!」
「よ、ターニャ」
家に到着するとターニャが木の桶で井戸から水を汲んできた所に出くわした。
「どこに行ってたんですか?」
「ああ、ちょっとダンジョンにな。ここの支払いを済ませるためにちょっと稼いできたんだよ」
「じゃあ……もしかしてずっとこの村に?」
「お、おう。もちろんだ」
「はわぁぁ~……」
ターニャは目を輝かせ喜んでいた。
「私お母さんに知らせてくるね!」
「お、おう」
総一朗は胸の高鳴りを抑えて待った。しばらく待つとターニャが母親を連れて戻ってきた。母親はだいぶ体力が戻ったようで、ふらつきながらもゆっくりと歩いてきた。
「こんな格好でごめんなさいね。まだ本調子じゃなくて……」
「い、いえっ! あ、俺沖田 総一朗って言います! 今日から正式にこの家で暮らす事になりました!」
「ふふっ、お隣さんですね。私はターニャの母親で【メーネ】と申します。総一朗さん、娘共々よろしくお願いしますね」
「も、もちろんです! 何かありましたら遠慮なく俺を頼って下さい! お、俺達はもう家族みたいなものですからね! は、はははははっ」
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね」
遠回しに家族をアピールしてみたが上手くかわされたようだ。総一朗はがっくりと肩を落とした。
「じ、じゃあ俺家の中でやる事あるのでまた……」
「はい、ではまた」
総一朗は心の中で泣きながら家に入った。
「……くそう……。ガードが固いな。彼女の中でまだ俺はターニャの恩人でしかないか。いきなり告白した所で失敗するのは目に見えている。ここは焦らず時間をかけて親密になっていった方が無難か……。にしても……可憐だ……」
改めてターニャの母親、メーネの魅力を確認した総一朗は家の中を見て回った。
「ふむ……。一階は店でも開けそうだ。確かこの村に飲食店はなかったよなぁ。宿屋はあるが簡単な料理しか出ないし……。よし、ここは飲食店にしよう!」
そう決めた総一朗はまず一階にあったキッチンを魔法の袋に収納し、代わりに魔導具のキッチンをその場に設置した。
「これ、マジで便利だよなぁ」
蛇口を捻れば水は出るし、排水はどうなっているかわからないがどこかへと消える。なによりお湯まで出るのでかなり使い勝手が良い。
「酒場にしても良いかもな。まあその辺は後で考えるとして、次は地下室だ」
この家には地下室もあった。おそらく食材保管庫だったのだろう。
「ふっふっふ、ここに日本人なら絶対に必要な物を設置するぞ! 出でよ魔導バス!」
総一朗は風呂が大好きだった。しかしこの世界に来てからというもの、宿では湯に布を浸し身体を拭くか、川で行水するかのみだった。
総一朗は衣服を脱ぎ捨て浴槽に入る。
「かぁぁぁぁぁ~っ、たまらんっ! 日本人なら風呂だな! くぅ~っ、癒される!」
総一朗は久しぶりに湯に浸かり身体を癒していた。
「やっぱ風呂は良いなぁ……。それにしてもこの魔導具ってやつぁ便利なもんだな。誰が作ったんだろうな。とてもこの時代の物じゃなさそうだが……。ま、どうでも良いか、便利ならよ」
久しぶりの風呂を堪能した総一朗は各部屋に魔導ベッド、魔導トイレ、魔導クローゼット、魔導ライトを設置し、すぐにでも住める環境を整えていく。これらも全てダンジョンで拾ったものだ。
「おっと! 俺とした事が!」
総一朗はベッドで思い出した。
「は~い。あ、総一朗さん? どうしたの?」
「いや、俺とした事がさっき引っ越し祝いを渡すのを忘れてな。ちょっと中に入って良いか?」
「え? うん。ど~ぞ」
「邪魔するよ」
総一朗は家の中に入りターニャに尋ねた。
「なぁターニャ。もし引っ越し祝いがベッドだって言ったらお母さんどうするかな?」
「ベッド? え? なんでベッド?」
「いや、実はダンジョンで凄いベッドを拾ったんだよ。魔導ベッドっていってな、一時間横になるだけで疲れが吹き飛ぶんだ」
「へぇ~。そんな凄いベッドが……。大丈夫じゃないかな。今のベッドもだいぶ古いし」
(いや、そのベッドに夫婦の思い出が詰まってないかと言う意味で聞いたんだがな。ターニャにはまだわからないか)
やがて寝室の前に着きターニャが扉を開いた。
「お母さ~ん、総一朗さんが引っ越し祝い持ってきたんだって~」
「引っ越し祝い? あらあら、悪いですわ」
「いえいえ。挨拶は大事ですから。で、品なんですが実はベッドでして」
「ベッド?」
「はい。ダンジョンで魔導ベッドを拾いまして。メーネさんずっと寝てるじゃないですか。だから一気に疲れが吹き飛んで自動で綺麗になり湿気もたまらないベッドと交換しないかなって……。いや、いらないならいいんですが」
するとメーネは笑顔でこう返してきた。
「えっと……さすがにそこまで高価な物はちょっと……」
「いえいえ! 拾い物ですし、自分の家にはもう置く場所もありませんから。それに……まだ本調子じゃないでしょう? ターニャに心配かけないためにももらってくれませんか?」
しばらく悩んだ末、メーネは総一朗の厚意を受ける事にした。
「わかりました。ターニャに心配かけたくはありませんから。でも……どうしましょう? とても一人で動かせませんが……」
「あ、それは俺がやっておきますよ。このベッドに必要なものはあります?」
「えっと……シーツや布団などは……」
「全部付属されてますね」
「なら大丈夫……かな?」
「わかりました」
総一朗はまず元からあったベッドを魔法の袋にしまった。そして同じ場所に魔導ベッドを設置する。
「はい、これで大丈夫です。サービスで魔導ピローもつけておきました。なんかすぐに眠りに入れて夢見がよくなる枕みたいです」
「そんな……何から何までありがとうございます」
「いえいえ。これからはお隣さんですからね。助け合っていきましょう」
「ふふっ、じゃあ甘えちゃおうかしら。ありがとうね、総一朗さん」
「はっ!」
こうして親密になるための第一歩を踏み出した総一朗だった。
「はい確かに。しかし……よく三日でこの額を揃えて来ましたね」
「それはもう。何としてもあの家に住みたかったので」
「はははっ。ではこれであの家はあなたの物ですな。そしてようこそデリル村へ。この村は若い者が少ないので移住は大歓迎ですじゃ。若い者はやはり都会が良いのじゃろうなぁ」
「それは人によるでしょう。若者でもこの村が気に入り残る者もいるでしょうし、俺のように移住して来る者もいる。俺は気に入ってますよ、ここ」
「ありがたい事じゃて。何かあったらいつでも訪ねてきて下され」
「はい、ではまた」
そうして支払いを済ませた総一朗は購入した家に向かった。
「あ、総一朗さん!」
「よ、ターニャ」
家に到着するとターニャが木の桶で井戸から水を汲んできた所に出くわした。
「どこに行ってたんですか?」
「ああ、ちょっとダンジョンにな。ここの支払いを済ませるためにちょっと稼いできたんだよ」
「じゃあ……もしかしてずっとこの村に?」
「お、おう。もちろんだ」
「はわぁぁ~……」
ターニャは目を輝かせ喜んでいた。
「私お母さんに知らせてくるね!」
「お、おう」
総一朗は胸の高鳴りを抑えて待った。しばらく待つとターニャが母親を連れて戻ってきた。母親はだいぶ体力が戻ったようで、ふらつきながらもゆっくりと歩いてきた。
「こんな格好でごめんなさいね。まだ本調子じゃなくて……」
「い、いえっ! あ、俺沖田 総一朗って言います! 今日から正式にこの家で暮らす事になりました!」
「ふふっ、お隣さんですね。私はターニャの母親で【メーネ】と申します。総一朗さん、娘共々よろしくお願いしますね」
「も、もちろんです! 何かありましたら遠慮なく俺を頼って下さい! お、俺達はもう家族みたいなものですからね! は、はははははっ」
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね」
遠回しに家族をアピールしてみたが上手くかわされたようだ。総一朗はがっくりと肩を落とした。
「じ、じゃあ俺家の中でやる事あるのでまた……」
「はい、ではまた」
総一朗は心の中で泣きながら家に入った。
「……くそう……。ガードが固いな。彼女の中でまだ俺はターニャの恩人でしかないか。いきなり告白した所で失敗するのは目に見えている。ここは焦らず時間をかけて親密になっていった方が無難か……。にしても……可憐だ……」
改めてターニャの母親、メーネの魅力を確認した総一朗は家の中を見て回った。
「ふむ……。一階は店でも開けそうだ。確かこの村に飲食店はなかったよなぁ。宿屋はあるが簡単な料理しか出ないし……。よし、ここは飲食店にしよう!」
そう決めた総一朗はまず一階にあったキッチンを魔法の袋に収納し、代わりに魔導具のキッチンをその場に設置した。
「これ、マジで便利だよなぁ」
蛇口を捻れば水は出るし、排水はどうなっているかわからないがどこかへと消える。なによりお湯まで出るのでかなり使い勝手が良い。
「酒場にしても良いかもな。まあその辺は後で考えるとして、次は地下室だ」
この家には地下室もあった。おそらく食材保管庫だったのだろう。
「ふっふっふ、ここに日本人なら絶対に必要な物を設置するぞ! 出でよ魔導バス!」
総一朗は風呂が大好きだった。しかしこの世界に来てからというもの、宿では湯に布を浸し身体を拭くか、川で行水するかのみだった。
総一朗は衣服を脱ぎ捨て浴槽に入る。
「かぁぁぁぁぁ~っ、たまらんっ! 日本人なら風呂だな! くぅ~っ、癒される!」
総一朗は久しぶりに湯に浸かり身体を癒していた。
「やっぱ風呂は良いなぁ……。それにしてもこの魔導具ってやつぁ便利なもんだな。誰が作ったんだろうな。とてもこの時代の物じゃなさそうだが……。ま、どうでも良いか、便利ならよ」
久しぶりの風呂を堪能した総一朗は各部屋に魔導ベッド、魔導トイレ、魔導クローゼット、魔導ライトを設置し、すぐにでも住める環境を整えていく。これらも全てダンジョンで拾ったものだ。
「おっと! 俺とした事が!」
総一朗はベッドで思い出した。
「は~い。あ、総一朗さん? どうしたの?」
「いや、俺とした事がさっき引っ越し祝いを渡すのを忘れてな。ちょっと中に入って良いか?」
「え? うん。ど~ぞ」
「邪魔するよ」
総一朗は家の中に入りターニャに尋ねた。
「なぁターニャ。もし引っ越し祝いがベッドだって言ったらお母さんどうするかな?」
「ベッド? え? なんでベッド?」
「いや、実はダンジョンで凄いベッドを拾ったんだよ。魔導ベッドっていってな、一時間横になるだけで疲れが吹き飛ぶんだ」
「へぇ~。そんな凄いベッドが……。大丈夫じゃないかな。今のベッドもだいぶ古いし」
(いや、そのベッドに夫婦の思い出が詰まってないかと言う意味で聞いたんだがな。ターニャにはまだわからないか)
やがて寝室の前に着きターニャが扉を開いた。
「お母さ~ん、総一朗さんが引っ越し祝い持ってきたんだって~」
「引っ越し祝い? あらあら、悪いですわ」
「いえいえ。挨拶は大事ですから。で、品なんですが実はベッドでして」
「ベッド?」
「はい。ダンジョンで魔導ベッドを拾いまして。メーネさんずっと寝てるじゃないですか。だから一気に疲れが吹き飛んで自動で綺麗になり湿気もたまらないベッドと交換しないかなって……。いや、いらないならいいんですが」
するとメーネは笑顔でこう返してきた。
「えっと……さすがにそこまで高価な物はちょっと……」
「いえいえ! 拾い物ですし、自分の家にはもう置く場所もありませんから。それに……まだ本調子じゃないでしょう? ターニャに心配かけないためにももらってくれませんか?」
しばらく悩んだ末、メーネは総一朗の厚意を受ける事にした。
「わかりました。ターニャに心配かけたくはありませんから。でも……どうしましょう? とても一人で動かせませんが……」
「あ、それは俺がやっておきますよ。このベッドに必要なものはあります?」
「えっと……シーツや布団などは……」
「全部付属されてますね」
「なら大丈夫……かな?」
「わかりました」
総一朗はまず元からあったベッドを魔法の袋にしまった。そして同じ場所に魔導ベッドを設置する。
「はい、これで大丈夫です。サービスで魔導ピローもつけておきました。なんかすぐに眠りに入れて夢見がよくなる枕みたいです」
「そんな……何から何までありがとうございます」
「いえいえ。これからはお隣さんですからね。助け合っていきましょう」
「ふふっ、じゃあ甘えちゃおうかしら。ありがとうね、総一朗さん」
「はっ!」
こうして親密になるための第一歩を踏み出した総一朗だった。
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