幕末の剣士、異世界に往く~最強の剣士は異世界でも最強でした~

夜夢

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第一章 最初の国エルローズにて

第15話 修行と資金集め

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「おぉ、ここがデリル村か!」
「わぁ~、のどかで良い村ですね~」

 三人は半日足らずでデリル村へと到着していた。

「結構な速度で走ったんだがなぁ」
「何を言う。お主、ちゃんとこちらの体力と限界速度を見極めて走っていただろう? お主一人ならもっと早く着いた。違うか?」
「まぁそんなんだけどな。さすが侍だな、体力は申し分なさそうだ」
「ふん、化け物め」

 デリル村へと戻った総一朗はまず宿に向かった。

「いらっしゃいま──あ、オキタさん!」
「ただいま。また世話になりたい。部屋はあるかな?」
「はいっ、前と同じ部屋が空いてますよ」
「わかった。じゃあそこともう一部屋、できたら二人部屋を頼む」
「は~い、では鍵をどうぞ」
「ありがとよ」

 総一朗は鍵を受け取り前金で宿泊代を支払う。そして二人部屋の鍵を義経達に渡した。

「明日からダンジョンに向かう。今日はゆっくり休んでくれ」
「うむ。お主はどうするのだ?」
「少し出掛けてくる」
「わかった」

 総一朗は二人を宿に残し雑貨屋に向かった。

「いら──兄ちゃんか、戻ったのか?」
「ああ。実は少し相談があってな」
「相談? なんだ?」

 総一朗は雑貨屋の店主にどうしたら家が持てるか、またその値段はいくらか尋ねた。

「家を買いたいのか? 空き家を買うのと一から建てるのとじゃ値段が違うが」
「そうだな、空き家とはどれくらい広い?」
「まぁ……大人五人暮らせるくらいかな」
「ならそれで良い。誰に言えば買える?」
「そりゃ村長だ。ただ家を買って住むとなると毎年税を納めなきゃならなくなるぜ? 兄ちゃんは冒険者になったんだろ?」

 総一朗は笑って言った。

「別に冒険者だからって家を持っちゃいけない事もないだろ。それに俺はこの村が気に入ってるからな。定住したいくらいにな」
「住むなら王都の方が便利だろうに。変わり者だな、ははははっ」
「まぁ稼がせてやるから期待しときな」

 すると店主の耳がピクリと反応を示した。

「兄ちゃんまさか……」
「おう、ダンジョン攻略再開だ。お宝たんまり手に入れてきてやるぜ」
「本当か!? そりゃ助かるぜ! 次からは後払いになるが大丈夫か?」
「ああ。ちゃんと金がもらえるならな」
「ははっ、任せな。売る場所を王都に変えるからな。王都なら飛ぶように売れるだろう。レア物頼むぜ」
「ああ、売るのは任せた。仕入れは俺が担当してやろう」

 自分で売りに行く手間を考えれば少し損はするだろうが楽だ。総一朗はそう考え雑貨屋の店主と組む事にした。

 そして雑貨屋を後にした総一朗は村長の家を尋ねた。

「こちらでお待ち下さい」
「ああ、お構いなく」

 お茶を出してくれたのは村長婦人だろうか。総一朗は家を買いたいと告げると応接間に通された。そしてしばらく待つと優しそうな老人が室内に入ってきた。

「お待たせしました。ワシがデリル村村長です。早速ですが家を買いたいそうで」
「ああ。空き家で良いから大きな家が欲しい」
「わかりました。では村に定住するという事で構いませんかな?」
「ああ。ここはのんびり落ち着ける良い村だ。できれば定住したい」
「はっは、わかりました。では空き家に案内しましょう」

 総一朗は村長に案内され村を歩く。

「ん? この道は確か……」
「あ! 総一朗さん!」
「やはりか」

 そこはターニャの家の隣だった。 

「おや? ターニャの知り合いでしたか」
「ああ。以前護衛の依頼でな。それでこの村に来たんだ」
「なるほどなるほど。ではこちらの物件で決まりでしょうかな? 一応中も見ますかね?」
「ああ、一応確認だけ」

 するとターニャが話し掛けてきた。

「総一朗さん、もしかしてこの家を買うの?」
「ああ。俺もこの村に住もうと思ってな」
「ほんとっ!? ずっと住むの!?」
「ああ、多分な」
「や、やったぁぁぁぁぁぁっ! 総一朗さんとお隣さんだ~!」

 ターニャは元気に飛びはねながら歓喜していた。

「おいおい、まだここに決まったわけじゃないぜ?」
「やだ~! 隣じゃなきゃやだ~!」
「困ったなぁ……」
「はっはっは、では中へ。ここは最近まで人が住んでいましたのですぐ住めるでしょう」
「あ、ああ」

 総一朗は家に入り中を見渡す。

「ほ~。これはなかなか……」

 一階は食堂のようになっており立派なキッチンが備え付けられていた。

「ここは元酒場でしてな。ですが家主はあまり客が入らず店を王都に移してしまったのです。二階が居住区になっております。ささ」
「あ、ああ」

 そして二階に上がると廊下があり左右に二部屋ずつあった。どこも家具や荷物がなくガランとしているがなかなかに広い。

「気に入った。村長、ここを買うとしたらいくらになる?」
「土地代含め黒金貨七枚ですな。それと初年度の税。これは売却額に入れておきますでな」
「なるほど。では今黒金貨四枚払う。残りは後日でも大丈夫か?」
「はい、お支払いいただければ」
「わかった。それとさらに二人追加で住ませたいのだが」
「ではそちらも含めましょう。全部で黒金貨七枚、これで結構です」
「気前良いな」
「この村は人が出ていくばかりで若者も少ないですからな。住んでくださるならこれ以上ありがたい事はないのです」
「なるほど。じゃあ後日必ず支払いに行くよ。数日待ってくれ」
「ええ。信用してますぞ」

 こうして購入する家を決め、総一朗はターニャの家に向かった。

「総一朗さんっ、決めた?」
「ああ。これでお隣さんだ」
「やった~! あ、そうだ! 総一朗さん、お母さんにも会っていってくれる?」
「ああ」

 そして総一朗はターニャに連れられ母親のいる寝室に通された。

「お母さん!」
「ターニャ。どうしたの? あら、そちらの方は?」
「ターニャを護衛してくれた総一朗さんだよ! 今度隣に引っ越してくるんだって!」
「まぁ、あなたが? 娘が御迷惑をお掛けしました」

 母親はずいぶん痩せ細っていた。だが総一朗は何故か目が離せずにいた。

「あの……」
「あ、ああっ。いや、迷惑など……。それに護衛のおかげでこの村を知れましたから」
「まぁ……。ターニャ、良い方ね」
「うんっ! 総一朗さんすっごく優しいから好き!」
「まぁ。ふふっ、総一朗さん? これからも娘と仲良くして下さいね」
「はい。では俺はこれで。お身体を御自愛下さい」
「ありがとうございます」

 そして総一朗はターニャの家を出た。

「……やべぇ、惚れた」

 総一朗は胸の高鳴りを抑えながら宿へと戻るのだった。
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