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第一章 最初の国エルローズにて
第06話 収入源を探す
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翌早朝、久しぶりにゆっくりと寝た総一朗はスッキリとした表情を浮かべ宿を出た。
「残り銀貨八枚か。これを全部宿代と考えると後四日しか泊まれん。何か金策を考えんとなぁ」
そう考え、日課の鍛練を終えた総一朗はさっそく雑貨屋へと向かった。
「いらっしゃ……って兄さんか。どうした?」
「おっさん、何か金になる仕事はないか?」
「あん? どうしたんだよ」
「昨日売った素材だけじゃ後四日しか宿に泊まれないからな。何かしら仕事しねぇと宿無し生活になっちまうんだよ」
「がはははっ。なるほどな。仕事か……」
店主は何か仕事がないか考える。
「そうだな、兄さんは魔物を狩れるんだろ?」
「ああ」
「ならここから東に行った所にダンジョンがあるからよ、そこで稼いだら良い」
「ダンジョン……? なんだそれは?」
「は? まさかダンジョンも知らんのか!?」
「初めて聞いたな」
「おいおい……」
店主は頭を掻きながら呆れ、やがてダンジョンについて説明を始めた。
「ダンジョンってなぁ魔物の巣窟の事さ」
「ふむ」
「そこらの森や草原で魔物を倒すと死体はそのまま残るだろ?」
「ああ」
「ダンジョンではそれが宝箱になるのよ」
「宝箱?」
「そうだ。宝箱には色んな便利アイテムや素材が入ってたりするんだよ。例えば……見た目は普通の袋だが中身はいくらでも入る魔法の袋とかな」
「……ほう」
総一朗の耳がぴくりと反応する。
「魔法の袋にはランクがあってな、浅い階層なら(小)、中層で(中)、下層まで行ければ(大)が稀に手に入るんだ。冒険するなら必須アイテムだぜ」
「確かにな。一々素材を売りに戻って来なくても良くなるからな」
「おうよ。しかもその袋の中に食べ物を入れておけば何故か腐らないんだよ」
「それは……凄いな!」
「ああ。だから魔法の袋は結構な高値で取引されるんだ。小で白金貨五枚、中なら黒金貨五枚、大なら虹金貨十枚で売れる」
「滅茶苦茶高いな!」
「ああ。高いのは滅多に手に入らないからだ。冒険者もまずは自分の分を確保したいだろうからな。しかもこの辺りにゃ下層まで行ける冒険者もいねぇ。腕に自信があるなら挑戦してみたらどうだ?」
総一朗は考える。
(ダンジョンか。確かに一攫千金になるかもしれんが……。魔法を使うような魔物に遭遇したら死ぬかも……ははっ、待てよ総一朗。いつからそんな臆病者になった。魔法を使おうが関係ねぇじゃねぇか。使われる前に殺っちまえば良いだけの話だ。よし……)
考えをまとめた総一朗は店主に言った。
「銀貨八枚でダンジョンで必要になりそうな道具を売ってくれ」
「あいよ。兄さん魔法は使えるか?」
「いや、使えん」
「そうかい。なら……寝袋、携帯食、ランタンにロープって所だな。まぁ銀貨八枚じゃ足りねぇが兄さんが持ち帰ったアイテムをここで売ってくれるって言うならツケにしておいてやるぜ」
総一朗は言った。
「おいおい、俺がダンジョンで死ぬかもしれないんだぜ?」
「がはははっ、そん時はそん時だ。だがなぁ……兄さんはなにかやってくれそうな雰囲気があるっつーかよ……只者じゃねぇ気がするんだわ。兄さんは必ず戻る。俺の勘はたまぁに当たる」
「たまにかよ」
「がははははっ。まぁ、危なくなったら引き返してくりゃ良い。冒険者達だって何回も何回も繰り返し潜ってるからな。ほどほどに稼ぎゃ良いんだよ」
「わかったよ。じゃあ今言ったアイテムとやらをくれ」
「おう、ちっと待ってな」
店主は奥の部屋に行きしばらくしてから皮の袋を持って戻ってきた。
「これが冒険者必須アイテムセットだ。中にポーションも入ってる。怪我したら飲んでくれ」
「ポーション? 飲めばどうなる」
「飲めば受けた傷が癒えるのさ。回復魔法と同じだ」
「ああ」
総一朗はターレスの使っていた魔法を思い浮かべた。
「店主、ありがとよ。とりあえずこれで行ける所まで行ってみるわ」
「おうっ。頑張れよ兄さん」
そうして冒険者セットを肩に担ぎ、総一朗は早朝東へと向かった。そして全速で駆ける事一時間、そこに聞いていた風貌のダンジョン入り口があった。まだ朝早いためか他に冒険者の姿はなかった。
「これだな。……よし、入るぞ」
これがダンジョン初挑戦となる総一朗は気合いを入れ入り口から中に入った。入り口を潜った瞬間少し違和感を覚える。
「……なるほど。ここからダンジョンってわけだな。一瞬見えない壁のようなものに触れた気がする。んじゃ行くか相棒」
総一朗は菊一文字を抜き奥へと進む。入り口は洞窟の様な見た目だったためすぐにランタンが必要になるかと思われたが特に使う事はなかった。壁に光るコケが生えていたためランタンがなくともある程度は見える。暗殺を生業にし、夜活動していた総一朗にしてみたら十分明るい方だ。
「ちっ! なんだこいつっ!?」
《ピギィィィィィィッ!》
少し奥に進んだ辺りで初めて見る魔物に遭遇した。見た目は透明に近く、寒天に似ている。
「斬っても斬ってもくっつきやがる! どうなってやがるんだ??」
《ピギィィィィィィッ!!》
「くそっ! んなら細切れにしてやらぁっ! 抜刀術奥義!! 【千刃】!!」
総一朗はいったん刀を鞘に戻し腰を落としながら凄まじい速度で刀を抜き放つ。その動作はおよそ常人では捉えきれない速度だ。
《ピッ!? ピキィィィ……》
「お?」
刃の一つが何かを斬った。すると寒天の様な魔物は形を保てなくなり、真っ二つになった小石ほどの球体を残し消える。そしてその球体が宝箱になった。
「なるほど。あの寒天の中にある石みたいなやつが弱点だったのか。しかし……本当に箱を残すんだな。中身は……」
総一朗は箱を開いた。
「なんだこりゃ。草かよ! んなもんいらんわっ!」
中には葉っぱが一枚入っていただけだった。知識の乏しい総一朗にはそれが何かまるでわからなかった。
「次だ次! 魔法の袋とやらを手に入れるまで帰らんっ!」
スライムを倒した総一朗は引き続きダンジョンを進むのだった。
「残り銀貨八枚か。これを全部宿代と考えると後四日しか泊まれん。何か金策を考えんとなぁ」
そう考え、日課の鍛練を終えた総一朗はさっそく雑貨屋へと向かった。
「いらっしゃ……って兄さんか。どうした?」
「おっさん、何か金になる仕事はないか?」
「あん? どうしたんだよ」
「昨日売った素材だけじゃ後四日しか宿に泊まれないからな。何かしら仕事しねぇと宿無し生活になっちまうんだよ」
「がはははっ。なるほどな。仕事か……」
店主は何か仕事がないか考える。
「そうだな、兄さんは魔物を狩れるんだろ?」
「ああ」
「ならここから東に行った所にダンジョンがあるからよ、そこで稼いだら良い」
「ダンジョン……? なんだそれは?」
「は? まさかダンジョンも知らんのか!?」
「初めて聞いたな」
「おいおい……」
店主は頭を掻きながら呆れ、やがてダンジョンについて説明を始めた。
「ダンジョンってなぁ魔物の巣窟の事さ」
「ふむ」
「そこらの森や草原で魔物を倒すと死体はそのまま残るだろ?」
「ああ」
「ダンジョンではそれが宝箱になるのよ」
「宝箱?」
「そうだ。宝箱には色んな便利アイテムや素材が入ってたりするんだよ。例えば……見た目は普通の袋だが中身はいくらでも入る魔法の袋とかな」
「……ほう」
総一朗の耳がぴくりと反応する。
「魔法の袋にはランクがあってな、浅い階層なら(小)、中層で(中)、下層まで行ければ(大)が稀に手に入るんだ。冒険するなら必須アイテムだぜ」
「確かにな。一々素材を売りに戻って来なくても良くなるからな」
「おうよ。しかもその袋の中に食べ物を入れておけば何故か腐らないんだよ」
「それは……凄いな!」
「ああ。だから魔法の袋は結構な高値で取引されるんだ。小で白金貨五枚、中なら黒金貨五枚、大なら虹金貨十枚で売れる」
「滅茶苦茶高いな!」
「ああ。高いのは滅多に手に入らないからだ。冒険者もまずは自分の分を確保したいだろうからな。しかもこの辺りにゃ下層まで行ける冒険者もいねぇ。腕に自信があるなら挑戦してみたらどうだ?」
総一朗は考える。
(ダンジョンか。確かに一攫千金になるかもしれんが……。魔法を使うような魔物に遭遇したら死ぬかも……ははっ、待てよ総一朗。いつからそんな臆病者になった。魔法を使おうが関係ねぇじゃねぇか。使われる前に殺っちまえば良いだけの話だ。よし……)
考えをまとめた総一朗は店主に言った。
「銀貨八枚でダンジョンで必要になりそうな道具を売ってくれ」
「あいよ。兄さん魔法は使えるか?」
「いや、使えん」
「そうかい。なら……寝袋、携帯食、ランタンにロープって所だな。まぁ銀貨八枚じゃ足りねぇが兄さんが持ち帰ったアイテムをここで売ってくれるって言うならツケにしておいてやるぜ」
総一朗は言った。
「おいおい、俺がダンジョンで死ぬかもしれないんだぜ?」
「がはははっ、そん時はそん時だ。だがなぁ……兄さんはなにかやってくれそうな雰囲気があるっつーかよ……只者じゃねぇ気がするんだわ。兄さんは必ず戻る。俺の勘はたまぁに当たる」
「たまにかよ」
「がははははっ。まぁ、危なくなったら引き返してくりゃ良い。冒険者達だって何回も何回も繰り返し潜ってるからな。ほどほどに稼ぎゃ良いんだよ」
「わかったよ。じゃあ今言ったアイテムとやらをくれ」
「おう、ちっと待ってな」
店主は奥の部屋に行きしばらくしてから皮の袋を持って戻ってきた。
「これが冒険者必須アイテムセットだ。中にポーションも入ってる。怪我したら飲んでくれ」
「ポーション? 飲めばどうなる」
「飲めば受けた傷が癒えるのさ。回復魔法と同じだ」
「ああ」
総一朗はターレスの使っていた魔法を思い浮かべた。
「店主、ありがとよ。とりあえずこれで行ける所まで行ってみるわ」
「おうっ。頑張れよ兄さん」
そうして冒険者セットを肩に担ぎ、総一朗は早朝東へと向かった。そして全速で駆ける事一時間、そこに聞いていた風貌のダンジョン入り口があった。まだ朝早いためか他に冒険者の姿はなかった。
「これだな。……よし、入るぞ」
これがダンジョン初挑戦となる総一朗は気合いを入れ入り口から中に入った。入り口を潜った瞬間少し違和感を覚える。
「……なるほど。ここからダンジョンってわけだな。一瞬見えない壁のようなものに触れた気がする。んじゃ行くか相棒」
総一朗は菊一文字を抜き奥へと進む。入り口は洞窟の様な見た目だったためすぐにランタンが必要になるかと思われたが特に使う事はなかった。壁に光るコケが生えていたためランタンがなくともある程度は見える。暗殺を生業にし、夜活動していた総一朗にしてみたら十分明るい方だ。
「ちっ! なんだこいつっ!?」
《ピギィィィィィィッ!》
少し奥に進んだ辺りで初めて見る魔物に遭遇した。見た目は透明に近く、寒天に似ている。
「斬っても斬ってもくっつきやがる! どうなってやがるんだ??」
《ピギィィィィィィッ!!》
「くそっ! んなら細切れにしてやらぁっ! 抜刀術奥義!! 【千刃】!!」
総一朗はいったん刀を鞘に戻し腰を落としながら凄まじい速度で刀を抜き放つ。その動作はおよそ常人では捉えきれない速度だ。
《ピッ!? ピキィィィ……》
「お?」
刃の一つが何かを斬った。すると寒天の様な魔物は形を保てなくなり、真っ二つになった小石ほどの球体を残し消える。そしてその球体が宝箱になった。
「なるほど。あの寒天の中にある石みたいなやつが弱点だったのか。しかし……本当に箱を残すんだな。中身は……」
総一朗は箱を開いた。
「なんだこりゃ。草かよ! んなもんいらんわっ!」
中には葉っぱが一枚入っていただけだった。知識の乏しい総一朗にはそれが何かまるでわからなかった。
「次だ次! 魔法の袋とやらを手に入れるまで帰らんっ!」
スライムを倒した総一朗は引き続きダンジョンを進むのだった。
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