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第5章 ゴッデス大陸
第55話 スタンピード終息
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「あいつ……どこまで下りたんだよ」
火竜達は宝箱を回収しつつアースの後を追うが一向に追い付けなかった。火竜達がいる階層は四百階、ここまで至ったどの階層にも敵影はなかった。どうやら宝箱を開け終わらない限り新しくモンスターがリポップする事はないようだ。
「あっはははは~」
「ちょっ、水竜っ! もう飲むの止めなって! 水竜のせいで遅れてるんだからね!」
そう、普通なら宝箱を開けるだけの三体が引き離されるなど本来はありえない話だ。間違いの始まりは水竜の開けた宝箱に酒瓶が入っていた事から始まった。
最初水竜は隠れてそれを飲み始めた。だが再び酒瓶を引き当ては飲み、また引き当てている内に隠す事を止めた。
火竜達はいつもの事と諦めていた。それがアースに大きく引き離された原因だった。
「ダンジョンでお酒飲むなんて信じらんないよもうっ!」
「良いじゃないの。敵はぜ~んぶアースが倒しちゃってるんだしさ~。ぐびぐび……ぷはぁ~っ。私達がやることなんてないわよ。それに……火竜! あんただってこっそり高級肉食べてたの知ってるんだからね?」
火竜は突然自分に飛び火し驚き、慌てふためいていた。
「な、なななな何を言っている! く、食ってねぇぞ俺はっ!」
「はぁ~ん? オークキングのハラミ、美味しかった?」
「ハラミじゃない、ロース……あ」
「食ってんじゃん」
「ひ、火竜まで! アースに悪いと思わないのかよぉっ!」
火竜が風竜に言った。
「お、お前こそっ! 高級果実水飲んでただろうが!」
「し、仕方ないだろ! 喉が渇いてたんだからっ!」
「あ~ら、それなら私だって喉が渇いてたから仕方ないわよね~?」
「俺だって腹が減ってたんだ、仕方ないだろ」
「「「…………」」」
三体の竜は黙ったまま頷きあい、お互いに見ないフリをする事にした。
一方その頃アースはと言うと、地下五百階で階層ボスである八岐大蛇と戦っていた。
《ギャオォォォォォォォォォォォス!!》
「くぅぅぅぅっ、強いっ! 全部の首が違う属性攻撃してくるわ、瞬間回復するわ……! やり辛いったらありゃしないっ!」
よく勘違いされるが、八岐大蛇の首は八つに分岐している事から八岐大蛇といわれている。股が八つあるわけではない。
《キシャアァァァァァァァァァァァッ!!》
「あっ! ヤバッ!? 【アースシールド】!!」
アースに強酸が降り注ぐ。アースは土の壁を何重にも展開し、それを躱わす。
「ふぅっ、これだけは食らいたくないなぁ……」
八岐大蛇の首が持つ属性は火、水、土、風、雷、光、闇、酸だ。それらが自ら意思をもち、時には同時に、時には連携したりと、その攻撃は実に多彩だ。
「……仕方ないな、神話が事実か確かめてみよう」
アースはストレージに入れてあった酒樽を各口に向け放り投げた。
《グルォォォォ……オ? オォォォォォン!》
「……飲み始めたな」
酒の味を気に入った八つの首は口に入った酒を飲み干し上機嫌となっていた。そこにアースはさらにストレージから酒を取り出し地面に並べていく。
《《グルォッ、グルォッ!》》
「まだまだあるからなー。た~んと飲み干してくれ」
《《グルォォォォォォォン!》》
そして十時間後、休みなく酒を飲み干し続けた八岐大蛇は酔っぱらってぶっ潰れていた。頭は八つだが身体は一つだ。そりゃあ酒も回るだろう。ただ、身体が物凄く大きいためか、回るまで時間がかかったようだ。
「……さらばだ、八岐大蛇よ」
アースは泥酔し眠っている八岐大蛇の背に飛び乗り、高圧縮した土の杭を核に突き刺し倒した。そして八岐大蛇が死んだ後に虹色の輝きを放つ宝箱が現れた。アースはその中身が気になり、宝箱を開く。
「これ……まさか……!」
宝箱の中には一本の剣が入っていた。アースはその剣をストレージへと収納し、何の剣か確かめる。
「天叢雲剣……! 八岐大蛇の尻尾にあるとされていた伝説の剣じゃないか! まさかこの世界にも?」
アースは天叢雲剣の詳細に目をやる。
「これ……振る軌道で属性が変わるのか!」
唐竹で火、逆風で風、袈裟斬りで土、逆袈裟で水、右薙ぎで光、左薙ぎで闇、左右切り上げで酸、そして刺突で雷と、この剣一本で多彩な攻撃を繰り出す事が可能となるようだ。
「これ……材質がヒヒイロカネじゃん。ヤバッ……、伝説の素材じゃん! なるほどなるほど……。あぁ、核に各属性の魔石を使って……へぇ~……! なるほどねぇ~……」
アースは【発明】を使い剣のレシピを確認していた。アースは今神話に登場する剣を手にし、久しぶりに発明家の血が騒ぎだしていた。
「足りないものはヒヒイロカネと条件設定するためと思われる集束回路かぁ……。マザーボードみたいなものかな? 分解して回路に何が使われているか知りたいけど……、あぁ……! これを分解なんて出来ないよっ! 悔しいけど今は諦めるしかないかぁ~」
アースは人化し、腰に天叢雲剣を下げた。竜の状態よりこの形態の方が遥かに強くなってしまったためだ。
「しかし……。兄さん達まだ来ないのかな? そんな急いだわけじゃないんだけどなぁ……。仕方ない、下から宝箱を回収しつつ上がって行こう」
アースは来た道を戻り宝箱を回収していく。そうして戻る事百階。兄達は宝箱から出たと思われる物資で大宴会を開催していた。
「……な・に・をしているのかなぁぁぁぁぁぁっ!?」
「「「……あ」」」
アースは剣を抜き突きまくるのであった。
火竜達は宝箱を回収しつつアースの後を追うが一向に追い付けなかった。火竜達がいる階層は四百階、ここまで至ったどの階層にも敵影はなかった。どうやら宝箱を開け終わらない限り新しくモンスターがリポップする事はないようだ。
「あっはははは~」
「ちょっ、水竜っ! もう飲むの止めなって! 水竜のせいで遅れてるんだからね!」
そう、普通なら宝箱を開けるだけの三体が引き離されるなど本来はありえない話だ。間違いの始まりは水竜の開けた宝箱に酒瓶が入っていた事から始まった。
最初水竜は隠れてそれを飲み始めた。だが再び酒瓶を引き当ては飲み、また引き当てている内に隠す事を止めた。
火竜達はいつもの事と諦めていた。それがアースに大きく引き離された原因だった。
「ダンジョンでお酒飲むなんて信じらんないよもうっ!」
「良いじゃないの。敵はぜ~んぶアースが倒しちゃってるんだしさ~。ぐびぐび……ぷはぁ~っ。私達がやることなんてないわよ。それに……火竜! あんただってこっそり高級肉食べてたの知ってるんだからね?」
火竜は突然自分に飛び火し驚き、慌てふためいていた。
「な、なななな何を言っている! く、食ってねぇぞ俺はっ!」
「はぁ~ん? オークキングのハラミ、美味しかった?」
「ハラミじゃない、ロース……あ」
「食ってんじゃん」
「ひ、火竜まで! アースに悪いと思わないのかよぉっ!」
火竜が風竜に言った。
「お、お前こそっ! 高級果実水飲んでただろうが!」
「し、仕方ないだろ! 喉が渇いてたんだからっ!」
「あ~ら、それなら私だって喉が渇いてたから仕方ないわよね~?」
「俺だって腹が減ってたんだ、仕方ないだろ」
「「「…………」」」
三体の竜は黙ったまま頷きあい、お互いに見ないフリをする事にした。
一方その頃アースはと言うと、地下五百階で階層ボスである八岐大蛇と戦っていた。
《ギャオォォォォォォォォォォォス!!》
「くぅぅぅぅっ、強いっ! 全部の首が違う属性攻撃してくるわ、瞬間回復するわ……! やり辛いったらありゃしないっ!」
よく勘違いされるが、八岐大蛇の首は八つに分岐している事から八岐大蛇といわれている。股が八つあるわけではない。
《キシャアァァァァァァァァァァァッ!!》
「あっ! ヤバッ!? 【アースシールド】!!」
アースに強酸が降り注ぐ。アースは土の壁を何重にも展開し、それを躱わす。
「ふぅっ、これだけは食らいたくないなぁ……」
八岐大蛇の首が持つ属性は火、水、土、風、雷、光、闇、酸だ。それらが自ら意思をもち、時には同時に、時には連携したりと、その攻撃は実に多彩だ。
「……仕方ないな、神話が事実か確かめてみよう」
アースはストレージに入れてあった酒樽を各口に向け放り投げた。
《グルォォォォ……オ? オォォォォォン!》
「……飲み始めたな」
酒の味を気に入った八つの首は口に入った酒を飲み干し上機嫌となっていた。そこにアースはさらにストレージから酒を取り出し地面に並べていく。
《《グルォッ、グルォッ!》》
「まだまだあるからなー。た~んと飲み干してくれ」
《《グルォォォォォォォン!》》
そして十時間後、休みなく酒を飲み干し続けた八岐大蛇は酔っぱらってぶっ潰れていた。頭は八つだが身体は一つだ。そりゃあ酒も回るだろう。ただ、身体が物凄く大きいためか、回るまで時間がかかったようだ。
「……さらばだ、八岐大蛇よ」
アースは泥酔し眠っている八岐大蛇の背に飛び乗り、高圧縮した土の杭を核に突き刺し倒した。そして八岐大蛇が死んだ後に虹色の輝きを放つ宝箱が現れた。アースはその中身が気になり、宝箱を開く。
「これ……まさか……!」
宝箱の中には一本の剣が入っていた。アースはその剣をストレージへと収納し、何の剣か確かめる。
「天叢雲剣……! 八岐大蛇の尻尾にあるとされていた伝説の剣じゃないか! まさかこの世界にも?」
アースは天叢雲剣の詳細に目をやる。
「これ……振る軌道で属性が変わるのか!」
唐竹で火、逆風で風、袈裟斬りで土、逆袈裟で水、右薙ぎで光、左薙ぎで闇、左右切り上げで酸、そして刺突で雷と、この剣一本で多彩な攻撃を繰り出す事が可能となるようだ。
「これ……材質がヒヒイロカネじゃん。ヤバッ……、伝説の素材じゃん! なるほどなるほど……。あぁ、核に各属性の魔石を使って……へぇ~……! なるほどねぇ~……」
アースは【発明】を使い剣のレシピを確認していた。アースは今神話に登場する剣を手にし、久しぶりに発明家の血が騒ぎだしていた。
「足りないものはヒヒイロカネと条件設定するためと思われる集束回路かぁ……。マザーボードみたいなものかな? 分解して回路に何が使われているか知りたいけど……、あぁ……! これを分解なんて出来ないよっ! 悔しいけど今は諦めるしかないかぁ~」
アースは人化し、腰に天叢雲剣を下げた。竜の状態よりこの形態の方が遥かに強くなってしまったためだ。
「しかし……。兄さん達まだ来ないのかな? そんな急いだわけじゃないんだけどなぁ……。仕方ない、下から宝箱を回収しつつ上がって行こう」
アースは来た道を戻り宝箱を回収していく。そうして戻る事百階。兄達は宝箱から出たと思われる物資で大宴会を開催していた。
「……な・に・をしているのかなぁぁぁぁぁぁっ!?」
「「「……あ」」」
アースは剣を抜き突きまくるのであった。
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