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第5章 ゴッデス大陸

第54話 急遽ダンジョンへ

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 人間の住む街を首都とし港町へと移し、首都のあった場所に獣人の住む街を作る事にした。

「さてガラオン、街はどんな感じにしたい?」
「はっ! そうですなぁ……、」

 ガラオンは街に対する要望を挙げていく。理想はデモン大陸にあった町。それを分厚い外壁で囲って欲しいとの事だった。どうやら人間を信用してはいないらしい。それも散々人間の手で振り回されたのだから仕方のない事だろう。

「……ふむふむ。じゃあその案で作るよ。城はあのままで良いよね?」
「はっ!」

 アースはこの旧首都を城だけ残し一度更地に変えた。それから綺麗に整地しなおし、芝生を生やす。そこにログハウスを建てる。外観は狭そうに見えるが中身はとんでもなく広い。アースはここでも空間拡張技術を使っていた。獣人は繁殖力が強い。種族にもよるが多産種だ。しかも割りとマンションのような無機物は好まない。自然豊かな環境が好みらしい。
 アースは自然を生かした町づくりを目指し、一週間で獣人の暮らす街を作り上げた。それをガラオンに引き渡し、アースは言った。

「ガラオン、過去に人間と色々あったとは思う。けど、できたら無駄な争いは避けて欲しい。この大陸での暮らしを今後世界に広げていくためにもね」
「世界……。アース殿は全ての大陸で人種による差別をなくそうと?」
「うん、まぁね。みんな同じ星で暮らす仲間じゃないか。毛並みが違うからと言って差別したり争うのはナンセンスだ。だから文明は発達しないし、技術も進化しない。みんなで知恵を合わせ、よりよい世界を目指す。それが俺の目標かな」
「ははっ、我ら獣人一同はアース殿の命に従います。ですが自衛権だけはいただきたい」
「それはもちろんだよ。もし何かあったら遠慮なく言ってくれ。俺が飛んでくるからさ」
「かたじけない!」

 こうしてゴッデス大陸では獣人と人間が暮らす事となる。今はまだ交流はない。だがいずれは交流させる事が最終目標だ。

「じゃあこの街はガラオンに預ける。いいね?」
「はっ!」

 そうガラオンに告げ、アースは旧首都と新首都の中間地点へと向かった。

「ここを人間と獣人が一緒に楽しめる町にする。さて……、どうしようか」

 そこに火竜たちが帰って来た。

「アース、ここにいたのか!」
「ん? どうしたの兄さん?」

 火竜はかなり慌てていた。

「ダンジョンでスタンピードの兆候がっ!」
「えっ!?」

 スタンピード。ダンジョンの魔物が何らかの理由で大量発生し、地上に溢れだす現象の事を指す。

「兄さん達が狩りまくってたのに?」
「いや、俺達はまだ中層くらいまでしか降りてなかったんだよ」

 水竜がそれに続く。

「そうそう、ここのダンジョンめっちゃ深くてさぁ。私達もまだ二百五十階までしか進んでないのよ」

 そこに風竜が付け加える。   

「しかももう敵がデモン大陸の最下層くらい強いんだよ! で、階層にいるモンスターの強さがバラバラだったんだ。これは下の階層からモンスターが上ってきてるからだと思って……」

 それを聞いてアースは思った。

(中層ですでに敵があのダンジョンと同じ? となると……もしかしたら下層にはもっと強い敵がわんさか? 止まっいるレベルも上がるかも?)

 アースはスタンピードで被る損害ではなく、停滞していたレベルが上がる絶好の機会だと思った。そしてすぐさまダンジョンへと向かう。当然火竜達もついてくる。

「アース、そういやお前が戦うのは初めて見るな。どのくらいやれるか見させてもらうぜ」
「ああ、安心して見てていいよ」

 四人は最高到達点まで転移魔方陣で飛び、さらなる下層を目指す。

「【アイアンボール】!」

 アースは通路いっばいの鉄球をつくり、それを転がして敵を牽いていた。

「「「……ずりぃ……」」」
「え? なにが?」 

 その他にも、岩の壁に閉じ込め窒息死させたり、壁二枚で圧死させたりとアースは敵に近付きもせず余裕で先に進んでいた。

「ちゃんと戦ってやれよアース……。さすがにモンスターが可哀想だ」
「戦いってこんなもんでしょ。決闘してるわけじゃないんだしさ。先は長いんでしょ? 今から全力出してどうするのさ。スタンピードが起きるかもしれないんでしょ? ほら、サクサクいくよ?」
「「「鬼畜すぎる……」」」

 こうして進むこと数日、アース達は地下三百階層へと到達していた。

「これは……不味いね」

 地下三百階層の通路には所狭しとモンスターがひしめいていた。

「こりゃあスタンピード目前だな。アース、俺らも……」
「いや、見てていいよ」
「「「は?」」」

 アースは通路の天井にトゲ付きの分厚い岩塊をつくり、それを落としてモンスターを一網打尽にしていく。

「またかよ!?」
「あ、レベル上がった」

 ここにきてようやくレベルが上がり始めた。

「よ~し、やる気出てきた! 兄さん達は宝箱の回収を頼むよ! 俺はガンガン倒していくからさ!」

 アースは兄達と離れモンスター狩りに集中し始める。

「あいつ……」
「それより宝箱よっ! パーティー登録している私達なら開けられるんだから回収回収~」
「あ、僕のレベルも上がったみたいだ」

 ダンジョンでは原則宝箱は倒した者しか開けないが、パーティーメンバーなら開ける事ができる。その分取得経験値も分散されるが、今はスタンピード目前。モンスターは掃いて捨てるほどいる。例え経験値が四分の一になろうとも普段とは比べ物にならないくらいモンスターが溢れているのだ。アースにとってスタンピードは絶好の狩場となっていた。

「喜んじゃいけないんだろうけど……スタンピード万歳だっ! さあ来いモンスター! 俺の糧になれっ!」

 アースは嬉々としてモンスターの群れに飛び込むのだった。
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