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第4章 侵略

第50話 コンタクト

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 ライハを放置し、アース達は人間の町を回っていた。その建物の多くはグラディス帝国の物だろうか、そこに加えて真新しい建物もいくつかあり、人々は大工や商売、飲食屋などを開き、それなりに賑わっていた。

「で、アースよぉ……。どうすんだ?」
「どうとは?」
「同盟だよ、組むのか?」

 アースは火竜の問いに答えた。

「条件次第かな」
「条件?」
「うん。まず、デモン大陸に近付かないってのは大前提。そこに加えて、他種族を受け入れさせる。そしてここでは一切差別する事なく全種族が平和に暮らせるようにさせたい」
「さすがにそれは無理じゃない? 人間は自分と違うモノを排除したがる生き物よ?」

 水竜の言い分ももっともだ。だから過去大戦が起きている。

「その大戦が起きた理由ってさ、住む場所が足りなくなったからでしょ?」
「そうね。たとえ今一緒に暮らせたとしても、もう数百年もすれば必ずまた大戦は起こるわ。そうなれば次に死の大地になるのはここよ」
「ま、そうならないように色い考えてあるから大丈夫だよ。そうだなぁ……例えばだけど、俺には前世の記憶があるって前に言ったよね?」
「ええ。違う世界の人間だったんでしょ?」

 アースはこくりと頷き考えを述べた。

「その記憶で俺がいた国はさ、小さい島国だったんだ。そこに一億人以上の人間が暮らしていたんだよ」
「「「島国に一億人!?」」」
「そう、しかも自然豊かで争いのない国だった」
「信じられねぇな……。一億人っつったらよ、デモン大陸が満タンになるほどだぜ?」
「だろうね。だから俺がいた国では高層マンションが主体だったんだよ」
「高層マンション?」

 アースは地面に木の枝で絵を描いていく。

「こんな感じでさ、この建物一つで千人くらいは住めるんだよ」
「アース、お前絵上手すぎじゃね?」
「そりゃ図面も引くからね。まぁ……地盤は俺が固めるから問題ないし、問題があるとしたら食糧かな。でもこの大陸にもダンジョンはあるみたいだし、皆で協力していけば困る事もないかなって思ってる」
「ふ~ん……。でもさ、人間って自分だけの家を持ちたいって思うんじゃない? これ受け入れられるかな?」

 風竜が首を傾げながら質問してきた。

「それはあるかもね。それに対処するためには意識改革が必要かなんだよ」
「意識改革?」
「そう。例えば高層マンションの最上階はお金持ちしか住めないとか付加価値をつけてさ、階層ごとに部屋の値段を変える。もちろん階層ごとに部屋数は減らして広い間取りにしていく。人間ってのは見栄っ張りなんだよ。最上階から眺める景色は最高とか、人より高い場所にいるってだけで大体のバカは納得しちゃうんだよ」
「ははっ、バカって酷くない?」
「まぁ、俺のいた国の格言にバカと煙は高い所が好きと言うのがあってね、あながち間違ってないんじゃないかなってね」

 火竜がアースに尋ねる。

「お前、それをエサに同盟を有利に運ぼうとしてやがるな?」
「うん。でも同盟うんぬんはあっちの話し合い次第だけどね。組まないってなったらこの話はなし。さっきの話に出てた南の大陸にあるバーミリオン王国にでも持ち掛けようかなって思ってる」
「砂漠の国か」
「うん。俺なら砂漠にも街は作れるしね」
「かぁ~っ、どこまで考えを進めてんだか。お前の頭ん中どうなってやがんだよ」
「前世では百年以上生きたからね。しかも人の暮らしを便利にしようと毎日働いてたんだ。その経験を生かしてるだけだよ」
「合わせたら俺達とタメくらいか。俺達ゃただ戦ってばかりだったからなぁ……。それがこの差か」
「ま、人それぞれって事だよ。さて……町を回るのは良いんだけど金がないなぁ。ちょっと商売してこよう」
「「「商売?」」」

 アースは大工職人に近付き話し掛けた。

「すいませ~ん」
「あん?」
「めっちゃ使いやすい工具とかあるんですけど見て見ません?」
「あぁん? 工具だ? どれ、見せてみな」

 アースはニヤリと笑い、ストレージからテーブル台を取り出し、そこにクロスを引いた。

「さあ、注目!」

 アースは台に巻き尺や墨壺、丸ノコからサンダー、軽量ハンマーに皮製の腰袋まで並べて見せた。

「まずはこの腰袋! ベルトのように腰に巻き、そこに様々な工具をさしたり巻き尺なんかを入れておける優れもの! これがあれば両手は自由に!」
「「「「くれっ!!」」」」
「まだありますよ~? この巻き尺! 大工は全ての角材の長さを揃えてキッチリ組んでナンボ! これがあれば長さはキッチリ同じに! そしてこの墨壺、こうして弾くだけで木材に切る際のラインが真っ直ぐ! そしてこの丸ノコ! 何と魔雷石が仕込んであり……」

 アースは丸ノコのスイッチを入れる。グリップを握ると刃が回転し木材を綺麗に切断して見せた。

「と、楽に、スピーディーに木材のカットが可能! 仕事の効率アップ間違いなし! さあ、どうします? 買いますか? 買いませんか?」
「「「「全部買ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」
「毎度あり~」 

 アースの作った工具と腰袋はあっと言う間に完売した。

「なにぃぃっ! もうないのかっ!」
「またのお越しを~」

 アースは【発明】で作った工具類で大量の金を入手し、火竜たちと酒場へと向かうのであった。
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