51 / 63
第4章 侵略
第49話 人間の町
しおりを挟む
アースはライハ達に案内され人間の町に向かった。ライハが通りを歩くと民衆から歓声が上がる。
「ずいぶん人気者のようだね」
「……そんな事はない。私はこの歓声は私がやらなければならない事をきちんとこなしているからだと受けている。民に喜ばれずにして何が王か」
アースはその考え方を気に入った。
「……どうやらあなたは良い人間のようだ。威嚇するような真似してすまなかった。だが、こちらもグラディス帝国に侵略されかけたんだ。少しくらいは大目に見てもらえるとありがたい」
「事情はわかっている。この地を帝国から解放出来たのはそちらに全戦力が向いたからこそ。逆に感謝しているよ」
アースはライハに尋ねた。
「一つ質問しても良いかな?」
「なんなりと」
「グラディス帝国の人間はどうした? 兵士は死んだがその家族や戦えない者などはこの地に残ったままだっただろう?」
ライハはアースの質問に正直に答えた。
「帝国の民はそのままこちらで保護している。生活の基盤が出来上がるまでは税金を免除し、我が連合国が補償金を提供している」
「へぇ~。殺さなかったんだ」
「当たり前だ。そう簡単に命を奪うなどあってはならない。もし抵抗があれば戦になっていたかもしれないが、戦力のない帝国の民はすぐさま降伏し、私達に統治される道を選択したのだ。その心意気を汲み、私達は帝国の民を保護する事にした」
アースは感心していた。
「……全ての人間があなたみたいな考え方なら戦はなくなるのかもしれないな」
「それはないだろう」
「え?」
ライハはアースに何故人は戦をするのか口にした。
「人は増えすぎた。だが土地や資源には限りがある。住む場所がなければ、食べる物がなければ人は簡単に狂ってしまう。デモン大陸へと侵攻した理由も、獣人をこの大陸に追いやったのもそれが理由だ。今はかつての人口の半分くらいだが、やがてまた人が増えれば争いは繰り返されるだろう」
「……でもデモン大陸は死の大地だよ?」
「それはない」
ライハはそう言い切った。
「何故……そう思う」
「お前はデモン大陸に魔族、エルフ、竜、獣人が住んでいると言った。大陸の半分以上が死んだあの大陸でそんなに生物が住めるわけがない。お前は何らかの手段で死の大地を復活させたのではないか?」
アースはライハの頭の良さに驚いていた。
「……すごいな、あんた。たった一言からそこまで読む?」
「ふっ、そうでなければ王など、ましてや連合国の頭など務まらんよ。でだ、本当に死の大地は復活したのか?」
「……ああ。隠しても意味はないし、正直に答えよう。死の大地は俺が復活させた。俺は地竜、大地の事に関してはなんでも出来るとだけ言っておこう」
「地竜……か。なるほどな」
ライハはアースに尋ねた。
「例えばだが……、死の大地は黒い砂地だったはずだ。その砂は栄養も何もなく、水は全て吸収し、草木は一切育たない。それと同じような大陸が南にもある。これは普通の砂漠地帯なのだが……、お前の力でその大地を豊かに出来るか?」
「出来るよ。最初から砂漠地帯だったわけじゃないならね」
「なるほど……。となると……南のバーミリオン王国も何とか出来るかもしれん」
「南?」
ライハは南の大陸のほぼ全てを治めるバーミリオン王 国についてアースに説明した。
「南の大陸は今バーミリオン王国と言う強国が治めている。その南の大陸は死の大地に似た土地でな、大半が砂と岩で埋まっているのだ」
「へぇ……」
「私達は今バーミリオン王国に取引を持ち掛けようとしている。物資などを支援する代わりに戦をしないと確約させたいのだ」
「それこの国大丈夫なの?」
「……無理してでもやらなければならんのだ。民を平和な暮らしへと導くためにはな。っと、話ばかりで町の案内が疎かになっていたな。まだ仮の状態だがどうだろうか?」
アースは話をしながらも町をしっかり見ていた。作りは簡素だが皆幸せそうに暮らしているのが見受けられた。そしてちらほらと商人らしき人の姿も見えた。
「あの商人の品はどこから?」
「あれは大陸中央にあるダンジョンがある町からだ。ダンジョンでは様々な物資が手に入るからな。最近岩の下から発見されたのだ」
「へぇ……、ダンジョンがあるのか。ならこの景気の良さにも頷ける。潜っているのは国の騎士かな?」
「ああ。精鋭を全て投入している。それでもまだまだ足りないのだがな……」
ストレージのない人間達では宝を持ち運べる量も少なく、効率が悪いのだろう。デモン大陸があっと言う間に栄えたのはアースのスキルがあってこそだった。
「そんなんで南の強国と取り引きなんて出来るの?」
「正直に言うと厳しい。自分らの生活もまだ安定していないからな。そこでだ、アース殿。どうか私達と同盟を組んではもらえないだろうか?」
「同盟? 本気? 俺達は人間の敵だった種族だよ?」
「それも過去の話だ。今は未来について話をしている。どうだろう、こちらは一切デモン大陸には近付かない。代わりに我らに協力してはもらえないだろうか」
そう言い、ライハはアースに頭を下げた。
「ちょ、ライハはん! うちらの頭のあんたが何軽々しく頭下げとんねん! それやと同盟やなくなるやろが!」
「そうです! 同盟とは対等な関係の上で成り立つもの、一方が頭を下げるなど……!」
「それでもだ。私達だけでは手が回らないのはわかっているだろう」
「しかし……!」
アースは言った。
「ストップ。同盟なんたらの話をするならさ、ちゃんと話をまとめてから来てよ。何日かはこの町にいるからさ。その間どうしたいかちゃんと話をまとめて来てくれ。こっちはデモン大陸に近付かなければ同盟は結んでも構わない。今一度方針を話し合って来てくれ」
「アース殿!」
アースはライハ達の実りない口論に付き合いきれなくなり、火竜達を連れその場を離れるのであった。
「ずいぶん人気者のようだね」
「……そんな事はない。私はこの歓声は私がやらなければならない事をきちんとこなしているからだと受けている。民に喜ばれずにして何が王か」
アースはその考え方を気に入った。
「……どうやらあなたは良い人間のようだ。威嚇するような真似してすまなかった。だが、こちらもグラディス帝国に侵略されかけたんだ。少しくらいは大目に見てもらえるとありがたい」
「事情はわかっている。この地を帝国から解放出来たのはそちらに全戦力が向いたからこそ。逆に感謝しているよ」
アースはライハに尋ねた。
「一つ質問しても良いかな?」
「なんなりと」
「グラディス帝国の人間はどうした? 兵士は死んだがその家族や戦えない者などはこの地に残ったままだっただろう?」
ライハはアースの質問に正直に答えた。
「帝国の民はそのままこちらで保護している。生活の基盤が出来上がるまでは税金を免除し、我が連合国が補償金を提供している」
「へぇ~。殺さなかったんだ」
「当たり前だ。そう簡単に命を奪うなどあってはならない。もし抵抗があれば戦になっていたかもしれないが、戦力のない帝国の民はすぐさま降伏し、私達に統治される道を選択したのだ。その心意気を汲み、私達は帝国の民を保護する事にした」
アースは感心していた。
「……全ての人間があなたみたいな考え方なら戦はなくなるのかもしれないな」
「それはないだろう」
「え?」
ライハはアースに何故人は戦をするのか口にした。
「人は増えすぎた。だが土地や資源には限りがある。住む場所がなければ、食べる物がなければ人は簡単に狂ってしまう。デモン大陸へと侵攻した理由も、獣人をこの大陸に追いやったのもそれが理由だ。今はかつての人口の半分くらいだが、やがてまた人が増えれば争いは繰り返されるだろう」
「……でもデモン大陸は死の大地だよ?」
「それはない」
ライハはそう言い切った。
「何故……そう思う」
「お前はデモン大陸に魔族、エルフ、竜、獣人が住んでいると言った。大陸の半分以上が死んだあの大陸でそんなに生物が住めるわけがない。お前は何らかの手段で死の大地を復活させたのではないか?」
アースはライハの頭の良さに驚いていた。
「……すごいな、あんた。たった一言からそこまで読む?」
「ふっ、そうでなければ王など、ましてや連合国の頭など務まらんよ。でだ、本当に死の大地は復活したのか?」
「……ああ。隠しても意味はないし、正直に答えよう。死の大地は俺が復活させた。俺は地竜、大地の事に関してはなんでも出来るとだけ言っておこう」
「地竜……か。なるほどな」
ライハはアースに尋ねた。
「例えばだが……、死の大地は黒い砂地だったはずだ。その砂は栄養も何もなく、水は全て吸収し、草木は一切育たない。それと同じような大陸が南にもある。これは普通の砂漠地帯なのだが……、お前の力でその大地を豊かに出来るか?」
「出来るよ。最初から砂漠地帯だったわけじゃないならね」
「なるほど……。となると……南のバーミリオン王国も何とか出来るかもしれん」
「南?」
ライハは南の大陸のほぼ全てを治めるバーミリオン王 国についてアースに説明した。
「南の大陸は今バーミリオン王国と言う強国が治めている。その南の大陸は死の大地に似た土地でな、大半が砂と岩で埋まっているのだ」
「へぇ……」
「私達は今バーミリオン王国に取引を持ち掛けようとしている。物資などを支援する代わりに戦をしないと確約させたいのだ」
「それこの国大丈夫なの?」
「……無理してでもやらなければならんのだ。民を平和な暮らしへと導くためにはな。っと、話ばかりで町の案内が疎かになっていたな。まだ仮の状態だがどうだろうか?」
アースは話をしながらも町をしっかり見ていた。作りは簡素だが皆幸せそうに暮らしているのが見受けられた。そしてちらほらと商人らしき人の姿も見えた。
「あの商人の品はどこから?」
「あれは大陸中央にあるダンジョンがある町からだ。ダンジョンでは様々な物資が手に入るからな。最近岩の下から発見されたのだ」
「へぇ……、ダンジョンがあるのか。ならこの景気の良さにも頷ける。潜っているのは国の騎士かな?」
「ああ。精鋭を全て投入している。それでもまだまだ足りないのだがな……」
ストレージのない人間達では宝を持ち運べる量も少なく、効率が悪いのだろう。デモン大陸があっと言う間に栄えたのはアースのスキルがあってこそだった。
「そんなんで南の強国と取り引きなんて出来るの?」
「正直に言うと厳しい。自分らの生活もまだ安定していないからな。そこでだ、アース殿。どうか私達と同盟を組んではもらえないだろうか?」
「同盟? 本気? 俺達は人間の敵だった種族だよ?」
「それも過去の話だ。今は未来について話をしている。どうだろう、こちらは一切デモン大陸には近付かない。代わりに我らに協力してはもらえないだろうか」
そう言い、ライハはアースに頭を下げた。
「ちょ、ライハはん! うちらの頭のあんたが何軽々しく頭下げとんねん! それやと同盟やなくなるやろが!」
「そうです! 同盟とは対等な関係の上で成り立つもの、一方が頭を下げるなど……!」
「それでもだ。私達だけでは手が回らないのはわかっているだろう」
「しかし……!」
アースは言った。
「ストップ。同盟なんたらの話をするならさ、ちゃんと話をまとめてから来てよ。何日かはこの町にいるからさ。その間どうしたいかちゃんと話をまとめて来てくれ。こっちはデモン大陸に近付かなければ同盟は結んでも構わない。今一度方針を話し合って来てくれ」
「アース殿!」
アースはライハ達の実りない口論に付き合いきれなくなり、火竜達を連れその場を離れるのであった。
2
お気に入りに追加
1,200
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
転生幼女が魔法無双で素材を集めて物作り&ほのぼの天気予報ライフ 「あたし『お天気キャスター』になるの! 願ったのは『大魔術師』じゃないの!」
なつきコイン
ファンタジー
転生者の幼女レイニィは、女神から現代知識を異世界に広めることの引き換えに、なりたかった『お天気キャスター』になるため、加護と仮職(プレジョブ)を授かった。
授かった加護は、前世の記憶(異世界)、魔力無限、自己再生
そして、仮職(プレジョブ)は『大魔術師(仮)』
仮職が『お天気キャスター』でなかったことにショックを受けるが、まだ仮職だ。『お天気キャスター』の職を得るため、努力を重ねることにした。
魔術の勉強や試練の達成、同時に気象観測もしようとしたが、この世界、肝心の観測器具が温度計すらなかった。なければどうする。作るしかないでしょう。
常識外れの魔法を駆使し、蟻の化け物やスライムを狩り、素材を集めて観測器具を作っていく。
ほのぼの家族と周りのみんなに助けられ、レイニィは『お天気キャスター』目指して、今日も頑張る。時々は頑張り過ぎちゃうけど、それはご愛敬だ。
カクヨム、小説家になろう、ノベルアップ+、Novelism、ノベルバ、アルファポリス、に公開中
タイトルを
「転生したって、あたし『お天気キャスター』になるの! そう女神様にお願いしたのに、なぜ『大魔術師(仮)』?!」
から変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる