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第4章 侵略
第47話 航海
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アースは泣きじゃくる水竜にしこたま酒を与えた。するとどうだろう、水竜は気分一新、戦艦の甲板で水芸を披露していた。
「鏡花水月~! からの~……水光接天! でもって~……鏡花水月~!」
「おぉ~……!」
デモン大陸を出港してから一時間、アースはひたすら水竜に付き合わされていた。ちなみに船は自動走行モードにしてある。船底にソナーセンサーを取り付け、自動で障害物を回避して進んでいる。そして、風竜はすでに潰れていた。
「も、もう……むり……」
「だっらしないわねぇ~。少しはアースを見習いなさいよ」
「アースは酒もいける口だったんだな。水竜に付き合える奴などそうはいねぇぞ?」
「火竜、あんたも早くそれ空けなさいよ。チビチビ飲んでたらゴッデス大陸に着いちゃうでしょ~」
「へいへい」
アースは速度を少し落とし、ゆっくり向かう事にした。これでは到着する頃には全員使い物にならないのは目に見えている。
「アース~、私魚が食べたいわ!」
「ちょっと待ってて姉さん」
何故か水竜が王様でアース達が召し使いになっているが、ごねるとまた面倒臭いので大人しく従う。
「ん? アース、なんだそりゃ?」
「海釣り用の竿だよ、火竜兄さん」
「ほ~。その糸を巻く装置は?」
「これはリール。これがあれば深い所まで糸を垂らしても巻き上げて釣れるんだよ。深い場所には……っと!きたっ!」
アースの竿に当たりがきた。
「おぉぉぉぉ!? 引きが強いっ!」
「めっちゃしなってんな!? 折れねぇのか!?」
「大丈夫だよ、特別製だからね! もう少しっ!」
アースは格闘する事三十分、巨大な魚を吊り上げた。
「風竜兄さん、鑑定よろしく」
「うぅ……、鑑定……。それ……【ブラックツナ】……」
「……クロマグロ! よっしゃ!!」
「お~、魚釣れたみたいね!」
「今さばくから待ってて」
「お、ならその竿貸してくれよ。俺も釣ってみてぇ」
「いいよ。はい、餌の小魚」
「サンキュー」
火竜に釣竿を預け、アースはブラックツナを華麗にさばいていく。
「はい、大トロお待ち!」
「待ってたわ! …………ん~っ! 美味しいっ! 冷酒にピッタリね! おかわり!」
「んじゃ……カマトロ軍艦、中落ち、中トロ、赤身!」
「いただきまぁ~す!」
水竜は酒と刺身を堪能し、潰れた。
「うぃ~……。すやぁ~……」
「……やっと寝たか……。疲れたなぁぁぁ……」
「お~う、やっと静かになったか」
「あ、火竜兄さん。……え?」
火竜は山盛り魚を釣り上げていた。
「いやぁ~、釣りっておんもしれぇな! 餌がなくなるまでハマっちまったぜ!」
「……なんだこれ……。鯛かな? あり得ないくらいでっかいんだけど……」
「お~い、風竜。鑑定頼むわ」
「ま、また……? うぅぅ……頭痛い……気持ち悪い……」
風竜の鑑定結果、魚は全て食べられる物だった。ストレージに入れたら鑑定は出来たのだろうが出し入れが面倒だったので風竜に任せた。
「うっ……もう……無理……」
風竜は星になった。
「残りは俺達だけか。アース、これ二人で食っちまおうぜ」
「そうだね。ちょっと待ってて」
アースは魚を次々とさばき、テーブルに並べていった。そして兄とサシで酒を酌み交わす。
「なぁ、アースよ」
「なに?」
火竜は真剣な表情でアースに問い掛ける。
「俺達は今ゴッデス大陸に向かってるわけだがよ、もし仮にだ、人間が敵対してきたらどうする?」
「どうするとは?」
「わかるだろ。皆殺しにしちまうのか?」
アースは言った。
「出来ればそれは避けたいかなぁ。殺したり殺されたりってどこまでも続いちゃうからさ」
「ならどうすんだよ?」
「向かってくる敵だけ倒せばいいんじゃない? まぁ、戦闘にならないに越したことはないけどさ」
「……だな。油断するなよ、アース。奴らは狡猾で残忍、欲深い。もし交渉になったとしてもだ、決して譲るな。一回甘い顔を見せたら奴らはどこまでも付け入ってくるからな。そこだけは忘れんな」
「うん、わかった」
アースは人間について誰よりも知っている。社長、会長を経験している事からビジネスについても明るい。火竜のアドバイスもその経験上、前世で何度も乗り越えてきている。交渉で留意する点はいかに自分が利益を得て相手にも損をさせないか。利益だけに走りすぎると友好的な関係は築く事はできず、次回の取引の機会が消失してしまうだろう。結果利益はマイナスになるのである。
だが、それは相手が友好的であるか否かにもよる。相手をしっかりと見定め、継続的な取引をしていくか、一回きりでお別れするか、お別れするなら利益など考える必要はない。搾れるだけ搾ってサヨウナラだ。
つまり、いかに相手を見抜くか。これに限る。厳然ならば様々な媒体で相手の会社の情報は手に入るが、ここにはそんなものなどない。しかも人間はあらゆる他種族と敵対しているのだ。
今回の調査次第で人間全てが敵になるか、良き隣人になるかが決まると言って良いだろう。
「さあ、もう半日もすればゴッデス大陸が見えてくる。兄さん、港の位置を教えて」
「ああ、港は島の北にある。航路はこのまま真っ直ぐだ」
「了解、さあ……人間と対面だ! いきなり砲撃されるかもしれないから、ヴァン兄さん、風の障壁よろしくね」
「オッケー、守りは僕に任せてよ!」
アースは自動運転から手動運転に切り替え、船を真っ直ぐ南へと進めるのであった。
「鏡花水月~! からの~……水光接天! でもって~……鏡花水月~!」
「おぉ~……!」
デモン大陸を出港してから一時間、アースはひたすら水竜に付き合わされていた。ちなみに船は自動走行モードにしてある。船底にソナーセンサーを取り付け、自動で障害物を回避して進んでいる。そして、風竜はすでに潰れていた。
「も、もう……むり……」
「だっらしないわねぇ~。少しはアースを見習いなさいよ」
「アースは酒もいける口だったんだな。水竜に付き合える奴などそうはいねぇぞ?」
「火竜、あんたも早くそれ空けなさいよ。チビチビ飲んでたらゴッデス大陸に着いちゃうでしょ~」
「へいへい」
アースは速度を少し落とし、ゆっくり向かう事にした。これでは到着する頃には全員使い物にならないのは目に見えている。
「アース~、私魚が食べたいわ!」
「ちょっと待ってて姉さん」
何故か水竜が王様でアース達が召し使いになっているが、ごねるとまた面倒臭いので大人しく従う。
「ん? アース、なんだそりゃ?」
「海釣り用の竿だよ、火竜兄さん」
「ほ~。その糸を巻く装置は?」
「これはリール。これがあれば深い所まで糸を垂らしても巻き上げて釣れるんだよ。深い場所には……っと!きたっ!」
アースの竿に当たりがきた。
「おぉぉぉぉ!? 引きが強いっ!」
「めっちゃしなってんな!? 折れねぇのか!?」
「大丈夫だよ、特別製だからね! もう少しっ!」
アースは格闘する事三十分、巨大な魚を吊り上げた。
「風竜兄さん、鑑定よろしく」
「うぅ……、鑑定……。それ……【ブラックツナ】……」
「……クロマグロ! よっしゃ!!」
「お~、魚釣れたみたいね!」
「今さばくから待ってて」
「お、ならその竿貸してくれよ。俺も釣ってみてぇ」
「いいよ。はい、餌の小魚」
「サンキュー」
火竜に釣竿を預け、アースはブラックツナを華麗にさばいていく。
「はい、大トロお待ち!」
「待ってたわ! …………ん~っ! 美味しいっ! 冷酒にピッタリね! おかわり!」
「んじゃ……カマトロ軍艦、中落ち、中トロ、赤身!」
「いただきまぁ~す!」
水竜は酒と刺身を堪能し、潰れた。
「うぃ~……。すやぁ~……」
「……やっと寝たか……。疲れたなぁぁぁ……」
「お~う、やっと静かになったか」
「あ、火竜兄さん。……え?」
火竜は山盛り魚を釣り上げていた。
「いやぁ~、釣りっておんもしれぇな! 餌がなくなるまでハマっちまったぜ!」
「……なんだこれ……。鯛かな? あり得ないくらいでっかいんだけど……」
「お~い、風竜。鑑定頼むわ」
「ま、また……? うぅぅ……頭痛い……気持ち悪い……」
風竜の鑑定結果、魚は全て食べられる物だった。ストレージに入れたら鑑定は出来たのだろうが出し入れが面倒だったので風竜に任せた。
「うっ……もう……無理……」
風竜は星になった。
「残りは俺達だけか。アース、これ二人で食っちまおうぜ」
「そうだね。ちょっと待ってて」
アースは魚を次々とさばき、テーブルに並べていった。そして兄とサシで酒を酌み交わす。
「なぁ、アースよ」
「なに?」
火竜は真剣な表情でアースに問い掛ける。
「俺達は今ゴッデス大陸に向かってるわけだがよ、もし仮にだ、人間が敵対してきたらどうする?」
「どうするとは?」
「わかるだろ。皆殺しにしちまうのか?」
アースは言った。
「出来ればそれは避けたいかなぁ。殺したり殺されたりってどこまでも続いちゃうからさ」
「ならどうすんだよ?」
「向かってくる敵だけ倒せばいいんじゃない? まぁ、戦闘にならないに越したことはないけどさ」
「……だな。油断するなよ、アース。奴らは狡猾で残忍、欲深い。もし交渉になったとしてもだ、決して譲るな。一回甘い顔を見せたら奴らはどこまでも付け入ってくるからな。そこだけは忘れんな」
「うん、わかった」
アースは人間について誰よりも知っている。社長、会長を経験している事からビジネスについても明るい。火竜のアドバイスもその経験上、前世で何度も乗り越えてきている。交渉で留意する点はいかに自分が利益を得て相手にも損をさせないか。利益だけに走りすぎると友好的な関係は築く事はできず、次回の取引の機会が消失してしまうだろう。結果利益はマイナスになるのである。
だが、それは相手が友好的であるか否かにもよる。相手をしっかりと見定め、継続的な取引をしていくか、一回きりでお別れするか、お別れするなら利益など考える必要はない。搾れるだけ搾ってサヨウナラだ。
つまり、いかに相手を見抜くか。これに限る。厳然ならば様々な媒体で相手の会社の情報は手に入るが、ここにはそんなものなどない。しかも人間はあらゆる他種族と敵対しているのだ。
今回の調査次第で人間全てが敵になるか、良き隣人になるかが決まると言って良いだろう。
「さあ、もう半日もすればゴッデス大陸が見えてくる。兄さん、港の位置を教えて」
「ああ、港は島の北にある。航路はこのまま真っ直ぐだ」
「了解、さあ……人間と対面だ! いきなり砲撃されるかもしれないから、ヴァン兄さん、風の障壁よろしくね」
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アースは自動運転から手動運転に切り替え、船を真っ直ぐ南へと進めるのであった。
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