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第2章 ダンジョンって美味いの?

02 理由

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    翌朝、愛斗はユーキより先に起きていた。ユーキは未だスヤスヤと寝息をたてて寝ていた。

「随分無防備な奴だな。危機感が足りないのか?」

    暫く観察していると、ユーキが目を覚ました。

「ん…ふぁ…。あ、おはよう…ございます。」

「おはよう、起きたか。朝飯食べるか?」

「い、良いのですか?」

「ああ。少し聞きたい事もあるしな。」

    愛斗は先にテントから出て朝食の準備を始めた。

「お待たせしました。」

    ユーキは昨日見たボロボロの鎧をまた着ていた。

「…装備それしか無いの?」

「はい、まだ見習いなので…。」

「仕方ないなぁ。後で他のをやるよ。」

「え?」

「帰るにしてもそれだとな。賊に襲われるぞ。」

「は、あ、あの…ごめんなさい。」

「良いよ、さ、食え。」

    愛斗はパンとサラダ、スープを出してやった。

「ふわぁ…♪美味しそう!頂きます!あむっ…んん~美味しいです!あむっあむっ♪」

「ゆっくり食べな。」

    粗方食べ終え、愛斗はユーキにダンジョンに来た目的を尋ねた。

「目的…ですか?そうですね。ダンジョンの調査です。どんなモンスターがいるか、ダンジョンから出て来ないか、それを調査しに来ました。」

「他に仲間は?」

「居ましたが…生きてるかどうか分かりません。逃げ出すのに必死でしたから…。」

「そうか、どの辺りだ?案内出来るか?」

「えっ!まさか…モンスターハウスに行くのですか!?」

「ああ、仲間の安否が気になるだろ?」

「あ、ありがとうございます!」

「良いよ、じゃあ…行こうか。と、その前にほら、これに着替えな。」

    愛斗はユーキに真新しい装備を渡した。道中に拾った物だ。

「鋼の胸当て、鋼の手甲、鋼の膝当て、防寒マントだ。どれも拾った物だから遠慮は要らんよ。」

「は、鋼シリーズ!支給品より良装備!?い、良いのですか!?」

「構わんよ。武器はあるか?」

「うっ…折れました。剣があれば下さい…。」

「じゃあ…鋼の剣だな。軽い方がいいなら別のもあるが。」

「い、いえ。十分です!前はアイアンソードでしたので。大して変わりませんから。」

「そっか、なら装備してきな。俺は片付けしてるからさ。」

「は、はいっ!では…。」

    ユーキはテントに戻り、装備を着替え始めた。再び出てきたユーキは立派な騎士に見えた。

「しかし…自動でぴったりになるのは驚きだよなぁ。」

「え?常識じゃないですかぁ。」

「そうなん?俺のは特別に作って貰ってるからな。店で買ったことが無いんだよ。」

「へぇ~。てっきり冒険者歴が長い人だとばかり思ってました…。」

「全然駆け出しだよ。ランクはFだしな。」

「え、F?なのにこんな未踏破階層まで!?」

「まぁな。準備は良いかな?そろそろ行こうか。」

「は、はい!お待たせしました。大丈夫です。」

    愛斗はテントをしまい、ユーキに案内されながらモンスターハウスがあった場所へと向かった。残念な事に騎士とは会わなかった。

「マナトさん、この先の部屋です…。」

「分かった、ユーキは此処で待ってろ。終わったら呼ぶ。」

「へ?」

    愛斗は1人部屋に飛び込んだ。中はモンスターが溢れていた。

「「「「ぐるぅぅぅぅっ!」」」」

「「「「ぎゃぁぁぁぁす!!」」」

「はいはい、片付けますよ~っと。」

    愛斗は踊る様に刀を振りまわし、次々と敵をほふっていく。全て片付けるのに数分と掛からなかった。

「はい、終了~。」

「す、すすすす凄い…!」

    入り口から見ていたユーキは愛斗の強さに驚いていた。 

「なんだ、見てたのか。それより、仲間はこれで全員か?」

    愛斗は戦いながら騎士の死体を1ヶ所に集めていた。

「えっと……はい。残念ながら…全員です。」

「…そっか。これからどうする?帰るか?」

「あの…もし良かったら調査を手伝って貰えませんか?王都に戻ったら謝礼も出しますので…。」

「見習いにそこまで権限あるの?」

「うっ…。」

「まぁ、どうせ俺はこのまま進むし。付いてきたいなら邪魔しないでくれたら連れてくけど。」

「は、はい!決して邪魔はしませんので!あの…宜しくお願いします。」

「あいよ。じゃあ…弔ったら先に進むか。」

    愛斗は穴を掘り、1人ずつ中に入れ、火葬した。

「皆さん…どうか安らかに…。」

「じゃあ…行こう。」

「…はい!」

    愛斗は再びボス部屋の前に戻った。

「さて、此処は何が出るのかなぁ。」

    扉を開け中に入った。

「…木?」

「あれは…!ビッグトレント…!」

「知ってるの?あれ。」

「はい。王都付近の森で見かけるトレントの上位種です!兎に角固くて、武器が効きづらい相手です。」

「ほ~ん。なら…燃やすか。」

「あっ!マナトさんっ!」

    愛斗は一瞬で距離を詰め、トレントに向かって呪文を唱えた。

「【トーチ:最大火力】。」

    ゴォォォォォォォォッ!!

「ギッギィィィィィィィィッ…………」

    ビッグトレントは何もする事無く燃え尽きた。

「お、宝箱発見!中身は…と。おお、金貨がギッシリ!やったぜ!」

「あ、あんなのを一瞬で…!ま、マナトさんて…何者?とてもランクFなんて…。」

「あ、FはFでもフリーのFな。俺だけ特別なんだよ。全ての討伐クエストを受けられる様にってギルマスがな。」

「フリー…聞いた事無いです。しかも…さっきの魔法…生活魔法じゃないですか?何であんな火力が…?」

「さぁなぁ。さて、ボスも倒したし先に進むか。」

「あ、は、はい!」

    愛斗はまた階層を降りる。危なげなく階層を降り、今は25階。此処から雰囲気が変わった。

「何か…暑くね?」

「で、ですね。何か…水から湯気が…。」

「ん?この臭い…温泉かっ!!」

「温泉?ですか?」

「知らないのか。温泉はな、身体に良いのだ。打ち身や肩凝り、腰痛など様々な効能がある!場合もある。成分次第だな。ふむ、入れそうな場所を探すか。」

「えっ?ま、マナトさん?」

    愛斗はあちこち入れそうな場所を探して回った。

「あった!ここなら温度も丁度良い…。まさかダンジョンで湯に浸かれるとは…!よし、今日はここで休む!結界石を設置してテントを設置して…と。オッケーだ。」

    愛斗は泊まる準備を完了させ、服を脱ぎ捨てた。 

「行くぜ温泉!とお~っ!」

    ザブーン。

「くおぉ~。良いっ…疲れが癒される!あ~はぁ~っ、生きてて良かったぁ~♪」

「そ、そんなに気持ち良いのですか?」

「もうっ最高だ!暫く此処に居たい位だぜ。ユーキも入るか?」

「えっ!い、一緒にですか?」

「あ、恥ずかしいとか?なら俺が出るまで…」

「い、いえ!は、入ります。」

    ユーキは目の前で装備を外し裸になった。愛斗はマナーとして見ない様にしていた。

「うぅ~…。はぁぁ…気持ち良いですねぇ~♪ほわ~ってなります♪」

「だろう。風呂は良い…。しかし…何で俺の背中に寄りかかってんのお前…。」

「や、こうしたら見えないかなぁ~って。」

    ユーキは少し恥ずかしそうにしていた。

《職業:夢追い人のレベルが8になりました。》

「ふむ、また1つ夢が叶ったな。混浴…素晴らしい。」

「?マナトさん?」

「おう、すまんな。こっちの事だ。それより、そろそろ上がろうぜ。のぼせちまいそうだ。」

「ですね~…。確かに温泉は気持ち良いですが…長くは入って居られませんね。」

    久しぶりに温泉を堪能した愛斗は、再びダンジョン攻略へと動くのであった。
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