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第13話 鉱山
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馬車に揺られ丸一日、ライルの乗った馬車はようやく鉱山へと到着した。鉱山の麓は小さな宿場町となっており、そこでは鉱員が暮らしている。そして冒険者のための宿もあった。ライルはまず宿に部屋を借り、馬車移動の疲れを癒す事にした。
「あぁ~……色んな所が痛い……。長距離の馬車移動って思ってたより身体にくるなぁ。これなら飛んで来た方がマシだったかも……うへぇ~……」
ライルはベッドに横になりながらこれからの計画を立てる。
「まずは鉱山であのスキルが使えるか試さなきゃ。多分いけると思うんだけど……。ま、無理なら新しいスキルを作って作業しよう。集めるのは銅鉱石、鉄鉱石、銀鉱石、金鉱石。で、倒さなきゃならない魔物はロックバット、岩トカゲ、ジャイアントアントだったっけ。これ以外にも見かけたら集めたり倒したりしよう。出来れば周りに人がいない時間が良いかもね。あまり目立ちたくないし。と言う事で……夜まで寝よう!」
ライルは普通の人間にはあり得ないスキルがある。あまり目立つ行動をすると国に捕まり使い潰されたり、狙われる事になる。強すぎる力は時に身を滅ぼしてしまうものだ。まだそんなにレベルも高くなく、戦闘経験も乏しいライルはもし多くの熟練者に囲まれでもしたら勝てないだろうと考えていた。
そして夜。ライルはスキル【隠密】を作り、人気のなくなった鉱山に忍び込む。
「【暗視】発動!」
鉱山の中は暗い。鉱員がいる時は壁に篝火が焚かれるのだろうが、今は誰もいないからか、篝火は焚かれていない。そこでライルは暗い中でも昼間と同じくらいの明るさで見えるスキルを作り鉱山の中を進む。
「さてと……まずは採掘されてる場所で……」
ライルは既に採掘されていたポイントへと移動し、壁に手を触れる。
「上手くいってくれよ~……【無限収納】!」
ライルはまず土や岩を意識し、それらを無限収納へと取り込んでいく。すると埋まっていた鉱石だけが地面に転がった。
「よし! 狙い通りだ! この調子でどんどん集めるぞ~!」
これがライルのツルハシを使わない鉱石採取のやり方だ。鉱石を取り尽くした穴にはまた土や岩を戻し、穴を塞いでおく。
「後からくる冒険者達には悪いけど……これも混沌退治とために必要だから許してね」
これを数日ほど繰り返し、ライルはランクアップに必要な分の鉱石と魔物を狩り終えた。そして帰るかと思いきや、ライルは鉱山の入り口がある反対側へと移動し、新しい坑道を自ら掘り進み、ありとあらゆる鉱石を集めていった。ちなみに入り口は幻影魔法で隠してある。
「お、オリハルコン鉱石ゲット! 大分集まったなぁ~……」
現在地下二キロ。大分暑くなってきていた。
「そろそろ下に掘るのは止めておこうかな。って言うかもう十分じゃないかな。ここで最後にしよっと」
もう十分な鉱石を得たライル。聞いた鉱石以外の鉱石が出るのかと思い掘り進んでみたが、聞いた以上の鉱石は出なかった。そして最後に壁に穴を開ける。
「ん?」
壁、穴を開けると鉱石の他に丸い玉があった。
「……見たことある玉だ。もしかして……願い玉?」
《くっ、見つかってしまったか!》
「やっぱりだ!」
ライルが玉を持ち語りかけると玉が喋り始めた。
「君……アインスの仲間?」
《アインス? 人間、お前はアインスを知っているのか?》
「知ってるも何も……持ってるよ」
《なにっ!?》
ライルは無限収納から箱を取り出し蓋を開く。
《ア、アインス!?》
《ん~……んぁ? 誰だ、俺の眠りを妨げる奴は……》
《私だ、【ツヴァイ】だ!》
《あ~ん? ツヴァイ? ツヴァイ…………ツヴァイ!?》
アインスが驚いている。
《ライル! お前まさか二つ目の玉見つけたのかよ!?》
「え? うん。鉱石集めしてたら土止め中から出てきたんだよ」
《まさかこんな地中まで来る人間がいたとは……。しかもそれがアインスの所有者とはな……》
ツヴァイは心なしか落ち込んでいるようだった。
《そう落ち込むなよ、ツヴァイ。ライルは今まで俺らを使ってきた奴らと違ってよ、他人のために願いを使うような奴だ。しかも……ライルは近い将来【混沌】と戦う事になるかもしれねぇんだ》
《あの混沌が再び現れるのかっ!》
《おう。だからお前も手を貸せ。ライルのスキルに俺達願い玉の力を合わせりゃ十分勝機はある》
ツヴァイはしばらく沈黙し、ライルに語りかけた。
《ライルとやら。お前は私を欲するか? 欲のために私を使わぬと誓えるか?》
「え? う~ん……。なんとも言えないかな」
《なに?》
ライルは言った。
「混沌を倒して平和な世界にするってのはさ、僕の欲って言わないかな?」
《は?》
《ははははっ、ツヴァイよ。ライルはこんなお人好しなんだよ。自分より他人の幸せを願う。そんなバカな奴なんだよ》
「バカってなんだよ~! 良い今年じゃん!」
そんな二人の掛け合いがツボには言ってのか、ツヴァイは大声で笑った。
《はっはっは! そうか……。ようやく私達を正しく使える者が現れたか。ライルよ、私もお前についていくとしよう。何か願い事はあるか?》
「う~ん……。今はまだないかな。特に困っている事もないし……。もし何かあったら頼らせてもらうよ」
《願いがないか。ふっ、大した奴だ。わかった、では願いが決まったら私を使うと良い。私は二番目の願い玉ツヴァイ。これよりライルの所有物となろう。よろしく頼む》
「うん、ありがとうツヴァイ」
こうしてライルは大量の鉱石と二つ目の願い玉を入手し、町へと戻るのであった。
「あぁ~……色んな所が痛い……。長距離の馬車移動って思ってたより身体にくるなぁ。これなら飛んで来た方がマシだったかも……うへぇ~……」
ライルはベッドに横になりながらこれからの計画を立てる。
「まずは鉱山であのスキルが使えるか試さなきゃ。多分いけると思うんだけど……。ま、無理なら新しいスキルを作って作業しよう。集めるのは銅鉱石、鉄鉱石、銀鉱石、金鉱石。で、倒さなきゃならない魔物はロックバット、岩トカゲ、ジャイアントアントだったっけ。これ以外にも見かけたら集めたり倒したりしよう。出来れば周りに人がいない時間が良いかもね。あまり目立ちたくないし。と言う事で……夜まで寝よう!」
ライルは普通の人間にはあり得ないスキルがある。あまり目立つ行動をすると国に捕まり使い潰されたり、狙われる事になる。強すぎる力は時に身を滅ぼしてしまうものだ。まだそんなにレベルも高くなく、戦闘経験も乏しいライルはもし多くの熟練者に囲まれでもしたら勝てないだろうと考えていた。
そして夜。ライルはスキル【隠密】を作り、人気のなくなった鉱山に忍び込む。
「【暗視】発動!」
鉱山の中は暗い。鉱員がいる時は壁に篝火が焚かれるのだろうが、今は誰もいないからか、篝火は焚かれていない。そこでライルは暗い中でも昼間と同じくらいの明るさで見えるスキルを作り鉱山の中を進む。
「さてと……まずは採掘されてる場所で……」
ライルは既に採掘されていたポイントへと移動し、壁に手を触れる。
「上手くいってくれよ~……【無限収納】!」
ライルはまず土や岩を意識し、それらを無限収納へと取り込んでいく。すると埋まっていた鉱石だけが地面に転がった。
「よし! 狙い通りだ! この調子でどんどん集めるぞ~!」
これがライルのツルハシを使わない鉱石採取のやり方だ。鉱石を取り尽くした穴にはまた土や岩を戻し、穴を塞いでおく。
「後からくる冒険者達には悪いけど……これも混沌退治とために必要だから許してね」
これを数日ほど繰り返し、ライルはランクアップに必要な分の鉱石と魔物を狩り終えた。そして帰るかと思いきや、ライルは鉱山の入り口がある反対側へと移動し、新しい坑道を自ら掘り進み、ありとあらゆる鉱石を集めていった。ちなみに入り口は幻影魔法で隠してある。
「お、オリハルコン鉱石ゲット! 大分集まったなぁ~……」
現在地下二キロ。大分暑くなってきていた。
「そろそろ下に掘るのは止めておこうかな。って言うかもう十分じゃないかな。ここで最後にしよっと」
もう十分な鉱石を得たライル。聞いた鉱石以外の鉱石が出るのかと思い掘り進んでみたが、聞いた以上の鉱石は出なかった。そして最後に壁に穴を開ける。
「ん?」
壁、穴を開けると鉱石の他に丸い玉があった。
「……見たことある玉だ。もしかして……願い玉?」
《くっ、見つかってしまったか!》
「やっぱりだ!」
ライルが玉を持ち語りかけると玉が喋り始めた。
「君……アインスの仲間?」
《アインス? 人間、お前はアインスを知っているのか?》
「知ってるも何も……持ってるよ」
《なにっ!?》
ライルは無限収納から箱を取り出し蓋を開く。
《ア、アインス!?》
《ん~……んぁ? 誰だ、俺の眠りを妨げる奴は……》
《私だ、【ツヴァイ】だ!》
《あ~ん? ツヴァイ? ツヴァイ…………ツヴァイ!?》
アインスが驚いている。
《ライル! お前まさか二つ目の玉見つけたのかよ!?》
「え? うん。鉱石集めしてたら土止め中から出てきたんだよ」
《まさかこんな地中まで来る人間がいたとは……。しかもそれがアインスの所有者とはな……》
ツヴァイは心なしか落ち込んでいるようだった。
《そう落ち込むなよ、ツヴァイ。ライルは今まで俺らを使ってきた奴らと違ってよ、他人のために願いを使うような奴だ。しかも……ライルは近い将来【混沌】と戦う事になるかもしれねぇんだ》
《あの混沌が再び現れるのかっ!》
《おう。だからお前も手を貸せ。ライルのスキルに俺達願い玉の力を合わせりゃ十分勝機はある》
ツヴァイはしばらく沈黙し、ライルに語りかけた。
《ライルとやら。お前は私を欲するか? 欲のために私を使わぬと誓えるか?》
「え? う~ん……。なんとも言えないかな」
《なに?》
ライルは言った。
「混沌を倒して平和な世界にするってのはさ、僕の欲って言わないかな?」
《は?》
《ははははっ、ツヴァイよ。ライルはこんなお人好しなんだよ。自分より他人の幸せを願う。そんなバカな奴なんだよ》
「バカってなんだよ~! 良い今年じゃん!」
そんな二人の掛け合いがツボには言ってのか、ツヴァイは大声で笑った。
《はっはっは! そうか……。ようやく私達を正しく使える者が現れたか。ライルよ、私もお前についていくとしよう。何か願い事はあるか?》
「う~ん……。今はまだないかな。特に困っている事もないし……。もし何かあったら頼らせてもらうよ」
《願いがないか。ふっ、大した奴だ。わかった、では願いが決まったら私を使うと良い。私は二番目の願い玉ツヴァイ。これよりライルの所有物となろう。よろしく頼む》
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