11 / 15
第11話 仲間
しおりを挟む
宿の女将に無理矢理話を進められた俺達は今三人で一室にいた。二人は申し訳無さそうに部屋にあった椅子に腰掛けていた。実に気まずい。
「えっと……。あ、まずは自己紹介から。僕はライル。南の村から来たんだ」
それを受け彼女達も口を開く。
「私は【リナリー】です。冒険者は二年前からやってます。得意なのは火の攻撃魔法です」
「わ、私は【ミモザ】と申します。同じく二年前から冒険者をしています。特技は治療です!」
どうやら緊張しているらしい。二人ともガチガチになっていた。
「そっか。二人とも二年前から冒険者やってたんだね。ランクは?」
「二人ともDになったばかりです。ライルさんは……」
「僕はまだ冒険者になったばかりでね。まだFかな。あ、明日水路の掃除を確認してもらえたらEに上がるのかな」
二人は顔を見合わせる。
「ほ、本当にFランクなんですか? それでよくアイツに喧嘩売れましたね……」
「見てられなかったんだよ。仲間や弱者に対する彼の態度をね」
「勇気がありますね。怖くはなかったのですか?」
「怖い? そこは考えてなかったな~。そんな事を考える前に身体が動いてたんだよ」
二人は唖然としていた。冒険者にとってランクは一つの指針となる。強い者はランクも高いし、何より低ランクには長く留まらない。長く低ランクに留まる者は単純に弱いか何か問題がある奴だ。その点、彼は最速でランクを駆けあがり数ヶ月でDランクまで上りつめたそうだ。だが、短期間で力のみに頼りランクを駆けあがったせいか、解体の仕方や素行に難があったのだとか。
「とにかく、私達の事は気にしていただかなくても構いません。これからはこの町で身の丈にあった依頼をこなしていきます。ライルさんはライルさんで何か冒険者としてやりたい事があるのでしょう?」
「僕? 僕には冒険者としてやりたい事なんて特にないかな。冒険者になった目的もCランクまで上がって徴兵を回避するためだし、後僕はこれから世界を回る予定だからさ。冒険者って入場税とかとられなくなるんでしょ?」
「世界を回る……ですか。では旅目的で冒険者に?」
「まぁ……そうだね」
混沌の事は隠す事にした。言っても信じてもらえそうにないし、それに自分のスキルの事も話さなきゃならなくなる。目の前の二人は悪い人達ではなさそうだがまだ真実を話すにはリスクが高い。ライルはそう考えていた。
「なるほど。やはり私達は仲間にはなれそうにありませんね。私達はこの国で冒険者を続けていくつもりですから」
「うん。僕も二人の邪魔にはなりたくないからね。これからもお互いのやり方で冒険者として頑張っていこう」
「そうですね」
そして翌朝、ライルは二人とともに冒険者ギルドへと顔を出した。
「じゃあ僕は受付にいくから」
「はい。私達は依頼を探しに行きます」
「うん。頑張ってね」
「「ありがとうございました!」」
礼を言う二人に別れを告げ、ライルは受付に向かった。
「おはようございます」
「あらライルくん。水路の件バッチリだったわよ。おめでとう、今日から君はEランク冒険者よ」
「ありがとうございます!」
銅色のタグが新しい物に変わった。次のタグは鉄だった。ライルは新しくなったタグを首から下げた。
「じゃあ今日からはDランクの依頼まで受けられるからね。でもあまり無茶したらだめよ?」
「はいっ」
ランクを一つ上げたライルは掲示板に向かった。掲示板には長く張り出されていた依頼は一つもなく、真新しい依頼ばかりが並んでいる。
「あ、ライルさん。ランク上がったんですね」
「うん、無事にね。二人は依頼決まったの?」
「はい。私達は魔物の討伐に向かおうと思ってます。ライルさんは?」
「僕はまだ。これから見て決めるよ」
「そうですよね。では私達は東の森に行ってきます」
「気をつけてね~」
ライルは頭を下げる二人を見送り掲示板に目を向ける。
「どれにしようかな~」
ライルはEランクの依頼を見る。次のDランクに上がるためには連続で十回依頼を達成しなければならない。
「Eランクからは魔物の討伐も入るのかぁ……。レベルを上げるためにもこれを受けておこうかな」
ライルは近くの平原に現れる魔物を退治する依頼を受ける事にした。狙う魔物はスライム、蹴り兎、ワイルドウルフだ。これら魔物は倒した数だけタグに記録される。そしてさらに金を稼ぎたいならスライムは魔石、兎は肉、ワイルドウルフは毛皮と牙を剥ぎ取って来なければならない。
「よし、行こう!」
これらの依頼は恒常依頼と呼ばれ、常に張り出されている。各魔物を五体退治する事で依頼が達成される。だが仮にスライムを五十体退治した所で依頼達成数は一つだけだ。そしてEランク中に何度これを達成したとしても達成数は上がらない。つまり、今日達成できる数は三つ。ランクを上げるのは中々に難しいのである。だが失敗し連続達成が途切れた場合のみまたカウントされる事になる。なので賢い冒険者は先に七つ依頼を達成してからこの討伐を受ける。隠されたランクアップテクニックだった。
「アイツいきなり討伐いくみたいだな。素人だなぁ」
「ああ。十回連続達成ってのは思ってるより難しいんだよな。新人がつまづくのも大体がEからだしな」
他の冒険者がそう噂しているとも知らず、ライルは元気に平原へと向かうのであった。
「えっと……。あ、まずは自己紹介から。僕はライル。南の村から来たんだ」
それを受け彼女達も口を開く。
「私は【リナリー】です。冒険者は二年前からやってます。得意なのは火の攻撃魔法です」
「わ、私は【ミモザ】と申します。同じく二年前から冒険者をしています。特技は治療です!」
どうやら緊張しているらしい。二人ともガチガチになっていた。
「そっか。二人とも二年前から冒険者やってたんだね。ランクは?」
「二人ともDになったばかりです。ライルさんは……」
「僕はまだ冒険者になったばかりでね。まだFかな。あ、明日水路の掃除を確認してもらえたらEに上がるのかな」
二人は顔を見合わせる。
「ほ、本当にFランクなんですか? それでよくアイツに喧嘩売れましたね……」
「見てられなかったんだよ。仲間や弱者に対する彼の態度をね」
「勇気がありますね。怖くはなかったのですか?」
「怖い? そこは考えてなかったな~。そんな事を考える前に身体が動いてたんだよ」
二人は唖然としていた。冒険者にとってランクは一つの指針となる。強い者はランクも高いし、何より低ランクには長く留まらない。長く低ランクに留まる者は単純に弱いか何か問題がある奴だ。その点、彼は最速でランクを駆けあがり数ヶ月でDランクまで上りつめたそうだ。だが、短期間で力のみに頼りランクを駆けあがったせいか、解体の仕方や素行に難があったのだとか。
「とにかく、私達の事は気にしていただかなくても構いません。これからはこの町で身の丈にあった依頼をこなしていきます。ライルさんはライルさんで何か冒険者としてやりたい事があるのでしょう?」
「僕? 僕には冒険者としてやりたい事なんて特にないかな。冒険者になった目的もCランクまで上がって徴兵を回避するためだし、後僕はこれから世界を回る予定だからさ。冒険者って入場税とかとられなくなるんでしょ?」
「世界を回る……ですか。では旅目的で冒険者に?」
「まぁ……そうだね」
混沌の事は隠す事にした。言っても信じてもらえそうにないし、それに自分のスキルの事も話さなきゃならなくなる。目の前の二人は悪い人達ではなさそうだがまだ真実を話すにはリスクが高い。ライルはそう考えていた。
「なるほど。やはり私達は仲間にはなれそうにありませんね。私達はこの国で冒険者を続けていくつもりですから」
「うん。僕も二人の邪魔にはなりたくないからね。これからもお互いのやり方で冒険者として頑張っていこう」
「そうですね」
そして翌朝、ライルは二人とともに冒険者ギルドへと顔を出した。
「じゃあ僕は受付にいくから」
「はい。私達は依頼を探しに行きます」
「うん。頑張ってね」
「「ありがとうございました!」」
礼を言う二人に別れを告げ、ライルは受付に向かった。
「おはようございます」
「あらライルくん。水路の件バッチリだったわよ。おめでとう、今日から君はEランク冒険者よ」
「ありがとうございます!」
銅色のタグが新しい物に変わった。次のタグは鉄だった。ライルは新しくなったタグを首から下げた。
「じゃあ今日からはDランクの依頼まで受けられるからね。でもあまり無茶したらだめよ?」
「はいっ」
ランクを一つ上げたライルは掲示板に向かった。掲示板には長く張り出されていた依頼は一つもなく、真新しい依頼ばかりが並んでいる。
「あ、ライルさん。ランク上がったんですね」
「うん、無事にね。二人は依頼決まったの?」
「はい。私達は魔物の討伐に向かおうと思ってます。ライルさんは?」
「僕はまだ。これから見て決めるよ」
「そうですよね。では私達は東の森に行ってきます」
「気をつけてね~」
ライルは頭を下げる二人を見送り掲示板に目を向ける。
「どれにしようかな~」
ライルはEランクの依頼を見る。次のDランクに上がるためには連続で十回依頼を達成しなければならない。
「Eランクからは魔物の討伐も入るのかぁ……。レベルを上げるためにもこれを受けておこうかな」
ライルは近くの平原に現れる魔物を退治する依頼を受ける事にした。狙う魔物はスライム、蹴り兎、ワイルドウルフだ。これら魔物は倒した数だけタグに記録される。そしてさらに金を稼ぎたいならスライムは魔石、兎は肉、ワイルドウルフは毛皮と牙を剥ぎ取って来なければならない。
「よし、行こう!」
これらの依頼は恒常依頼と呼ばれ、常に張り出されている。各魔物を五体退治する事で依頼が達成される。だが仮にスライムを五十体退治した所で依頼達成数は一つだけだ。そしてEランク中に何度これを達成したとしても達成数は上がらない。つまり、今日達成できる数は三つ。ランクを上げるのは中々に難しいのである。だが失敗し連続達成が途切れた場合のみまたカウントされる事になる。なので賢い冒険者は先に七つ依頼を達成してからこの討伐を受ける。隠されたランクアップテクニックだった。
「アイツいきなり討伐いくみたいだな。素人だなぁ」
「ああ。十回連続達成ってのは思ってるより難しいんだよな。新人がつまづくのも大体がEからだしな」
他の冒険者がそう噂しているとも知らず、ライルは元気に平原へと向かうのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
53
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる