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第04話 ライルのスキル

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 願い玉を取り出したライルは光輝くその玉に声を掛けた。

「アインス、アインス」
《……ふわぁ~……。あ? なんだよ、起こすなよ。せっかく藁に包まれて気持ち良~く寝てたってのによ》
「寝てたとこごめんね、アインス」
《ちっ。まぁ良いや。で、何の用だ?》

 何の用。願い玉を持って声を掛けたのだ、願いがあるに決まっている。

「あの……、願いを叶えて欲しいかなって」
《あん? また他人のためか?》
「いや、今回は自分のため……かな」
《ほ~ん。なんだよ、お前にも欲があったってのか? 良いぜ? どんな願いか言ってみろよ》 
「あ、うん。実は……」 

 ライルは願い玉に自分のスキルが何なのか知りたいと願った。

《スキルがわからない?》
「うん。選定の儀からもうすぐ一年経つけどさ、未だに自分がどんなスキルを授かったかのかわからないんだ。もし……もし僕が授かったスキルが危険なものなら村の皆に迷惑がかかっちゃうからさ。どうしても僕がどんなスキルを授かったか知りたいんだよ」

 願い玉は少しの間沈黙した。

《……ちっ。まぁた人のためかよ》
「え? 違うよ? 今回は自分のためじゃない?」
《バッカお前。知りたい理由が村人のためって自分で言ってんじゃねーか。お前は自分でスキルを使いたくて言ってんじゃねぇ。他人に迷惑が掛かるかもしれないからなんなのか知りたいんだろ?》
「うん」
《ならそりゃ他人のためだろうが。ったく、このお人好しが。働かせ過ぎだっつーの》
「ご、ごめんねアインス」

 ライルはこの喋る無機物に向かって頭を下げていた。

《ったく、わかったよ。お前のスキルをわかるようにしてやる。終わったら自分で確認しな》
「どうやって?」
《は? んなもんステータスウインドウに決まってんだろうが。ステータスオープンって叫んでみな》
「え? うん。ス、ステータスオープン!」

 すると視界に何やら数値が並ぶ画面が現れた。

「なに……これ?」
《それがお前のステータスだよ。鑑定はそいつを覗き見るスキルだ。数値はお前の強さ。で、下にスキル項目があるだろ?》
「うん。なんか【?】がいっぱい並んでる」
《あ? まぁ良いや。それがお前のスキルだ。今から俺の力でそれを見える様にしてやんよ。そしたらまた俺は寝る。今度は簡単に起こすなよ?》
「あ、は、はい」
《ったく。じゃあ始めんぞ》

 願い玉はライルの願い、自分のスキルが何なのかを知りたいという願いを叶え、再び石ころに変わった。ライルはそれを再び木箱の中に収納し、ベッドの下に隠す。

「ありがとう、アインス。なるべく頼らないようにするからゆっくり休んでてね」

 ライルはベッドに腰掛ける。

「ふぅ~……。緊張するな。選定の儀以来だよ。僕にはどんなスキルがあるんだろう。それが今やっとわかるんだ。……よし、ステータスオープン!」

 ライルは意を決してステータスを確認した。

「こ、これが僕のスキル?」

 ライルが授かったスキルは全部で五つ。

「【全知】、【無限収納】、【次元転移】、【万物創造】、【不老不死】……え? な、なに……これ?」

 ライルは一つずつスキルを意識していく。すると頭の中にスキルについて知識が広がっていった。そこで知ったスキルの内容は以下の通りだ。

【全知】……全宇宙全ての知識を検索し知る事ができる。

【無限収納】……生物以外は何でも無限に収納できる。意識する事で手の平から出し入れできる。

【次元転移】……一度訪れた場所ならどこにでも転移できる。違う次元にも行けるが、行った事がない場所には行けない。

【万物創造】……なんでも作り出せる。物質だろうがスキルだろうが知っているものならなんでも。

【不老不死】……授かった時点で発動する。一生歳はとらないし、死ぬ事もない。

  ライルは呆然としていた。

「……いやいや。こんなのさすがに嘘でしょ、え、じゃあ何? 僕の身長が一年で一ミリも伸びないのはこの不老不死のせい? いやいやいやいや……これは……もしかするとかな~り危ないのでは?」

 ライルはスキル【全知】でこの世界にあるスキルで自分と同じスキルは所持者を検索してみた。

「【不老】はヴァンパイア族が持ってるみたいだけど……【不死】がついてないか……。その【不死】は死霊族……。どっちも魔族か。他の四つは誰も持ってない。該当者ゼロだ。え、待って。次元転移ってもしかしたら危険指定されるんじゃ……? ど、どどどどどうしようっ!?」

 ライルは混乱していた。

「ど……どどどどどうしようっ!? こんなのバレたら一生地下牢暮らしになっちゃうよ!」

 慌てるライルは必死に考える。

「……ダメだ。皆には黙ってはおけないよ。村の皆にはお世話になってるし……」

 ライルは覚悟を決めた。

「よし、まずは母さんに話そう」

 ライルは裁縫をしていた母の所に向かった。

「あらライル? どうしたの?」
「母さん……。大事な話があるんだ。僕のスキルが何か、やっとわかったんだ」
「えっ? わかったの!?」

 ライルは母親に願い玉の事は上手く誤魔化しつつ、全てを話した。

「……凄いじゃないっ!」
「え?」

 母親の反応は意外なものだった。

「す、凄い?」
「そうよっ、ライルは神に愛されてるのよきっと! じゃなきゃそんなスキル授からないでしょ?」
「えぇぇぇ……」

 母親は驚くどころか手放しで喜んでいた。

「ライル、直ぐに神父様と村長さんにも教えてきなさいな。ふふふっ」
「わ、わかったよ母さん」

 ライルは母親に従い、教会と村長宅へと向かうのだった。
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