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第ニ章 魔大陸の章
03 オウルの考え
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オウルは追放者を連れて戻ったクレアから実家が起こした戦と国の現状を聞き頭を抱えた。そして全てを知ったオウルは追放者達に向かい頭を下げた。
「皆さん、今回は俺の家族が迷惑を掛けるすまなかった」
「オウルさん! 何も頭を下げずとも! 貴方様は魔王なのですよ」
頭を下げるオウルをクレアが慌てて止めに入った。
「いや、これは俺の愚かな親族が巻き起こした騒動が原因だ。戦がなければ彼らは追放されずに済んだはずなんだ。追放される屈辱は俺達だって身に沁みてわかってるだろ?」
「……はい」
追放者達はまさか魔王に謝罪されると思わず困惑している。だがそんな中で一人冷静だった者がいた。
「謝られた所で俺達が国に帰れるわけじゃない」
「……すまない」
「なあ、あんた魔王なんだって? 俺達と同じ人間の……しかも追放者なんだろ? どんな手使って魔王にまで成り上がったんだよ」
「……なんだ君は」
追放者はオウルを小馬鹿にした態度で名乗りを上げた。
「俺はクレール伯爵家二男ダラン・クレールだ。スキルは【格闘術(大)】」
ダランは鋭い目つきでオウルを睨む。
「あんた俺と戦えよ」
「は?」
「俺は自分より弱い奴に従う気はない。俺のスキルは本来追放されるものじゃないんだ。近接戦闘において俺に勝てる奴はいない。あんたに勝ったら俺を魔王にしろよ」
「てめぇっ! なに調子に乗ってんだ!」
黙って聞いていたカインが間に入った。
「雑魚は退いてろよ。それとも人族の裏切り者は一対一の戦いもできないのか? はっ、流石魔族に魂を売る人間だな。どこまでも汚い」
「……それで?」
「あ?」
オウルは冷静にダランに問い掛ける。
「それでってなんだ?」
「仮に君が俺に勝って魔王になったとしよう。それで魔王になった君はどうする気だ」
「なんだ、そんな事か。決まってるだろ。魔族の首を土産に帰るのさ。魔大陸を支配した俺が帰ればグローリア王国の王だって俺に頭を下げるはずだ。俺がグローリア王国の王になりバカな貴族達を処刑してやるんだよ」
ダランの話を聞いたオウルは呆れながらため息を吐いた。
「はぁ。君はあれか? スキル至上主義者か」
「優れたスキル持ちが優遇されるのは当たり前だ」
「優れているなら追放なんかされないだろ」
「っ! それはあいつらがバカだからだ! 魔法なんて魔力が切れたら何もできないじゃないか! それがわからないバカしかいないんだ!」
「君には何を言っても通じないようだな。そんなに戦いたいなら戦ってやるよ。外に行こうか」
「上等だ。お前の全てを奪ってやる」
外に向かうオウルにカインが声を掛ける。
「オウル、どうするよ」
「問題ない。スキルにあぐらをかいて鍛錬を怠っている奴なんかに負けるはずもない。ああいった危険分子は排除しておく必要がある」
「殺るのか」
「まさか。最近新しいスキルを手に入れてね。それでわからせるさ」
「まぁた新しいスキルかよ。ま、楽しみにしてるわ」
「ああ」
決着はものの数秒で着いた。
「な、なんでだっ! 格闘術が発動しないっ!」
「君はもうスキルなしになったからだ」
「なっ!?」
オウルはダランの拳を手のひらで受けた瞬間にダランのスキルを奪い取った。
「最近手に入れたスキルでね。スキル【簒奪】っていうんだ。それで君のスキルを奪い取った」
「か、返せ!!」
「返す手段はあるが返す気はない。さて、君の考えによれば優れたスキル持ちは優遇されて然るべきだったっけ。なら今スキルがない君は最底辺になった事になるけど」
「お前がスキルを奪ったからだ! スキルなんかなくてもまだ戦える!!」
そう口走ったダランに対しオウルは諭すように語る。
「そう、スキルの優劣で人間の価値は変わらないんだよダラン」
「うっ」
「スキルがなくても人は生きてる。スキル至上主義なんて間違ってるんだよ。さらに言えば人間至上主義も間違いだ。どちらも優れたスキル持ちが贅沢をしたいがためだけに生まれた歪んだ思想だよ」
「六王の考えを否定する気か!? 人間全てが敵になるぞ」
オウルは戦いを見学しているカインとクレアを見て言った。
「全ての人間が敵になる? まだそんな妄言を言えるのか。呆れて言葉が出ないよ」
「なっ!?」
「人間だって儀式を受けられない者もいる。スキルを持たない者や汎用スキルしか得られなかった人間がいつまでも大人しくしているわけがないだろう」
「反乱か? それこそ無駄だ! スキルナシが勝てるはずない」
「スキルがあっても死ぬ時は死ぬ。大勢に斬りかかられたら抵抗すらできずにね。そして死ぬ時になってそいつは気付くんだ。スキル至上主義なんて嘘っぱちだったってね」
ダランは何も反論できなくなった。
「ダラン。俺は今の世界は魔王を除く六王によって定められた歪な世界だと思うんだ」
「歪な……世界」
「戦を否定する気はない。思想が異なれば対立するのは仕方ない事だ。だがだからといって力ない者や種族で差別される謂れはない。全ての命は平等でなければならないんだよ。六王はスキルの優劣、有無で差別を生み出した罪人だ。そしてその罪人はもうこの世にはいない。俺は魔大陸が安定したらこの間違いを正しに出る」
「……無理だな。六王のスキルが人間から消えたわけじゃない」
「人間にはもう六王は生まれない。六王のスキルはもうこちらの手にある」
「そん……な、バカな!!」
「全ては魔王シリルの思惑通りに進んでいる。これから世界は正しい方向に向かう。君も考えを改めた方が良いよ。考えを改めて間違いに気づいたらスキルを返してやる。それまで自分を見つめ直すが良い」
「くそぉぉぉっ!!」
こうして愚かにもオウルに逆らったダランは支えだったスキルを失い、オウルから告げられた話を受け身の振り方を考えるのだった。
「皆さん、今回は俺の家族が迷惑を掛けるすまなかった」
「オウルさん! 何も頭を下げずとも! 貴方様は魔王なのですよ」
頭を下げるオウルをクレアが慌てて止めに入った。
「いや、これは俺の愚かな親族が巻き起こした騒動が原因だ。戦がなければ彼らは追放されずに済んだはずなんだ。追放される屈辱は俺達だって身に沁みてわかってるだろ?」
「……はい」
追放者達はまさか魔王に謝罪されると思わず困惑している。だがそんな中で一人冷静だった者がいた。
「謝られた所で俺達が国に帰れるわけじゃない」
「……すまない」
「なあ、あんた魔王なんだって? 俺達と同じ人間の……しかも追放者なんだろ? どんな手使って魔王にまで成り上がったんだよ」
「……なんだ君は」
追放者はオウルを小馬鹿にした態度で名乗りを上げた。
「俺はクレール伯爵家二男ダラン・クレールだ。スキルは【格闘術(大)】」
ダランは鋭い目つきでオウルを睨む。
「あんた俺と戦えよ」
「は?」
「俺は自分より弱い奴に従う気はない。俺のスキルは本来追放されるものじゃないんだ。近接戦闘において俺に勝てる奴はいない。あんたに勝ったら俺を魔王にしろよ」
「てめぇっ! なに調子に乗ってんだ!」
黙って聞いていたカインが間に入った。
「雑魚は退いてろよ。それとも人族の裏切り者は一対一の戦いもできないのか? はっ、流石魔族に魂を売る人間だな。どこまでも汚い」
「……それで?」
「あ?」
オウルは冷静にダランに問い掛ける。
「それでってなんだ?」
「仮に君が俺に勝って魔王になったとしよう。それで魔王になった君はどうする気だ」
「なんだ、そんな事か。決まってるだろ。魔族の首を土産に帰るのさ。魔大陸を支配した俺が帰ればグローリア王国の王だって俺に頭を下げるはずだ。俺がグローリア王国の王になりバカな貴族達を処刑してやるんだよ」
ダランの話を聞いたオウルは呆れながらため息を吐いた。
「はぁ。君はあれか? スキル至上主義者か」
「優れたスキル持ちが優遇されるのは当たり前だ」
「優れているなら追放なんかされないだろ」
「っ! それはあいつらがバカだからだ! 魔法なんて魔力が切れたら何もできないじゃないか! それがわからないバカしかいないんだ!」
「君には何を言っても通じないようだな。そんなに戦いたいなら戦ってやるよ。外に行こうか」
「上等だ。お前の全てを奪ってやる」
外に向かうオウルにカインが声を掛ける。
「オウル、どうするよ」
「問題ない。スキルにあぐらをかいて鍛錬を怠っている奴なんかに負けるはずもない。ああいった危険分子は排除しておく必要がある」
「殺るのか」
「まさか。最近新しいスキルを手に入れてね。それでわからせるさ」
「まぁた新しいスキルかよ。ま、楽しみにしてるわ」
「ああ」
決着はものの数秒で着いた。
「な、なんでだっ! 格闘術が発動しないっ!」
「君はもうスキルなしになったからだ」
「なっ!?」
オウルはダランの拳を手のひらで受けた瞬間にダランのスキルを奪い取った。
「最近手に入れたスキルでね。スキル【簒奪】っていうんだ。それで君のスキルを奪い取った」
「か、返せ!!」
「返す手段はあるが返す気はない。さて、君の考えによれば優れたスキル持ちは優遇されて然るべきだったっけ。なら今スキルがない君は最底辺になった事になるけど」
「お前がスキルを奪ったからだ! スキルなんかなくてもまだ戦える!!」
そう口走ったダランに対しオウルは諭すように語る。
「そう、スキルの優劣で人間の価値は変わらないんだよダラン」
「うっ」
「スキルがなくても人は生きてる。スキル至上主義なんて間違ってるんだよ。さらに言えば人間至上主義も間違いだ。どちらも優れたスキル持ちが贅沢をしたいがためだけに生まれた歪んだ思想だよ」
「六王の考えを否定する気か!? 人間全てが敵になるぞ」
オウルは戦いを見学しているカインとクレアを見て言った。
「全ての人間が敵になる? まだそんな妄言を言えるのか。呆れて言葉が出ないよ」
「なっ!?」
「人間だって儀式を受けられない者もいる。スキルを持たない者や汎用スキルしか得られなかった人間がいつまでも大人しくしているわけがないだろう」
「反乱か? それこそ無駄だ! スキルナシが勝てるはずない」
「スキルがあっても死ぬ時は死ぬ。大勢に斬りかかられたら抵抗すらできずにね。そして死ぬ時になってそいつは気付くんだ。スキル至上主義なんて嘘っぱちだったってね」
ダランは何も反論できなくなった。
「ダラン。俺は今の世界は魔王を除く六王によって定められた歪な世界だと思うんだ」
「歪な……世界」
「戦を否定する気はない。思想が異なれば対立するのは仕方ない事だ。だがだからといって力ない者や種族で差別される謂れはない。全ての命は平等でなければならないんだよ。六王はスキルの優劣、有無で差別を生み出した罪人だ。そしてその罪人はもうこの世にはいない。俺は魔大陸が安定したらこの間違いを正しに出る」
「……無理だな。六王のスキルが人間から消えたわけじゃない」
「人間にはもう六王は生まれない。六王のスキルはもうこちらの手にある」
「そん……な、バカな!!」
「全ては魔王シリルの思惑通りに進んでいる。これから世界は正しい方向に向かう。君も考えを改めた方が良いよ。考えを改めて間違いに気づいたらスキルを返してやる。それまで自分を見つめ直すが良い」
「くそぉぉぉっ!!」
こうして愚かにもオウルに逆らったダランは支えだったスキルを失い、オウルから告げられた話を受け身の振り方を考えるのだった。
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