謎スキルを与えられた貴族の英雄譚

夜夢

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第一章 始まりの章

06 魔大陸の問題点②

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 食糧難に関しては解決の目処が立ったが魔大陸にはまだ問題が山積していた。

 次なる問題点は魔族以外の種族についてだ。畑に関しては十名の魔族で事足りている。魔王シリルはさっそく次なる課題を提示してきた。

「オウルよ、食糧難に関しては実によくやってくれた。おかげで魔族は飢えをしのぐことができよう」
「はっ!」
「う……む、伝わらなんだか」
「はい?」

 魔王シリルの悩みはまだあった。

「魔族はどうにかなった。だがな、魔大陸には他種族もおるのだ」
「あ! もしや獣人や亜人達ですか? 城下町にはいないのですか?」

 ここにきてから先オウルは未だ魔王城から出ていない。そのためどの種族がどう暮らしているか全く知らなかった。

「うむ。妾は共に暮らしても構わぬと言ったのじゃがの。獣人と亜人はそれぞれ長を決め新たな地に自分らの国を造ると開拓に向かったのじゃよ」
「なるほど。それでも協力関係は続いているのですね?」
「もちろんじゃ。この魔大陸には魔族の国、獣人の国、亜人の国、未開の土地と四つに分かれておるが、争いはない。じゃが……獣人の国も亜人の国も同じく食糧難じゃ」
「一大事ではないですか」

 獣人も亜人も人魔大戦において魔族と共に人族と戦った大切な仲間であり、魔王シリルはこのニ種族の問題もどうにか解決したいと考えていた。

「食糧がなければ数も増やせぬ。獣人や亜人達は魔獣を狩りながら細々と暮らしておるのが現状じゃ」
「そうでしたか。ならばすぐにでも食糧を輸送してはどうでしょうか。交易ルートはあるのでしょう?」

 そこで魔王シリルは首を横に振った。

「え? ま、まさか交易ルートがない?」
「う、うむ。今までは交易する余裕もなかったのでな。連絡は使い魔で事足りており……ここ数百年は直接対面してもおらんのじゃ」
「それ、協力関係にあるのですか? 不安しかないのですが」
「ゆ、有事の際は力を合わせる事になっておる」
「有事なんてないじゃないですか。いや、食糧難の今が有事では」
「じゃから今から交易ルートを確保するのじゃ! 獣人の国は西、亜人の国は南じゃ。じゃがその前に向こうの意思を確認せねばならぬ。勝手に街道を通して戦と勘違いさせてはならぬからの」
「わかりました。準備だけ始めておきましょう。土魔法部隊は?」

 そこで魔王シリルの隣に控えていたセヴァンスが口を開いた。

「街道整備に関しては私が動きます。そこでオウル殿には私が厳選した者らに私のスキルを複製し付与していただきたく」
「セヴァンスさんが指揮するのですか?」
「ええ。私は魔大陸を知り尽くしております。街道を通すのに相応しい土地もすでに把握済み。そして厳選した百名の執事──いえ、土魔法部隊で一ヶ月もせずに街道を一本、全工程を二ヶ月で終わらせて見せましょう」

 獣人と亜人の国とやらが魔族の国からどれだけ離れているか知らないオウルだが街道を通す事業が大変な事はわかっている。街道はただ道を敷くだけではない。

「魔獣出るんですよね? 対策は?」
「ほっほ。それに関しては何の問題もありません。街道脇に魔獣除けの水晶を等間隔で建てます。これで魔獣は街道に近付けません」
「いや、建設中の心配なのですが」
「それこそ問題ありませんな。私自ら鍛え上げ済みの部隊ですぞ。魔獣などスマートにかつエレガントに鏖殺しましょう」
「そ、そうですか」

 これはセヴァンス本来の目的を隠す計画だ。セヴァンスはかねてから執事部隊を指揮しようとしていた。この街道建設計画を通し建設完了後も自分のスキルを付与された優秀な執事を確保する事が目的だった。

「さあ、参りましょう。シリル様、オウル殿にはお借りしますぞ」
「うむ。では街道に関しては向こうからの連絡待ちとし、その間を準備期間とする。オウルはセヴァンスの要望を聞き街道建設のために尽力して欲しい」
「「はっ!」」

 謁見の間を出たオウルはセヴァンスと並び部隊の待つ部屋に向かうさなかセヴァンスからスキルについて話を聞いた。

「セヴァンスさんってそんなに沢山のスキル持ってるんですか!?」
「えぇ。私は魔王城の執事長兼シリル様の護衛ですので。戦闘からマナーまでなんでもこなせませんとな。ほっほ」
「努力したんですね。けどその努力を簡単に部下達に付与してしまって構わないのですか?」

 セヴァンスはオウルからの問いかけに笑みを浮かべた。

「簡単……ではないでしょう。私の部隊は日々厳しい訓練が課しております。すでに下地はできております。あとは切っ掛けだけ。魔王城の執事は優秀でなければ務まらないのですよ」

 その顔は笑って見えたが目だけは笑っていなかった。

 そしてその足でセヴァンスの部下百名の前に向かい、鬼軍曹と化したセヴァンスの指示を受け部下達百名にセヴァンスのスキルを複製し付与していった。これにより魔王城の執事は全てセヴァンス同様の働きが可能となった。もちろんセヴァンスのスキルを自分のモノとしたオウルも例外ではない。

「まさか執事長のスキルをいただけるとはっ!」
「いや待てよ。オウルさんは自分よりレベルが上の相手からは複製できなかったんじゃ?」
「するとオウルさんは執事長よりレベルが上?」

 ざわつく部下達をセヴァンスが一喝した。

「清聴せよ!」
「「「はっ!!」」」

 セヴァンスの一喝で部下達は直立不動となる。

「私は魔王様の持つ魔王眼スキルの一つ【レベルドレイン】で今レベルが下がっている。街道建設において発見された魔獣は私が討ちます。お前達は魔獣に手を出さないように」
「「「「はっ!」」」」
「確かにレベルは多少下がりましたが磨き上げた戦闘技術まで劣ってはない。そしてお前達もまた私のスキルを得たとはいえまだまだ未熟。街道建設をしつつスキルを使いこなせるよう精進しなさい」
「「「「ははっ!」」」」

 こうして念願だった執事部隊を手にしたセヴァンスは一週間後に二国から届いた街道建設嘆願受け、魔王城から出立したのだった。
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