スキル『箱庭』を手にした男ののんびり救世冒険譚〜ハズレスキル? とんでもないアタリスキルでした〜

夜夢

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第80話 一騎打ち

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 メディスが戻り八騎将の半分が仲間に加わった。そして加わった仲間から敵の総戦力を聞き出し、それを元に話し合った結果、メディスはこの戦勝算ありと判断した。

「残る敵は八騎将のバルド、ジレイ、ソーマ、フェーゴに私が取り逃がした魔族グリモア、そして魔王と繋がった皇帝ね。こいつらを倒せば私達の勝ちよ」

 その言葉をゼーレが呆れた様子で訂正する。

「メディス様。バルド様は完全な敵側じゃないと言いましたよ?」
「わかってるわよ。それでも帝国にいるのだからまず間違いなく戦う事になるでしょう。それとも……帝国最強の騎士は戦いもせず敵に降るような臆病者なの?」
「ないですね。バルド様は己が信念にしか従いません。なるほど、確かに帝国が魔族と繋がったとしても戦わずして敵に降る方ではありませんでした」
「そ。だからまだ敵よ。味方につけるならこちらの力を見せないとね」

 それを他の八騎将達が聞き頷いていた。

「バルドとの戦いは避けられないか。なら僕が相手をしよう」
「そうね。バルドはレイにお願いするわ。私は取り逃がした魔族を追うわ。魔族を滅せるのは勇者だけだもの」
「滅す?」
「そ。勇者以外が倒しても魂は残るのよ。魂が残れば魔王が復活させてしまうわ。こればかりはレイにもできない仕事よ」
「そっか。じゃあグリモアはメディスに任せるよ。僕はゼーレ達を率い帝国に向かう。メディス、危険の感じたら迷わず逃げてきてくれよ?」
「大丈夫よっ、そっちこそ負けないでよ?」

 レイとメディスは視線を交わし拳を重ねた。

「ゼーレ達には帝国の案内を頼むよ。目指すは皇帝の居城、下手な小細工なしの正面対決だ」
「わかりました。では私達四人が先頭に立ち露払いいたします。ラストを先頭にアネモスを中衛、私とハイレンが後衛を。ハイレンはラストに回復とバフをお願いします」
「任された」
「オッケーよ」
「俺が先頭か。いいぜ、誰だろうと相手になってやるさ」

 こうして方針が固まった翌日、レイ達は五人で帝国に向かい、メディスは再び単独で帝国に潜入した。

「じゃあ案内頼むよゼーレ」
「はいっ! あ、ラストは露払い頼みますね」
「はあ? ちっ、わかったよ。向かってくる奴らは俺に任せな」

 そう言いラストは宙空に手を挿し込み剣を取り出した。それを見たレイはラストに声を掛ける。

「今のは?」
「あん? ああ、俺のスキル【異空庫】だ。異空庫にはありとあらゆる武器が格納されてんだよ」
「なるほど。ラストのスキルは【武神】だとばかり思ってたよ」
「はっ。そりゃ間違いだ。武神はバルドのオッサンだよ」
「へぇ~」

 スキルは通常一人一つだけ授かるものだ。それにも関わらずラストはありとあらゆる武器を達人クラスで使いこなせる。若く見えるが相当訓練を積んできたのだろう。

「よくそんなにいくつも使えるよね。凄いなラストは」
「はっ。あんたに言われてもなぁ。そうだろゼーレ」
「はいっ。レイさんは学院時代剣、槍、弓、鞭、短剣などなどあらゆる武器を使ってました」

 それを聞いたラストは肩をすくめ言った。

「ほら、あんただって同じじゃねぇか。ま、俺はもっとヤルけどな」
「異空庫で手にしてる武器を変えて惑わせるんでしょ? 確かにやり辛いな。今度模擬戦してみる?」
「今度ってのがあったらな。相手はこの大陸を掌握する寸前の帝国だ。気合い入れていかなきゃ死ぬぜ」
「ああ、行こうか」

 そうして一行はラストを先頭に向かってくる帝国兵をなぎ倒しながらゴルゴーン帝国の中枢帝都【ドラッケン】を目指し駆け進んだ。

「オラオラオラァァァァァァッ! 当たると死ぬぜぇぇぇぇっ!」
「ラ、ラスト様が敵に寝返ったなどとっ! 撤退! 撤退だぁっ!」
「バカ野郎っ! 撤退なんかしたら殺されちまわぁっ! 砦で迎え撃つ!!」

 だが砦など風魔法を極めたアネモスにはハリボテ同然だった。

「舞いあがれっ! 極大暴刃魔法【エッジオブテンペスト】!!」
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」

 風の刃が砦の壁をまるで紙切れのように切り裂いていく。レイは改めて八騎将の力を目の当たりにし感嘆していた。

「凄いなぁ。あの若さで極大暴刃魔法使えるなんて」
「レイさん、アネモスはああ見えてニひゃ──」
「ゼーレちゃぁぁぁん?」
「ひっ!?」

 瞳に一切の光を宿さないアネモスがゼーレの頭を鷲掴みにする。

「今なぁに言おうとしたのかな~?」
「べ、別になにもっ!」
「私は二十歳、オーケー?」
「は、ははははいっ」

 ゼーレの頭からアネモスの手が離れる。

「レイちゃ~ん、私の魔法凄い?」
「あ、ああうん。頼りになるよアネモス」
「ふふっ。あれくらいならお安い御用よ。でも……八騎将には私より強い魔法の使い手がいるわ」
「あ、ソーマですね。確かにあの人の魔法はアネモスより……」

 アネモスはひらひらと手を振りながら言った。

「確かに私より強いけど風魔法に関しては私の方が上よ。総合力で負けてるだけ。あのお爺ちゃん人生の全てを魔法に賭けてるしねぇ。レイちゃん、ソーマとやるなら剣で一気にキメなきゃ勝てないわよ?」
「……大丈夫ですよ。自信がなきゃ攻め込みませんから」

 アネモスは一瞬呆気にとられ笑みを浮かべた。

「あらあら、それは楽しみね~」
「お~いお前ら、砦抜けるぞ! いつまで喋ってんだ~」
「あ、はいっ! 進みましょうレイさんっ」
「ああ、行こうか」

 こうしてレイ達は敵の戦力を削りながら北へと進んでいくのだった。
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