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第77話 死騎星ゼーレ
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死騎星ゼーレ。彼女はフォールガーデン出身であり、学院ではレイの後輩にあたる。成績は特に秀でたものはなかったが、ただ一点において特筆すべき力を有していた。それはレイが唯一苦手としていた闇魔法の内の一つ死霊術だ。
学院でのレイは同学年で特に親しかった者はいなかったが、自分にない力を持つゼーレの事だけは視界に入れていた。
そのため、レイは特に警戒するでもなくゼーレに自身が追放された経緯を語り、ゼーレもまたレイに追放された経緯を語った。
「なるほど。死霊術のせいで気味悪がられたか。死霊術も魔法の一つにしかすぎないんだけどね」
「私の家は代々光魔法主体でしたから……。でもレイさんはエルドニアに行ったんですよね? なぜエイジアン王国に?」
「エイジアン王国の女王メディスは僕の同級生なんだ。それに……」
レイはゼーレを見て言った。
「ゴルゴーン帝国は魔族を使いフォールガーデンを滅ぼした。君もゴルゴーン帝国にいたならわかっているはずだよね」
「……はい。レイさん、私は今ゴルゴーン帝国で死星の座に就いてます」
「なら僕達は敵同士になるね」
そう言い、刀に手を伸ばすとゼーレの口から思いもしない言葉が飛び出した。
「あのっ! レイさんもゴルゴーン帝国に来ませんか!」
「……は?」
レイは驚きのあまり固まった。
「僕が帝国に? 行くわけないだろ。帝国は魔族と繋がり戦火を拡大させている人類の敵だ」
「それは違います!」
「なんだって?」
ゼーレはゴルゴーン帝国の現状を話し始めた。
「帝国はギルム様が皇帝になり変わりました。陛下は最初から過激な方でしたが魔族を嫌っていたのです」
「じゃあなんで今は魔族を使っている」
「……陛下は魔王の力を知ってしまったのです」
「魔王? まさかもう復活しているのか!?」
レイはゼーレの肩に掴みかかった。
「い、いいいいえっ! まだ復活まではっ! しかし魔王は完全復活していないにも関わらず人間をはるかに凌ぐ力を有しています。魔王を倒せる者は勇者以外におりません。そして勇者は人間からしか生まれません。魔王は世界中に思念を飛ばし、その力を見せつけ国を操っているのです」
「国を操る? ならギルムは魔王に操られていると?」
「いえ。陛下は魔王に従ってでも帝国だけは救いたいのでしょう」
「……バカげてる。魔王がそんな約束なんて守るはずがない」
「私もそう思います。ですが従わなければ死しかありません。陛下は魔王の気まぐれで生かしてもらえる事に望みをかけているのです」
レイは呆れて開いた口が塞がらなかった。
「それで人類の裏切り者と呼ばれてもか」
「仕方ないのです。帝国に勇者はいなかった。従う以外民を守る事ができなかったのです」
「それでも他国を侵略して良い事にはならない。帝国は間違っている」
「はい。私達八騎将もそれはわかっています。中には戦バカもおりますが、本気で国を変えようと考えている者もいます!」
ゼーレの真剣な訴えにレイは思考する。
「国を変えたらどうする。犠牲になった者はもう戻らないんだぞ」
「謝罪します。そして勇者に従います」
「エイジアン王国に下ると?」
「はい。ですがそのためにはまずフォールガーデンから魔族を排除し、陛下とそれに従う者を討たなければなりません」
「フォールガーデンは大丈夫だ。今勇者メディスが魔族を倒しに向かっている」
「ああ、それでレイさんがここにいるのですね?」
「そうだ。今の僕はエイジアン王国に派遣された守護者だ」
ゼーレは地に膝をつき頭を下げた。
「レイさんっ、ならば私達に力を貸して下さいっ! 私の持つ情報は全てお話します! 虫の良い話かもしれませんが帝国を正すために!」
「わかった。知らない仲じゃないし、本音を言えばゼーレとは戦いたくない。全部話してもらうよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
こうして八騎将の一人ゼーレが同行する事になり、そのゼーレから倒すべき相手を聞き出した。
「まず今のゴルゴーン帝国に不満を抱えているのが八騎将最強の騎士で一騎星【バルド】です」
「八騎将最強の騎士が国に不満を?」
「はい。バルドは先代皇帝に見出された騎士です。彼は魔族を敵視しており、今のやり方に疑問を抱いております」
「なるほど。それでも国を離れないのは愛国心からか」
「はい。もし仲間に加えるならゴルゴーン帝国を滅ぼさないように敵だけ倒さなければなりません」
「わかった」
ゼーレは説明を続けた。
「他に説得できそうな者は六騎星【アネモス】、七騎星【ラスト】、八騎星【ハイレン】でしょうか」
「半分は仲間になりそうって事か。求心力ないね」
「魔族に与した時点で終わってます」
「他は説得すら無理そう?」
そう尋ねるとゼーレは悩んだ。
「二騎星【ジレイ】と五騎星【フェーゴ】は戦好きのバカですね。仲間にするメリットがありません。そして一番問題なのが三騎星【ソーマ】ですね」
「強いのか?」
「強い……と言いますか、魔導の追究にしか興味がない変わり者なんですよ。魔導の道を極めるためなら魔族にでも魂を売り渡す外道です。あ、ちなみにアネモスとは非常に仲が悪いですね」
「アネモスも魔法使いだったか」
「はい。ソーマが永き時をかけ身に付けた魔法をアネモスはスキルを得た瞬間から使えるようになり……ようは嫉妬ですね」
「なるほどなぁ~……」
スキルは努力の結果を嘲笑うように懸命に努力した者を置き去りにしていく。レイも一歩間違えばソーマのようになっていた可能性は大いにあった。
「よしわかった。じゃあ作戦を考えようか」
「はいっ!」
八騎将の能力と性格を知ったレイはゼーレと作戦を詰めていくのだった。
学院でのレイは同学年で特に親しかった者はいなかったが、自分にない力を持つゼーレの事だけは視界に入れていた。
そのため、レイは特に警戒するでもなくゼーレに自身が追放された経緯を語り、ゼーレもまたレイに追放された経緯を語った。
「なるほど。死霊術のせいで気味悪がられたか。死霊術も魔法の一つにしかすぎないんだけどね」
「私の家は代々光魔法主体でしたから……。でもレイさんはエルドニアに行ったんですよね? なぜエイジアン王国に?」
「エイジアン王国の女王メディスは僕の同級生なんだ。それに……」
レイはゼーレを見て言った。
「ゴルゴーン帝国は魔族を使いフォールガーデンを滅ぼした。君もゴルゴーン帝国にいたならわかっているはずだよね」
「……はい。レイさん、私は今ゴルゴーン帝国で死星の座に就いてます」
「なら僕達は敵同士になるね」
そう言い、刀に手を伸ばすとゼーレの口から思いもしない言葉が飛び出した。
「あのっ! レイさんもゴルゴーン帝国に来ませんか!」
「……は?」
レイは驚きのあまり固まった。
「僕が帝国に? 行くわけないだろ。帝国は魔族と繋がり戦火を拡大させている人類の敵だ」
「それは違います!」
「なんだって?」
ゼーレはゴルゴーン帝国の現状を話し始めた。
「帝国はギルム様が皇帝になり変わりました。陛下は最初から過激な方でしたが魔族を嫌っていたのです」
「じゃあなんで今は魔族を使っている」
「……陛下は魔王の力を知ってしまったのです」
「魔王? まさかもう復活しているのか!?」
レイはゼーレの肩に掴みかかった。
「い、いいいいえっ! まだ復活まではっ! しかし魔王は完全復活していないにも関わらず人間をはるかに凌ぐ力を有しています。魔王を倒せる者は勇者以外におりません。そして勇者は人間からしか生まれません。魔王は世界中に思念を飛ばし、その力を見せつけ国を操っているのです」
「国を操る? ならギルムは魔王に操られていると?」
「いえ。陛下は魔王に従ってでも帝国だけは救いたいのでしょう」
「……バカげてる。魔王がそんな約束なんて守るはずがない」
「私もそう思います。ですが従わなければ死しかありません。陛下は魔王の気まぐれで生かしてもらえる事に望みをかけているのです」
レイは呆れて開いた口が塞がらなかった。
「それで人類の裏切り者と呼ばれてもか」
「仕方ないのです。帝国に勇者はいなかった。従う以外民を守る事ができなかったのです」
「それでも他国を侵略して良い事にはならない。帝国は間違っている」
「はい。私達八騎将もそれはわかっています。中には戦バカもおりますが、本気で国を変えようと考えている者もいます!」
ゼーレの真剣な訴えにレイは思考する。
「国を変えたらどうする。犠牲になった者はもう戻らないんだぞ」
「謝罪します。そして勇者に従います」
「エイジアン王国に下ると?」
「はい。ですがそのためにはまずフォールガーデンから魔族を排除し、陛下とそれに従う者を討たなければなりません」
「フォールガーデンは大丈夫だ。今勇者メディスが魔族を倒しに向かっている」
「ああ、それでレイさんがここにいるのですね?」
「そうだ。今の僕はエイジアン王国に派遣された守護者だ」
ゼーレは地に膝をつき頭を下げた。
「レイさんっ、ならば私達に力を貸して下さいっ! 私の持つ情報は全てお話します! 虫の良い話かもしれませんが帝国を正すために!」
「わかった。知らない仲じゃないし、本音を言えばゼーレとは戦いたくない。全部話してもらうよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
こうして八騎将の一人ゼーレが同行する事になり、そのゼーレから倒すべき相手を聞き出した。
「まず今のゴルゴーン帝国に不満を抱えているのが八騎将最強の騎士で一騎星【バルド】です」
「八騎将最強の騎士が国に不満を?」
「はい。バルドは先代皇帝に見出された騎士です。彼は魔族を敵視しており、今のやり方に疑問を抱いております」
「なるほど。それでも国を離れないのは愛国心からか」
「はい。もし仲間に加えるならゴルゴーン帝国を滅ぼさないように敵だけ倒さなければなりません」
「わかった」
ゼーレは説明を続けた。
「他に説得できそうな者は六騎星【アネモス】、七騎星【ラスト】、八騎星【ハイレン】でしょうか」
「半分は仲間になりそうって事か。求心力ないね」
「魔族に与した時点で終わってます」
「他は説得すら無理そう?」
そう尋ねるとゼーレは悩んだ。
「二騎星【ジレイ】と五騎星【フェーゴ】は戦好きのバカですね。仲間にするメリットがありません。そして一番問題なのが三騎星【ソーマ】ですね」
「強いのか?」
「強い……と言いますか、魔導の追究にしか興味がない変わり者なんですよ。魔導の道を極めるためなら魔族にでも魂を売り渡す外道です。あ、ちなみにアネモスとは非常に仲が悪いですね」
「アネモスも魔法使いだったか」
「はい。ソーマが永き時をかけ身に付けた魔法をアネモスはスキルを得た瞬間から使えるようになり……ようは嫉妬ですね」
「なるほどなぁ~……」
スキルは努力の結果を嘲笑うように懸命に努力した者を置き去りにしていく。レイも一歩間違えばソーマのようになっていた可能性は大いにあった。
「よしわかった。じゃあ作戦を考えようか」
「はいっ!」
八騎将の能力と性格を知ったレイはゼーレと作戦を詰めていくのだった。
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