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第66話 エルドニアの方針は
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レイのもとから去ったコード1はその足で王城に駆け込み、ヴェルデ国王とオルス大臣にイストリアの件を報告した。
「報告は以上となります」
「わかった。オルス、どう思うよ?」
報告を聞いたオルスはコード1に尋ねた。
「イストリアと言えば確かレイ殿の実家では?」
「はい」
「彼にはもう話しましたか?」
「はい。自分には関係のない話で、エルドニアが攻められた場合ならば動くと」
「ふむ」
オルスはコード1を見ながら言った。
「彼は正しい選択をしたようだ」
「え? い、いやっ! しかしイストリアは実家ですよ!?」
「君こそちゃんと理解しているのか?」
「何をですか?」
オルスは溜め息を吐き言った。
「イストリアは彼のスキルのみを見て追放したんですよ。それから一切の援助もないままね。そんな輩が危なくなったから助けろなどと虫が良すぎます」
「そう……ですね」
そんなオルスの言葉に珍しくヴェルデが賛同した。
「確かにな。あいつに助けに行く義理なんざ欠片もねぇ。そんで行ったとしてももう手遅れだろうよ」
「手遅れ?」
「イストリアはフォールガーデンの剣だからな。そこが消えたらもうあとは有象無象よ。つーかオルス。なんかきな臭くね?」
そこでオルスはヴェルデに感心した。
「野生の勘か? お前にしては鋭いじゃないか」
「うっせバーカ。魔族が国の事情まで考えて攻め入るなんざおかしいに決まってんだろ。魔族はすべからく皆殺しにしてきやがるからな。北から来たとしたらいきなりイストリアってのがまずおかしいんだよ」
「同感だ。おそらくだが裏で魔族と繋がっている奴がいるな」
ヴェルデはオルスに自らの推測を告げる。
「フォールガーデンが邪魔な国っつったら……一つしかねぇな。黒幕は【ゴルゴーン帝国】だな」
「私も同意見だ。ゴルゴーン帝国皇帝は欲深いからな。私達エルドニアが介入でもしたら瞬く間に侵略されてしまうだろう」
「ああ、悔しいが戦力に差がありすぎらぁ。レイの判断は間違っちゃいない。あいつはもうエルドニアの英雄だからな。逆に行くってんなら俺が止めてたわ」
二人の話を聞き、コード1は納得した。
「確かに……。レイ様はただ憎いから向かわないとばかり思っていました」
「あ? 憎いに決まってんだろ」
「はい?」
「どこの世界に自分を蔑んだ奴らを助けに行くバカがいるよ? いるとしたらかなりのバカか聖人君子だろ。奴らが滅ぶのは自業自得だ」
「な、なるほど」
ヴェルデはスッと玉座から立ち上がった。
「オルス、急いでフォールガーデンとの国境を封鎖だ。難民がきたらエスタに向かわせろ」
「それが最善策だろうな。すぐに手配する」
最後にヴェルデがコード1に告げた。
「お前、アリスんとこの兵隊だよな?」
「は、はい」
「アリスには俺から伝えとくからよ、レイの野郎が無茶しないか監視しといてくれ」
「私がですか? すでにコード4が監視任務に就いておりますが」
「バカ。あいつは転移石を持ってんだぞ? 一人じゃカバーしきれねぇだろ」
コード1は手を挙げた。
「ご心配には及びません。転移石はありませんが通信水晶はあります。エルドニア全土に部下が散っておりますので居場所を見失う事はありません」
「……お前ら何人いんだよ。まぁ良いや。とにかくレイを頼む。今あいつに消えられたらエルドニアなんぞ一瞬で滅ぶからな」
「ははっ! では一度アリス様の所へ向かいます」
「ああ、ぬかるなよ」
この翌日、エルドニア王都は慌ただしく動き始めた。町では住民達が王からのお触れを目にし、不安が広がっていた。
「ついに魔族がフォールガーデンまで来たか……」
「イストリアが滅亡したって嘘だろ!? 目と鼻の先じゃねぇか!」
「王は国境で食い止める気らしいが……イストリアで無理だったんだろ? 勝てるわけねぇよ……」
「何言ってんだ。こっちには一人で反乱軍をぶっ潰したレイ様がいるじゃねぇか!」
「け、けどよぉ」
「今回もきっと何とかなるさ。いや、何とかしてくれるはずだ。俺はレイ様を信じるぜ!」
レイは路地裏から住民達の声を聞いて頭を抱えていた。
「ああっもうっ! どうしてこう次から次に問題が起きるんだよ! あぁ……箱庭に引き篭もりたいよ……」
そしてレイは箱庭に入りリリーと竜二体に愚痴をこぼした。
《魔族~? あんなん雑魚じゃない。なんならアタシが殺ってあげよっか? この前のお酒十本で手を打つわよ?》
《愚かな。我らは来たる時のために力を蓄えておかなければならぬのだぞ。矮小な人間のために力を浪費できるか》
「う~……。ミーレスをホームにしてたから心配なの……」
アクアドラゴンは酒目当て。アースドラゴンは関わる気すらない。リリーは知り合いが心配だが抱えた卵を手放す気はない様子で、誰も助けに向かう気はない。
「そういえばグリフォンの卵ってまだ孵らないの?」
「魔力は注いでるけど私の魔力は少ないからあまり進まないなの」
そこでドラゴン二体が卵を見る。
《気にはなっていたが……それは神獣グリフォンの卵だったか》
《神獣グリフォンねぇ。昔は神の使徒だったけど……卵だからかしら? 全く神力を感じないわね》
「え?」
アクアドラゴンが卵に触れた。
《……これ、魔力じゃ無理だわ》
「え?」
《だって神とのリンクが切れてるもの。これじゃいくら魔力を注いでも孵らないわよ》
「そ、そうなの!?」
《孵したいなら魔力じゃなくて聖女の祈りよ》
「そんなぁ~なの……」
リリーは卵を抱えながら落ち込むのだった。
「報告は以上となります」
「わかった。オルス、どう思うよ?」
報告を聞いたオルスはコード1に尋ねた。
「イストリアと言えば確かレイ殿の実家では?」
「はい」
「彼にはもう話しましたか?」
「はい。自分には関係のない話で、エルドニアが攻められた場合ならば動くと」
「ふむ」
オルスはコード1を見ながら言った。
「彼は正しい選択をしたようだ」
「え? い、いやっ! しかしイストリアは実家ですよ!?」
「君こそちゃんと理解しているのか?」
「何をですか?」
オルスは溜め息を吐き言った。
「イストリアは彼のスキルのみを見て追放したんですよ。それから一切の援助もないままね。そんな輩が危なくなったから助けろなどと虫が良すぎます」
「そう……ですね」
そんなオルスの言葉に珍しくヴェルデが賛同した。
「確かにな。あいつに助けに行く義理なんざ欠片もねぇ。そんで行ったとしてももう手遅れだろうよ」
「手遅れ?」
「イストリアはフォールガーデンの剣だからな。そこが消えたらもうあとは有象無象よ。つーかオルス。なんかきな臭くね?」
そこでオルスはヴェルデに感心した。
「野生の勘か? お前にしては鋭いじゃないか」
「うっせバーカ。魔族が国の事情まで考えて攻め入るなんざおかしいに決まってんだろ。魔族はすべからく皆殺しにしてきやがるからな。北から来たとしたらいきなりイストリアってのがまずおかしいんだよ」
「同感だ。おそらくだが裏で魔族と繋がっている奴がいるな」
ヴェルデはオルスに自らの推測を告げる。
「フォールガーデンが邪魔な国っつったら……一つしかねぇな。黒幕は【ゴルゴーン帝国】だな」
「私も同意見だ。ゴルゴーン帝国皇帝は欲深いからな。私達エルドニアが介入でもしたら瞬く間に侵略されてしまうだろう」
「ああ、悔しいが戦力に差がありすぎらぁ。レイの判断は間違っちゃいない。あいつはもうエルドニアの英雄だからな。逆に行くってんなら俺が止めてたわ」
二人の話を聞き、コード1は納得した。
「確かに……。レイ様はただ憎いから向かわないとばかり思っていました」
「あ? 憎いに決まってんだろ」
「はい?」
「どこの世界に自分を蔑んだ奴らを助けに行くバカがいるよ? いるとしたらかなりのバカか聖人君子だろ。奴らが滅ぶのは自業自得だ」
「な、なるほど」
ヴェルデはスッと玉座から立ち上がった。
「オルス、急いでフォールガーデンとの国境を封鎖だ。難民がきたらエスタに向かわせろ」
「それが最善策だろうな。すぐに手配する」
最後にヴェルデがコード1に告げた。
「お前、アリスんとこの兵隊だよな?」
「は、はい」
「アリスには俺から伝えとくからよ、レイの野郎が無茶しないか監視しといてくれ」
「私がですか? すでにコード4が監視任務に就いておりますが」
「バカ。あいつは転移石を持ってんだぞ? 一人じゃカバーしきれねぇだろ」
コード1は手を挙げた。
「ご心配には及びません。転移石はありませんが通信水晶はあります。エルドニア全土に部下が散っておりますので居場所を見失う事はありません」
「……お前ら何人いんだよ。まぁ良いや。とにかくレイを頼む。今あいつに消えられたらエルドニアなんぞ一瞬で滅ぶからな」
「ははっ! では一度アリス様の所へ向かいます」
「ああ、ぬかるなよ」
この翌日、エルドニア王都は慌ただしく動き始めた。町では住民達が王からのお触れを目にし、不安が広がっていた。
「ついに魔族がフォールガーデンまで来たか……」
「イストリアが滅亡したって嘘だろ!? 目と鼻の先じゃねぇか!」
「王は国境で食い止める気らしいが……イストリアで無理だったんだろ? 勝てるわけねぇよ……」
「何言ってんだ。こっちには一人で反乱軍をぶっ潰したレイ様がいるじゃねぇか!」
「け、けどよぉ」
「今回もきっと何とかなるさ。いや、何とかしてくれるはずだ。俺はレイ様を信じるぜ!」
レイは路地裏から住民達の声を聞いて頭を抱えていた。
「ああっもうっ! どうしてこう次から次に問題が起きるんだよ! あぁ……箱庭に引き篭もりたいよ……」
そしてレイは箱庭に入りリリーと竜二体に愚痴をこぼした。
《魔族~? あんなん雑魚じゃない。なんならアタシが殺ってあげよっか? この前のお酒十本で手を打つわよ?》
《愚かな。我らは来たる時のために力を蓄えておかなければならぬのだぞ。矮小な人間のために力を浪費できるか》
「う~……。ミーレスをホームにしてたから心配なの……」
アクアドラゴンは酒目当て。アースドラゴンは関わる気すらない。リリーは知り合いが心配だが抱えた卵を手放す気はない様子で、誰も助けに向かう気はない。
「そういえばグリフォンの卵ってまだ孵らないの?」
「魔力は注いでるけど私の魔力は少ないからあまり進まないなの」
そこでドラゴン二体が卵を見る。
《気にはなっていたが……それは神獣グリフォンの卵だったか》
《神獣グリフォンねぇ。昔は神の使徒だったけど……卵だからかしら? 全く神力を感じないわね》
「え?」
アクアドラゴンが卵に触れた。
《……これ、魔力じゃ無理だわ》
「え?」
《だって神とのリンクが切れてるもの。これじゃいくら魔力を注いでも孵らないわよ》
「そ、そうなの!?」
《孵したいなら魔力じゃなくて聖女の祈りよ》
「そんなぁ~なの……」
リリーは卵を抱えながら落ち込むのだった。
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