上 下
59 / 81

第59話 リーンウッドの森

しおりを挟む
 新しいモフモフ魔獣を確保すべくレイはリリーを伴いリーンウッドの森に入った。

「リリー! こっちに引き連れて走れっ!」
「いっくなの~っ!」
《ガアァァァァッ!!》
《ガウッ! ガルルルルッ!!》

 レイが扉を開きリリーが魔獣を引き連れ箱庭に駆け込む。二人は実に息があっていた。

「モフモフ~モフモフなの~」
「ホワイトタイガーの子どもビッグベアの子どもかぁ~。ビッグベアはミニベアと違って胸に月みたいな模様があるんだなぁ」

 ビッグベアはフォールガーデンにしかいないと思っていたのでわざわざ足を運ぶ必要もなくなった。

「これでモフモフの園もパワーアップなのっ」
「今や人気施設だからなぁ。知らない内に屋台とかできてたし」
「みんなモフモフの虜なのっ」

 娯楽の少ない箱庭世界で魔獣パークは連日親子連れで大人気を博していた。園内にはいつの間にか屋台が出店され、魔獣の世話係も増員されていた。

「恐るべしモフモフパワーだなぁ。もうちょっと探してみる? 奥地はまだ未探索地域らしいし」
「行くなのっ!」
「わかった。じゃあ外に戻ろうか」

 新しく増やした魔獣達を飼育員に預け二人は森に戻った。

「でも思ってたより広いよねこの森」
「まだ端が見えないし木が高いなの」
「飛行で確認したけどあと半分くらいあるよ」
「広すぎだし魔獣ちょっと強いなの」
「そうだね。フォールガーデンでよく見る魔獣が多いかな」

 リーンウッドの町周辺はホワイトタイガーやビッグベア、ジャイアントスパイダーが出現し、森の中間地点ではオーク、ハイオーク、ミノタウロス、ツリーディアなどが出現していた。

「っ! レイ……あれっ!」
「……ああ、気付いてる。あんなのがエルドニアにいたのか……」

 森の中に開けた場所があり、そこで陽の光を浴びながら巨大な竜種が眠っていた。

「ど、どうするなの?」
「……刺激しないように迂回しよう。竜種は普通の魔獣と違い魔王の支配下にはない。さらに高い知能を有していて言葉も話せる。だが危険な魔獣には変わりない。本で知っただけだけど」
「ゆ、ゆっくり離れるなの……」

 二人は竜から視線を外さずゆっくり後退していく。その際絶対やるだろうと思っていたリリーがやはりやらかした。リリーは落ちていた枝を思いっきり踏み大きな音を発してしまった。

「バ、ババババカッ! なにしてんだよっ!?」
「はわわわわっ。起きたなのっ!」

 竜の片目が開き、のっそりと身体を起こしアクビをした。竜はまるで岩のような身体をしており、体長は六メートルくらいある。

《ほう。久しぶりの客だな。ここは我【アースドラゴン】の縄張りだ。何故縄張りに侵入した人間よ》
「し、喋ったなのっ!?」
「さっき喋るって教えただろ! アースドラゴン! 僕達に敵意はないっ! 縄張りに侵入したのは偶然で知らなかったからだっ」

 アースドラゴンはジッとレイを見る。

《ほう。お主箱庭持ちか》
「えっ!?」

 驚いた事にアースドラゴンの口から箱庭の名称が飛び出した。

「し、知ってるんですか!?」
《うむ。我の古き知り合いに所有者がいた。千年前の話だがな》
「は、箱庭について教えてもらえませんか!」
《なに? ふむ……。構わぬが一つ条件がある》
「条件?」

 そこでアースドラゴンの瞳が青から紅に変わった。

《寝起きの運動に付き合ってもらうぞっ! 知識を欲するならば対価を示せっ! 我はアースドラゴン! 土を司る古代竜なりっ!》
「くっ! やるぞリリー!」
「わ、わかったなのっ!」

 レイは刀を構えリリーはオリハルコンの鎚を構える。アースドラゴンは翼がない竜だ。攻撃手段は限られている。

「散開だリリー! 正面には立つなよ!」
「わかったなのっ!」

 二人は左右に展開しアースドラゴンの攻撃を警戒する。

《ゆくぞ人間よっ! アースウィップ!!》
「飛べっリリー!!」

 アースドラゴンの身体が回転し岩の尻尾が木々をなぎ倒しながら二人に襲いかかる。

「ハァァァァァッ!」
《むっ!! アースブレス!!》
「ちぃっ! 回避っ!!」

 回転が止まったアースドラゴンに飛行を使い斬り掛かろうとするもアースドラゴンの口から石つぶてが放たれ回避に徹するしかない。

「こっちもいるなのっ! クラッシュハンマー!!」
《んがっ!? 貴様のその力──ドワーフかっ!》
「良いぞリリー! 喰らえっ! 風刃裂波!!」

 レイは空中から風の攻撃魔法でアースドラゴンの表皮を斬り刻んでいく。

《剣士かと思いきや魔法使いかっ! ますます知り合いに似ておるわっ! だが我とて竜の誇りがあるっ! 簡単には負けんぞっ!!》
「えぇ……。いつの間にか運動からバトルになってる──回避っ!」
「振り回しなのぉぉぉっ!」

 それから数時間に及ぶ戦いで森は荒れに荒れた。

《ハハハハッ! やるではないか! その小さき身体で我とやり合うとはなっ!》
「レイ! スピード落ちてきてるなのっ!」
「わかってる! そろそろキメる!」
《舐めるでないぞっ! 我最大の技を見よ!》

 アースドラゴンが空中に浮かび上がる。

「えっ!? 飛ぶなのっ!?」
「違うっ! リリー! 着地に合わせ浮かべっ!」
《喰らえいっ! アースクイクッッ!!》

 その日エルドニア全土が揺れたという。

「それを待っていたっ! これで終わりだっ! ハァァァァッ!!」
《ガァッ!! ぐ……ぐぅぅっ》

 アースクエイクは大技故に放ったあとに硬直状態になる。レイはその隙を狙いアースドラゴンの頭部に力を込めた一撃を放った。

 アースドラゴンの巨体が揺れ地面に崩れ落ちた。

《ハ……ハハハハッ! 見事なり! ここは負けを認めよう。少し待て。回復したら話をしてやろう》
「はぁはぁ……。だ、大丈夫リリー?」
「な、なんとか……なのっ」

 リリーは疲れ果て地面に座り込んだ。レイは刀をしまいゆっくりと地上に降りるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

キモオタ レベル0★世界最弱のオタク高校生の僕だけレベルアップ!美女に囲まれハーレム青春物語

さかいおさむ
ファンタジー
街中にダンジョンが現れた現代日本。 人々には戦士としてのレベルが与えられる。 主人公は世界最弱のレベル0。 レベルの低さに絶望していたある日、戦士のレベルの10倍の強さになるというボスが現れる。 世界で倒せるのレベル0の主人公だけ。 ダンジョンで戦うことは諦めていた主人公だが、その日から自分だけがレベルアップできることに。 最強戦士になって、美女の仲間たちとダンジョンの秘密を解き明かす。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

処理中です...