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第41話 平定
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王城にエルフの一団が来たと知らせがあり、レイはヴェルデ王に呼ばれ謁見の間でこの話し合いに立ち入る事になった。
ヴェルデは座る玉座から数段下で頭を下げるエルフの一団を見てレイに声を掛けた。
「レイ、こいつらが反乱軍に与していた奴らか?」
「そうですね。全員見覚えがります。頭目は先頭にいる長い金髪の男でクロードと呼ばれてました」
「そうか」
ヴェルデは黙ったまま頭を下げるエルフに声を掛けた。
「面を上げろ」
するとエルフの一団が一斉に頭を上げ真っ直ぐヴェルデを見た。
「さて、まずはお前らエルフが反乱軍に参加していた理由だが。これは先の大臣ハロルド・ダレンティンに騙された。これで合っているか?」
「……はい」
「ふむ。じゃあサバキを言い渡す。お前ら全員国外追放だ」
「なっ!?」
先頭にいたクロードが声を上げる。
「それはあまりに酷すぎる! 我らはエルドニア国内に領地こそあれど全て我らの裁量で政を行ってきた! そもそも悪いのはハロルドであり、大臣に任命した貴様ではないか!」
「あ? 任命したのは先代国王だ。俺は知らねぇよ」
「使ってきたのは事実だろう! 今回の件はお互いに責がある!」
「だとしても反乱軍に参加したのはお前らの意思だろう。この国の法じゃ国家転覆罪は死罪なんだわ。そこを国外追放で許してやるって言ってんだ、優しいだろうが」
エルフ達もよく調べずに反乱軍に参加したのだからヴェルデは言い分は正しい。途中で抜けたとはいえエスタの町を占拠していたのは事実だ。
クロードは膝をついて頭を下げる。
「頼む! 我らはどうなっても良い。だが他のエルフは許してくれっ! 悪いのは我らだけだ!」
「ふむ。オルス、どう思う?」
黙っていたオルスが口を開いた。
「確かに彼らはハロルドに騙された所はありますが、国に逆らおうとした事実は変わりません。もし償う気があるのであれば、無給にて我が王国で働いてもらえば良いかと」
「だとよ。お前らが王国軍に参加し、生涯タダ働きすんなら他のエルフ共は許してやる。拒むなら全員国外追放だ」
「我々に奴隷になれというのか……」
クロードは少し考え共にいたエルフ達に言った。
「お前ら、すまんが全てのエルフのためだ。俺と共にここで奴隷として働こう」
「クロード様……。ヴェルデ王! せめてクロード様だけでも許してはもらえないか!」
「許せるはずがねぇだろ。ここで甘い顔したら舐められちまう。反乱は重罪だ」
「くっ!」
力なく膝をつくエルフ達に向けヴェルデが告げる。
「お前らの勤務地はエルフの森とする」
「「「え?」」」
「聞こえなかったか? お前らには今後二度とこの様な事が起きぬよう、王国軍としてエルフの森に駐留してもらうって言ったんだ。不服か?」
クロードが頭を下げ、感謝の言葉を口にする。
「……この度は誠に申し訳なかった。以後この様な事は我の名にかけて起こさないと誓おう」
「ああ、そうしてくれ。誰か一人で良いから定期的に報告を寄越してくれ。話は以上だ、下がって良いぞ」
エルフ達はもう一度深く頭を下げ、騎士隊長と共に謁見の間を出ていった。
そして全てが解決したかに見えたが、ヴェルデはレイを解放しなかった。
「ヴェルデ王、僕はいつまで城にいたら良いのですか?」
「あん? そうだな、そろそろお前のスキルについて俺らに話してくんねぇかな?」
「それは……」
レイはスキルの事になると口をつむぐ。ヴェルデはレイのスキルが異常なものであると察していた。
「お前の箱庭だっけ? 戦闘系スキルでもないのに空を飛んだり単独で町を一つ落としたりよぉ、もう看過できねぇんだわ。正直に話すってんなら解放してやるし、秘密は漏らさないと約束してやる」
レイは更に一つ条件を付け加える。
「僕を戦に利用しないも加えてもらえます? 誰かに利用されるのは嫌なので。僕は僕が正しいと信じた道を貫きたいのです」
「ああ、約束しよう。お前の力を私利私欲で利用しない。これで良いか?」
「……はぁ、仕方ないですね。では──」
レイは自分の隣に扉を出した。
「あ? 扉?? それどっから出したよ?」
「これが僕のスキル箱庭の入り口です。危険はないのでどうぞ中へ。オルス様もどうぞ」
「これは初めて見るスキルだ。実に興味深い」
レイは扉を開きヴェルデとオルスを箱庭の中に招いた。二人は中に入り目の前に広がる広大な土地と町並みを見て唖然としていた。
「な、なんだこりゃ!? 町があるぞ!? いったいどこの町だ!?」
「転移スキル……ではないな。景色は外に酷似しているが何かがおかしい気がする。箱庭……そ、そうか! これはレイ殿のスキルが生み出した世界か!」
「はい。これが僕のスキル箱庭の世界です。そして僕はこの世界に住む全ての住民のスキルを使えるようになるのです」
「「な、なにぃっ!?」」
それがどれ程途轍もない事か二人は理解していた。
「人が増えれば増えるだけ無限に強くなるってのか!? 規格外すぎる!」
「これは……不遇スキルなんてとんでもないっ! まさに神の如き御業ではないか! し、食糧はどうなっているのだ?」
「畑の作物は一日に一度回収できます。その他魔獣の肉、素材、鉱石など資材が尽きる事はありません」
「な、なぜ!? 世界の法則が通用しないのか!?」
「なぜそうなっているかはわかりませんが、この世界はそういう世界だと割り切ってます」
そこでヴェルデがドワーフの姿を目にした。
「おいおい、ドワーフがいるじゃねぇか!」
「はい。それと、ここにいる五千人弱の住民はエスタで救出した人達です」
そう告げるとオルスはどこか納得がいった表情で腕組みをしながら言った。
「なるほど。このスキルがあればレイ殿さえ町の中に潜入できれば闇に紛れ住民を脱出させる事が可能になる。どうやって救出したか騎士隊長も疑問に思っていたがこれで合点がいった」
「かぁ~。これじゃおいそれと口にできねぇって理由がわかるわ。こりゃそうそう口にしていいスキルじゃねぇ。こんなもんいくらでも戦に利用できちまうじゃねぇか」
「そうですね。それと中で犯罪をはたらいた瞬間外に強制排出され二度と中には戻れなくなります」
「住むにも条件があるのか。ま、そうだな。さすがにそこまでルール無用じゃなんでもできちまいもんなぁ」
レイのスキルを知ったヴェルデはしばらく悩みレイに告げた。
「レイ、約束は守る。俺らはこの事を墓場まで持っていく。だがよ、もしフォールガーデンがエルドニアに侵攻してきたらお前の力を借りたい」
「利用はされたくないと言ったつもりですが」
「戦には利用しない。それは誓う。戦が始まっちまったらお前の力で戦えない国民達をここに避難させて欲しいんだ。戦いは俺らでやる。お前は弱き者達を救ってくれたら良いんだ」
レイはヴェルデの真剣な提案を受け口を開く。
「それはつまりエルドニアに拠点を構えろと?」
「できたら王都にいて欲しいな。すぐ動けるようにな」
レイにはネストから手に入れた転移石がある。転移石は一度でも訪れた記憶がある場所なら思い浮かべるだけでその場に一瞬で転移できる。
「わかりました。しばらくはエルドニアを見て回るつもりでしたから構いませんよ。戦に巻き込まれる民がいたらここに招きます。できたら戦にならない事を祈りますが」
「ありがてぇ。出たらお前に勲章をやるよ。エルドニア内ならどの町もフリーパスで入れる勲章をな」
「ちょうだいします」
こうしてエルドニアで起きた反乱は終幕し、レイの活躍は秘匿されたままこの騒動は幕を下ろしたのだった。
ヴェルデは座る玉座から数段下で頭を下げるエルフの一団を見てレイに声を掛けた。
「レイ、こいつらが反乱軍に与していた奴らか?」
「そうですね。全員見覚えがります。頭目は先頭にいる長い金髪の男でクロードと呼ばれてました」
「そうか」
ヴェルデは黙ったまま頭を下げるエルフに声を掛けた。
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するとエルフの一団が一斉に頭を上げ真っ直ぐヴェルデを見た。
「さて、まずはお前らエルフが反乱軍に参加していた理由だが。これは先の大臣ハロルド・ダレンティンに騙された。これで合っているか?」
「……はい」
「ふむ。じゃあサバキを言い渡す。お前ら全員国外追放だ」
「なっ!?」
先頭にいたクロードが声を上げる。
「それはあまりに酷すぎる! 我らはエルドニア国内に領地こそあれど全て我らの裁量で政を行ってきた! そもそも悪いのはハロルドであり、大臣に任命した貴様ではないか!」
「あ? 任命したのは先代国王だ。俺は知らねぇよ」
「使ってきたのは事実だろう! 今回の件はお互いに責がある!」
「だとしても反乱軍に参加したのはお前らの意思だろう。この国の法じゃ国家転覆罪は死罪なんだわ。そこを国外追放で許してやるって言ってんだ、優しいだろうが」
エルフ達もよく調べずに反乱軍に参加したのだからヴェルデは言い分は正しい。途中で抜けたとはいえエスタの町を占拠していたのは事実だ。
クロードは膝をついて頭を下げる。
「頼む! 我らはどうなっても良い。だが他のエルフは許してくれっ! 悪いのは我らだけだ!」
「ふむ。オルス、どう思う?」
黙っていたオルスが口を開いた。
「確かに彼らはハロルドに騙された所はありますが、国に逆らおうとした事実は変わりません。もし償う気があるのであれば、無給にて我が王国で働いてもらえば良いかと」
「だとよ。お前らが王国軍に参加し、生涯タダ働きすんなら他のエルフ共は許してやる。拒むなら全員国外追放だ」
「我々に奴隷になれというのか……」
クロードは少し考え共にいたエルフ達に言った。
「お前ら、すまんが全てのエルフのためだ。俺と共にここで奴隷として働こう」
「クロード様……。ヴェルデ王! せめてクロード様だけでも許してはもらえないか!」
「許せるはずがねぇだろ。ここで甘い顔したら舐められちまう。反乱は重罪だ」
「くっ!」
力なく膝をつくエルフ達に向けヴェルデが告げる。
「お前らの勤務地はエルフの森とする」
「「「え?」」」
「聞こえなかったか? お前らには今後二度とこの様な事が起きぬよう、王国軍としてエルフの森に駐留してもらうって言ったんだ。不服か?」
クロードが頭を下げ、感謝の言葉を口にする。
「……この度は誠に申し訳なかった。以後この様な事は我の名にかけて起こさないと誓おう」
「ああ、そうしてくれ。誰か一人で良いから定期的に報告を寄越してくれ。話は以上だ、下がって良いぞ」
エルフ達はもう一度深く頭を下げ、騎士隊長と共に謁見の間を出ていった。
そして全てが解決したかに見えたが、ヴェルデはレイを解放しなかった。
「ヴェルデ王、僕はいつまで城にいたら良いのですか?」
「あん? そうだな、そろそろお前のスキルについて俺らに話してくんねぇかな?」
「それは……」
レイはスキルの事になると口をつむぐ。ヴェルデはレイのスキルが異常なものであると察していた。
「お前の箱庭だっけ? 戦闘系スキルでもないのに空を飛んだり単独で町を一つ落としたりよぉ、もう看過できねぇんだわ。正直に話すってんなら解放してやるし、秘密は漏らさないと約束してやる」
レイは更に一つ条件を付け加える。
「僕を戦に利用しないも加えてもらえます? 誰かに利用されるのは嫌なので。僕は僕が正しいと信じた道を貫きたいのです」
「ああ、約束しよう。お前の力を私利私欲で利用しない。これで良いか?」
「……はぁ、仕方ないですね。では──」
レイは自分の隣に扉を出した。
「あ? 扉?? それどっから出したよ?」
「これが僕のスキル箱庭の入り口です。危険はないのでどうぞ中へ。オルス様もどうぞ」
「これは初めて見るスキルだ。実に興味深い」
レイは扉を開きヴェルデとオルスを箱庭の中に招いた。二人は中に入り目の前に広がる広大な土地と町並みを見て唖然としていた。
「な、なんだこりゃ!? 町があるぞ!? いったいどこの町だ!?」
「転移スキル……ではないな。景色は外に酷似しているが何かがおかしい気がする。箱庭……そ、そうか! これはレイ殿のスキルが生み出した世界か!」
「はい。これが僕のスキル箱庭の世界です。そして僕はこの世界に住む全ての住民のスキルを使えるようになるのです」
「「な、なにぃっ!?」」
それがどれ程途轍もない事か二人は理解していた。
「人が増えれば増えるだけ無限に強くなるってのか!? 規格外すぎる!」
「これは……不遇スキルなんてとんでもないっ! まさに神の如き御業ではないか! し、食糧はどうなっているのだ?」
「畑の作物は一日に一度回収できます。その他魔獣の肉、素材、鉱石など資材が尽きる事はありません」
「な、なぜ!? 世界の法則が通用しないのか!?」
「なぜそうなっているかはわかりませんが、この世界はそういう世界だと割り切ってます」
そこでヴェルデがドワーフの姿を目にした。
「おいおい、ドワーフがいるじゃねぇか!」
「はい。それと、ここにいる五千人弱の住民はエスタで救出した人達です」
そう告げるとオルスはどこか納得がいった表情で腕組みをしながら言った。
「なるほど。このスキルがあればレイ殿さえ町の中に潜入できれば闇に紛れ住民を脱出させる事が可能になる。どうやって救出したか騎士隊長も疑問に思っていたがこれで合点がいった」
「かぁ~。これじゃおいそれと口にできねぇって理由がわかるわ。こりゃそうそう口にしていいスキルじゃねぇ。こんなもんいくらでも戦に利用できちまうじゃねぇか」
「そうですね。それと中で犯罪をはたらいた瞬間外に強制排出され二度と中には戻れなくなります」
「住むにも条件があるのか。ま、そうだな。さすがにそこまでルール無用じゃなんでもできちまいもんなぁ」
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「レイ、約束は守る。俺らはこの事を墓場まで持っていく。だがよ、もしフォールガーデンがエルドニアに侵攻してきたらお前の力を借りたい」
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「できたら王都にいて欲しいな。すぐ動けるようにな」
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「わかりました。しばらくはエルドニアを見て回るつもりでしたから構いませんよ。戦に巻き込まれる民がいたらここに招きます。できたら戦にならない事を祈りますが」
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