スキル『箱庭』を手にした男ののんびり救世冒険譚〜ハズレスキル? とんでもないアタリスキルでした〜

夜夢

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第39話 エスタ強襲

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 夜空を舞い最速でエスタ上空に到達したレイは挨拶代わりに町長の屋敷へと上空から闇魔法を放った。

「まず司令塔を潰す。反乱なんてバカな真似をした奴らに慈悲はないっ! くらえ……闇魔法【漆黒の槍】」

 レイの十指全てから連続で黒い槍が放たれていく。その範囲は町長の屋敷はおろか都市全体に広がり、巡回していた者や戦に向け物資を確認していた者など、ありとあらゆる者が槍に漆黒の貫かれ動かぬ屍に変わった。

「て、敵襲!! 敵襲だぁぁぁぁっ!」
「ち、ちくしょう! ハロルド様とドーレ様が殺られちまった!」
「「「な、なにぃぃぃっ!?」」」

 異変を察知したテロリスト達が各自建物から姿を見せ町長の屋敷に向かっていた。そこにハロルド達の屍を担いだ側近が慌てながら姿を見せる。

「額を一撃だと!?」
「ドーレ様は全身穴だらけだな」
「くそっ! 戦は明日だぞ!? おいっ! どれだけ生き残った!!」

 大臣と副大臣が死亡したため、反乱軍一番の大所帯を率いる赤い牙の頭目ドレイクが状況の確認を促す。そこに黒い鴉のネストが走ってきた。

「物資はダメになっちまってる。あんたらの団員も軒並み地面に転がってらぁ」
「な、なんだと!? クソがぁぁぁっ!」

 するとそこに全員無傷のまま姿を現した者がいた。全員青いローブをまとった魔導師集団、蒼炎の面々だ。

「グレイル……てめぇ、なんで全員無傷なんだ!」
「この襲撃は魔法によるものだ。いち早く魔力の高まりを察知した我々は魔法壁を張ったのだよ。それと、無傷なのは我々だけではないぞ」
「あ?」

 怒りに震えるドレイクの前にエルフの精鋭部隊、緑の守護者クロード達が姿を見せた。

「やはり魔法攻撃か。精霊が騒がしかったのでな。今どういう状況だ」
「見てわからねぇか。ほぼ全壊だよ!」
「ふむ。まさか国が戦前に軍を動かしたか?」
「違うみたいよ」

 四人の前に白い蛇頭目ベネティアが姿を見せる。

「ベネティアか。確かお前んとこの連中は王都に潜入してたな。なにやってやがる! スパイもまともにできねぇのか!!」
「だから国はまだ動いてないのよ! 動きがあれば皆帰ってくる手筈になってるもの! これは国の仕業じゃないわっ!」
「じゃあ誰がこんな真似すんだよ! フォールガーデンか? それこそ有り得ねぇだろうが!」

 そこで月明かりが差し込みグレイルが空を見上げた。

「いたぞ、上だ。どうやらあいつが犯人らしい」
「あ? なっ!? ありゃ飛行魔法か!?」
「お? あいつは……レイじゃねぇか!」
「なにっ!? 黒い鴉を潰した野郎か! てめぇ! 降りて来やがれ!!」

 レイは集まった五人と僅かに生き残った反乱軍の近くにゆっくりと降りていった。

「良い夜ですね皆さん。これに懲りたら戦なんて止めませんか?」
「あぁっ!? 舐めてんのかテメェ……。不意打ちたぁずいぶん卑怯な真似しやがるじゃねぇか」
「卑怯? 悪党相手に正面から挑むわけないじゃないか。こっちは僕一人なんでね」
「よう、レイ」

 集団の中からネストが前に出てきた。

「やっぱり来やがったかよ。折れた剣はどうした? ずいぶん立派なもん腰に下げてんじゃねぇの」
「ネストか。君こそ僕に折られた剣はどうしたのさ。手ぶらじゃないか」
「ねぇよ。折れたままだ」
「おいっ! なに仲良しこよししてやがる! ダチかてめぇらはよ!」

 そこでネストがドレイクに言った。

「仲良し? ははははっ、誰がだよ。俺とあいつは敵同士だ。ふざけた事言ってんじゃねぇよ」
「ならさっさと殺れ! てめぇにリベンジする機会をくれてやるからよ」
「そりゃどうも」

 ネストがレイの前に立つ。

「つーわけだ。再戦といこうやレイ」
「武器もないのに? それは流石に僕を侮り過ぎじゃない?」
「なぁに、武器ならこいつがあるからよ」

 ネストは魔力を込めて構えた。

「実は俺あんま剣が得意じゃなくてよ。本気で闘る時はこっちなんだわ」
「拳闘士か」
「いいや、魔拳闘士だよっ!!」
「っ!!」

 ネストが離れた位置からジャブを離つ。すると拳から魔力の塊が飛び、レイの頬を切り裂き後ろにあった建物を破壊した。

「当てないでやったぜ。感謝しろよな?」
「今のは……」
「魔法拳さ。遠くからでも攻撃できるし、近くならこのままぶん殴る。この技に隙はねぇよ」
「ふぅん。それが君の本気か」

 レイは腰を落とし構えをとる。

「ネスト。この中で一番強いのは君?」
「はぁ? さあ、どうだろうな。他の奴らなんか知らねぇよ。知りたきゃ俺を倒してから戦ってみな」
「じゃあそうするよ。フッ──」
「なっ!?」

 レイの姿が一瞬消え、次の瞬間ネストの前に現れた。そしてレイはそのまま鞘から刀を走らせ下から斬り上げた。

「なん──だ、今のは……っ! がはっ!」
「僕の新しい相棒の力だよ。この刀はただの刀じゃない。僕の能力を飛躍的に増大させるのさ」
「はっ──、ズリぃ……なぁ……」
「ネスト!!」

 拳から魔力が消え、ネストは血溜まりの中へと崩れ落ちた。

「こ、この野郎……! よくもネストをっ!! グレイル、魔法だ! 魔法で殺れ! クロード! てめぇも弓を構えろ! 飾りかそいつはっ!」

 ネストを近接戦闘で失ったドレイクは遠距離から攻撃するように命じた。だがそこでクロードがレイに問い掛ける。

「待て。一つ確認したい事がある」
「あ? 良いからやれやっ!」

 クロードはドレイクの言葉を無視し、レイに問い掛けた。

「お前は国王の部下か?」
「違いますよ。けど面識はあります。あなた方の話も陛下から聞いてますよ」
「なら尋ねるぞ。ヴェルデ王は我らエルフの森を破壊しようとしている話を聞いた事はないか?」
「え? 森を破壊? ヴェルデ王が?」

 そこでレイは脳筋ヴェルデの姿を思い浮かべる。

「いや、ないんじゃないかな。あの人はただの喧嘩馬鹿だよ。エルフの森を破壊する意味がない」
「そうか。なら我らはハロルドに騙されたというわけか」
「お、おい!!」

 クロードは部下を従え門の方に歩いていった。

「契約違反だ。我々エルフは国が森を破壊するというから助力したまで。それが嘘だったのだ、もはや戦う意味はない。そこの者、後日王城に遣いをやる。正式な謝罪と賠償はその時に。行くぞ」
「「「「はっ!」」」」

 驚くべき事にエルフ達は身体に風を纏わせ空中へと浮かび上がった。これは魔法による飛行であり、レイのスキルによる飛行と異なるものである。

 空へと消えていくエルフ達を呆然と見上げていたドレイクはふと我に返り、グレイルに命じた。

「グレイルゥゥゥゥッ!! てめぇんとこロクに働きもしねぇんだからこんな時くれぇ働けや!」
「煩い人だ。言われなくともやりますとも。魔法使い相手に我々が負けるはずないでしょう」
「は? いや、お前よ。あいつネストを刀で斬っただろ。剣士じゃねぇか?」
「ははは、バカな。あの無数に降り注ぐ闇魔法を使った者が剣士なわけないでしょう。例外はありますがスキルは基本一人に一つのみ! まさか彼が例外だとでも?」

 なぜか二人の言い争いが始まった。

「現に一人しかいねぇじゃねぇか!」
「外壁に仲間を待機させているのでは? 暇ならあなたが探しに行ったらどうですか?」
「ふさげんなよオイッ! 俺が消えたら誰が指揮すんだ!」
「はははは。ここにはもう我々しかいないではないか。我の部下に貴方の命令を聞けと? それこそふざけないでいただきたい!」
「なんだとぉぉぉっ!」
「なんですかっ!」

 二人がいがみ合っている隙に白旗を挙げたベネティアがレイに土下座していた。

「あ、あの。スパイとか全員知ってるの私だけなの。投降するからどうか恩赦をっ!」
「はぁ。じゃあ自分で自分を縛ってそこらに座っててもらえる? あれ長引きそうだし」
「あ、はいはい。もちろんですっ」

 ベネティアは自らを縄でキツく縛り上げ、安全な場所で待機したのだった。
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