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第二章 恋愛と友愛
第五話
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さっきの自分褒めてのかわいいアピールは撤回する。
巴がワゴンに詰められたクタクタのライオンのぬいぐるみたちの頭をひとつずつ指先でちょんちょんと撫でながらどの顔が好みか選んでいる。
しかも顔をかしげて覗き込みながらひとつひとつ顔を見ているんだ。そして、どのあたりが巴のお眼鏡にかなったのかは俺には分からないのだが、その中のひとつを持ち上げて胸の前でそれを抱きしめた。
鼻血が……出そうだ。
あざとさが1ミリもないって、巴は天使ですか?
「それ買う?」
「え?」
「気に入ったんだろ?」
「あ、ううん、見てただけ」
あんなに吟味していたのにあっさりとまたぬいぐるみの山にそれを戻した。
「んじゃぁ、俺が買う」
俺はさっきのを手に取った。巴はじーっと俺の手で鷲掴みされてるぬいぐるみを見ている。巴が選びに選んだライオンだからな、俺が絶対に持って帰るんだ。
「なぁ、腹減ったし、なんか食おう?」
ぬいぐるみがひとつ乗ったカートを廊下の端に止め、巴を連れてレストランへ入る。巴はカウンターの上に設置されているメニューを見上げていた。なんだかその横顔は子供みたいにわくわくしていて、こういうところに来たことがないんだなと改めて胸が苦しくなった。
「俺のおすすめはミートボール」
「うん、じゃぁそれがいい」
「パンもあるよ、あとドリンクは……」
「コーヒーある?」
「もちろん」
ふと気がつく。巴はコーヒーが好きなのか。
しかも自分からそれを発したんだ。もうニヤつきは止まらない。二人分のトレーを持ち空いている席に座った。
巴は手を合わせると、早速ミートボールを一口で放り込みモグモグとリスのように食べている。そしてなんとなしに視線をカウンターのほうへ向けたと思ったら驚いた顔をした。
「な、がまさ! ソフトクリームが50円だって!」
「あはは!」
俺は笑いを堪えるのが必死だった。巴が負の感情じゃないもので高揚していることがとても嬉しかった。
「帰りに買ってやる」
そういうと巴は「買ってやる」とわざと低い声を出して俺を真似た。お互い目が合ってまた笑いあった。
「また来ような」
「またって、まだ来たばっかじゃん」
巴が笑った。
「次は巴が行きたいところ、決めておいて」
巴は手を止めて少し考えている。
「行きたいところ? どこでもいいの?」
「いいよ」
俺としてはベタに遊園地とか映画館とか行きたいんだけどなぁ。巴に耳のついてるカチューシャとか帽子とか被せたい。(そんなこと自分は絶対してこなかったくせに)。けどあまりにデート過ぎるから警戒されるかなぁ…今日みたいに普通に買い物デートも楽しいんだけどなぁ。
控えめな妄想にすり替えていたころ、巴が意を決したように俺を見た。
「遊園地!!」
「へ?」
ど真ん中に命中して声が裏返った。それを見て巴はすぐに後悔したように焦って「それは無理だね、ごめん」と訂正した。
「いや! 無理じゃない! 無理じゃないよ? 全然無理じゃない! むしろ俺が行きたいところナンバーワンだから!」
ハァハァ……。
巴は目を丸くしている。
「じゃ、ゆ……遊園地に……」
「行こう!!」
その後、無事に本棚を選ぶことが出来たが、もちろん運ぶのが大変だから俺がその場でネット注文した。数日後には自宅に届くだろう。
それならネットで探せばいいだろうが、直接物を見たほうが良いに決まってるし、なによりこうやって巴とふたりで買い物デートがしたかったから俺の目的は果たせた。
巴はソフトクリームを二個食べて、
俺はあのぬいぐるみを抱いて満足気に帰路についた。
巴がワゴンに詰められたクタクタのライオンのぬいぐるみたちの頭をひとつずつ指先でちょんちょんと撫でながらどの顔が好みか選んでいる。
しかも顔をかしげて覗き込みながらひとつひとつ顔を見ているんだ。そして、どのあたりが巴のお眼鏡にかなったのかは俺には分からないのだが、その中のひとつを持ち上げて胸の前でそれを抱きしめた。
鼻血が……出そうだ。
あざとさが1ミリもないって、巴は天使ですか?
「それ買う?」
「え?」
「気に入ったんだろ?」
「あ、ううん、見てただけ」
あんなに吟味していたのにあっさりとまたぬいぐるみの山にそれを戻した。
「んじゃぁ、俺が買う」
俺はさっきのを手に取った。巴はじーっと俺の手で鷲掴みされてるぬいぐるみを見ている。巴が選びに選んだライオンだからな、俺が絶対に持って帰るんだ。
「なぁ、腹減ったし、なんか食おう?」
ぬいぐるみがひとつ乗ったカートを廊下の端に止め、巴を連れてレストランへ入る。巴はカウンターの上に設置されているメニューを見上げていた。なんだかその横顔は子供みたいにわくわくしていて、こういうところに来たことがないんだなと改めて胸が苦しくなった。
「俺のおすすめはミートボール」
「うん、じゃぁそれがいい」
「パンもあるよ、あとドリンクは……」
「コーヒーある?」
「もちろん」
ふと気がつく。巴はコーヒーが好きなのか。
しかも自分からそれを発したんだ。もうニヤつきは止まらない。二人分のトレーを持ち空いている席に座った。
巴は手を合わせると、早速ミートボールを一口で放り込みモグモグとリスのように食べている。そしてなんとなしに視線をカウンターのほうへ向けたと思ったら驚いた顔をした。
「な、がまさ! ソフトクリームが50円だって!」
「あはは!」
俺は笑いを堪えるのが必死だった。巴が負の感情じゃないもので高揚していることがとても嬉しかった。
「帰りに買ってやる」
そういうと巴は「買ってやる」とわざと低い声を出して俺を真似た。お互い目が合ってまた笑いあった。
「また来ような」
「またって、まだ来たばっかじゃん」
巴が笑った。
「次は巴が行きたいところ、決めておいて」
巴は手を止めて少し考えている。
「行きたいところ? どこでもいいの?」
「いいよ」
俺としてはベタに遊園地とか映画館とか行きたいんだけどなぁ。巴に耳のついてるカチューシャとか帽子とか被せたい。(そんなこと自分は絶対してこなかったくせに)。けどあまりにデート過ぎるから警戒されるかなぁ…今日みたいに普通に買い物デートも楽しいんだけどなぁ。
控えめな妄想にすり替えていたころ、巴が意を決したように俺を見た。
「遊園地!!」
「へ?」
ど真ん中に命中して声が裏返った。それを見て巴はすぐに後悔したように焦って「それは無理だね、ごめん」と訂正した。
「いや! 無理じゃない! 無理じゃないよ? 全然無理じゃない! むしろ俺が行きたいところナンバーワンだから!」
ハァハァ……。
巴は目を丸くしている。
「じゃ、ゆ……遊園地に……」
「行こう!!」
その後、無事に本棚を選ぶことが出来たが、もちろん運ぶのが大変だから俺がその場でネット注文した。数日後には自宅に届くだろう。
それならネットで探せばいいだろうが、直接物を見たほうが良いに決まってるし、なによりこうやって巴とふたりで買い物デートがしたかったから俺の目的は果たせた。
巴はソフトクリームを二個食べて、
俺はあのぬいぐるみを抱いて満足気に帰路についた。
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