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休息
第六十六話
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須賀の腕がこちらに伸ばされ俺は誘われるままにその手に自分の手を乗せると、あっという間に須賀の膝の上に乗せられた。
そして器用にチョーカーを外してそれをデスクに置く。俺は急に心許なくなり首筋に手を当てた。
「沖縄にいる間は私がいるから」
「え……?」
それはどういう意味を持つのかと考えていると、ちゅっと首筋にキスをされた。驚いて須賀を見ると俺の唇を熱っぽい目が見つめている。
顔が近づいてそのまままた口付けられた。後ろ髪に指が差し込まれもっと抱き寄せられる。上唇を喰まれてうっすらと唇を開くとすぐに須賀の熱い舌が侵入し混じり合う。
「……っん……っ」
「ゆき……ぃ……」
須賀の熱い手が俺の背中を這い回り、唇が離れていくとキツく抱きしめ俺の首筋に顔を埋め切ないような須賀の声が聞こえた。
久しぶりのせいか須賀のビターなαフェロモンがむわっと匂って目眩がする。
「リモートで済ませられるようにして雪の仕事に付いてきたはいいが、これは仕事になりそうにない……」
「へ……?」
そんな弱気なかわいらしいことを言うとは思わず、俺が変な声を出してしまうと、俺を抱きしめていた須賀が顔を上げた。眉毛がすっかり下がり、焦りのような表情を浮かべていたんだ。
「離れていると会いたくてたまらなくて、いざ会えるともう離したくなくて触れるのも躊躇うよ……」
ははは……と切なげに乾いた微笑を俺に見せた。
「須賀さん……」
「君をきれいに撮ってもらいたいからキスマークもお預けだ」
そう言って指先で俺の首筋をすっと撫でた。
──あぁ……、どうしよう、すっごく腹が疼く。
「雪、酔ったのか?」
いつの間にか下腹部に手を当てていたらしい、須賀が心配そうに俺を見た。首を横に振るが須賀は気遣わしげに俺を胸に抱きしめた。
「すまんな、休むか?」
「ち、違います、こ、れは……」
須賀の体が離れて俺を見た。
「また、胃が痛むのか?」
「あ……、はい、そんな感じです」
──下腹部が疼くだなんて言えない……。
「撮影は出来るか?」
「請け負ったからにはやります」
「無理はするなよ? 体調が悪いんなら仕方ないんだから」
「いえ、大丈夫です」
須賀はまだ心配そうな顔はしているが、そうかと指先で掬った俺の髪を見つめる。
「俺……、俺なんかがモデルになんてなれないの分かってます、須賀さんからの依頼はなんていうか、あの時は契約だから仕方ないって感じでしたが……」
「あぁ……私が強引にさせたからな、でも結果は大成功だ」
「成功かは……俺には正直分からないんですが、でもその後で波野さんからの依頼があったとき、もちろんまたモデルなんてとは思いましたけど、……今でも思ってますけど……。でも須賀さんとか関係なく俺にまた依頼してくれたことが嬉しくて、……なんて言ったら良いんだろう……」
須賀をチラリと見ると穏やかな表情で俺の話に耳を傾けてくれていた。
「俺、嬉しいんだなって」
「あぁ」
「だから、……応えたいって思う……」
「うん」
須賀は優しく頷いて俺の背中をさすってくれた。
須賀は俺を隣に置いて仕事を再開した。俺も須賀からもらったラップトップを膝に置いて休み明けに提出するレポートをまとめ始める。
視線を感じて見つめ返すと投げキスをしてくれたり、途中で入ってくる佐伯さんに驚かれたりしながら、目的地まで二時間、そう過ごした。
そして器用にチョーカーを外してそれをデスクに置く。俺は急に心許なくなり首筋に手を当てた。
「沖縄にいる間は私がいるから」
「え……?」
それはどういう意味を持つのかと考えていると、ちゅっと首筋にキスをされた。驚いて須賀を見ると俺の唇を熱っぽい目が見つめている。
顔が近づいてそのまままた口付けられた。後ろ髪に指が差し込まれもっと抱き寄せられる。上唇を喰まれてうっすらと唇を開くとすぐに須賀の熱い舌が侵入し混じり合う。
「……っん……っ」
「ゆき……ぃ……」
須賀の熱い手が俺の背中を這い回り、唇が離れていくとキツく抱きしめ俺の首筋に顔を埋め切ないような須賀の声が聞こえた。
久しぶりのせいか須賀のビターなαフェロモンがむわっと匂って目眩がする。
「リモートで済ませられるようにして雪の仕事に付いてきたはいいが、これは仕事になりそうにない……」
「へ……?」
そんな弱気なかわいらしいことを言うとは思わず、俺が変な声を出してしまうと、俺を抱きしめていた須賀が顔を上げた。眉毛がすっかり下がり、焦りのような表情を浮かべていたんだ。
「離れていると会いたくてたまらなくて、いざ会えるともう離したくなくて触れるのも躊躇うよ……」
ははは……と切なげに乾いた微笑を俺に見せた。
「須賀さん……」
「君をきれいに撮ってもらいたいからキスマークもお預けだ」
そう言って指先で俺の首筋をすっと撫でた。
──あぁ……、どうしよう、すっごく腹が疼く。
「雪、酔ったのか?」
いつの間にか下腹部に手を当てていたらしい、須賀が心配そうに俺を見た。首を横に振るが須賀は気遣わしげに俺を胸に抱きしめた。
「すまんな、休むか?」
「ち、違います、こ、れは……」
須賀の体が離れて俺を見た。
「また、胃が痛むのか?」
「あ……、はい、そんな感じです」
──下腹部が疼くだなんて言えない……。
「撮影は出来るか?」
「請け負ったからにはやります」
「無理はするなよ? 体調が悪いんなら仕方ないんだから」
「いえ、大丈夫です」
須賀はまだ心配そうな顔はしているが、そうかと指先で掬った俺の髪を見つめる。
「俺……、俺なんかがモデルになんてなれないの分かってます、須賀さんからの依頼はなんていうか、あの時は契約だから仕方ないって感じでしたが……」
「あぁ……私が強引にさせたからな、でも結果は大成功だ」
「成功かは……俺には正直分からないんですが、でもその後で波野さんからの依頼があったとき、もちろんまたモデルなんてとは思いましたけど、……今でも思ってますけど……。でも須賀さんとか関係なく俺にまた依頼してくれたことが嬉しくて、……なんて言ったら良いんだろう……」
須賀をチラリと見ると穏やかな表情で俺の話に耳を傾けてくれていた。
「俺、嬉しいんだなって」
「あぁ」
「だから、……応えたいって思う……」
「うん」
須賀は優しく頷いて俺の背中をさすってくれた。
須賀は俺を隣に置いて仕事を再開した。俺も須賀からもらったラップトップを膝に置いて休み明けに提出するレポートをまとめ始める。
視線を感じて見つめ返すと投げキスをしてくれたり、途中で入ってくる佐伯さんに驚かれたりしながら、目的地まで二時間、そう過ごした。
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初めて挑戦しましたオメガバース作品です。この世界にもαとΩが居たらどんな世界なのだろうと思って書きはじめました。『Maybe Love』の九条吾妻くんと、そのお父さんが友情出演致しました。須賀の幼馴染の堤の恋の話最後の恋煩いもあります。合わせてお楽しみください。
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