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柔らかな日々
第五十三話
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「とても似合ってる」
「へへ……」
湯上がりにレモン色のニットを着てきた雪がキッチンへやってきた。鍋の中をワクワクした目でのぞき込んでくる。
「美味しそう……。俺、魚大好きです」
「雪は肉より魚系が好きだろう?」
小鍋にはトマトソース。あとはパスタを茹でて、ソテーした鮪をその上に添えて完成の予定だ。コンロはひとつだから順番が大切だ。
雪は嬉しそうに頷いた。
しかし料理の香りより雪の匂いの方が芳しい。思わずスンと鼻から吸い込んでしまうと、脳に幸せホルモンが分泌される。
私が近寄ったからか雪は驚いたように一歩後ずさりその肘がフライパンの柄に当たる。
私がそれに手を伸ばし間一髪事故は防いだものの、雪を壁に押し付けてしまい思わぬところで体が密着してしまった。
雪は戸惑いながら顔を横に背けたことで雪の首筋が私の目の前に顕になる。Vネックの首元から鎖骨をチラつかせて私の瞳孔がひゅっと大きくなる。
そして、うっすらと首元に残るチョーカーの痕を指先で撫でた。
この部屋に引っ越してきた日に雪に贈ったチョーカー。ひとり暮らしをする雪から出された提案、というより条件に近い。
雪は私の気持ちを分からないようでわかっている。チョーカーをしないことで私を不安にさせていることを。だからそんな提案をしてきたんだ。そうすれば許すしかない。けれど首筋に口付けたくとも阻まれてしまうのは不本意だった。
風呂上がりにチョーカーを外して私の目の前にいる雪。
──ふたりだから、私の前だから……?
そう自分に都合のいいような考えが浮かんでしまう。
「雪、チョーカーの痕がついてる、肌に合わないか?」
そう問われ自身の首元に手をやる雪は少し考えて、汗かいたからだと答えた。
「痒いのか?」
「少し」
「素材が合わないのかもしれないな」
「だいたいこういうものですよ?……ずっとしてなかったから慣れないだけですよ、慣れれば……ぁっ!」
そうつらつらと話を続ける雪を無視して私はその痕に口付けた。雪は私の胸を押して抵抗を見せる。表情は見えないが耳が真っ赤になっている。
雪をそのまま抱き上げダイニングテーブルの上に腰掛けさせると、その脚の間に自身の体を滑り込ませた。
雪の視線が私と近くになると戸惑い、睫毛を揺らしてチラリと視線を合わせてくる雪。しばらく見つめ合えば雪が私の名を呼ぼうとその薄い唇が開く、それに私は唇を重ねた。
雪は反射なのか目を閉じ私を受け入れる。雪の舌を見つけて絡めると吐息と共に甘い蜜が溢れた。それを舌と一緒に吸い上げゴクリと飲み込んだ。
「甘い……」
唇を離すと、肩で息をする雪がゆっくりと目を開けた。瞬きをして私と視線を合わせようとしているがその目はとろんとしていて、頬も高揚しピンクに染まり、風呂上がりより蒸気している。
ぷっくりと湿った唇を見つめてまたそこに吸い付けばまた目を閉じる。雪は受け入れてくれた。
私が雪の首に手をかけ、親指で顎を支え顔を上げさせると舌を深く捩じ込んだ。
「ん───……ッ」
キスに慣れない雪が私を受け止めようと追いかけてくる。そんな雪の上顎を舌でなぞるとビクンッと身体が跳ねた。
「んふ……、ふぁ……っ」
鼻から小さくくぐもった息が漏れる。息苦しさを逃がすものとは違う、快感を拾っている甘い声だ。もっとその声が聞きたい。私は唇を離し頬、顎から首筋へとキスを移動してゆく。
そしてニットの衿から覗く鎖骨に口付けるとピクリと足が僅かに跳ねたのが腰に伝わってきた。
雪を見下ろすと鎖骨に手を当てて首を窄めて身体を震わせている
「す、……すがさ……ん」
首を隠すように顔を傾げ戸惑いながら目を潤ませている。
──あぁ、駄目だ。
父親にされていたことは知っているのに。雪の白い肌についていた傷が蘇って思わず雪の胸元を見た。レモン色のニットの下。もう傷は癒えたことは知っている、痕も残っていないと滝から報告は受けていた。
雪に嫌がることはしてはいけない。
けれど……マーキングをしたい。
雪に触れたい。
私だけのものにしたい。
私のαが独占したがってる。
それが雪を困らせて、そんな顔をさせているんだが……。
しばらく固まっていたのか雪がおそるおそる私の腕あたりを掴んだ。はっとしてその手を見ると強く握ったり緩めたりを繰り返している。その腕を辿って雪の顔を見ると雪は心配そうに私を見上げていた。
「すまない、怖い、よな」
そういうと間髪入れず雪が首を横に振った。ぶんぶんと髪が乱れるほどに、子どもっぽい仕草に私は思わず笑ってしまった。
「じゃぁ……気持ちいいか?」
そう聞くと、ぱあっと耳まで赤く染めた。
「続けてほしい?」
「や、……です」
「……そうか」
「は、ずかし……から……、──あっ?!」
俯く雪の腰を掴んで自身に引き寄せた。芯を持ちはじめた自身を雪の腰に当て付けてみる。するとすぐに雪も同じだと分かった。
「あ……っ、ご、ごめ……なさい」
「何故謝る、私はうれしいよ」
もうひとつ引き寄せてお互いの固いものを磨り合わせてみると、雪は上体だけを出来るだけ引いて自分の顔を手で覆い隠してしまった。
「む、無理! はずかしい!」
大きく開かされた足をバタつかせて逃れようとする。その太ももを外側から手で掴み逃さない。すると雪の身体がテーブルに倒れて行く。片肘をついてそれをどうにか止めているが、私がまた腰を押し付け雪に覆いかぶさる。
「本当にやめてほしい?」
「や……っ、……こんなっ」
「本当に嫌なら私もここで止める」
すっかりテーブルに背中を預けている雪が私の目をのぞき込んでいる。真意を確かめているんだろうか。
料理を作る口実で、ひとり暮らしの雪の部屋にやってきて、興奮させたものを擦り付けて大人がなにをやってるんだ。
我慢できるだろ?
我慢しなきゃいけないんだろ。
αよ、それを潜めて雪を愛するんじゃなかったのか。
この先を雪に委ねている私も相当いくじがない。
雪が私を怖がっているなら、やめよう。
でも少しでも私を求めるなら、そこに付け入ってαフェロモンを纏わせたい。誰も近づけないように。
「ぁ────……ッ」
もう駄目だった。私はその首筋を食んでいた。
「へへ……」
湯上がりにレモン色のニットを着てきた雪がキッチンへやってきた。鍋の中をワクワクした目でのぞき込んでくる。
「美味しそう……。俺、魚大好きです」
「雪は肉より魚系が好きだろう?」
小鍋にはトマトソース。あとはパスタを茹でて、ソテーした鮪をその上に添えて完成の予定だ。コンロはひとつだから順番が大切だ。
雪は嬉しそうに頷いた。
しかし料理の香りより雪の匂いの方が芳しい。思わずスンと鼻から吸い込んでしまうと、脳に幸せホルモンが分泌される。
私が近寄ったからか雪は驚いたように一歩後ずさりその肘がフライパンの柄に当たる。
私がそれに手を伸ばし間一髪事故は防いだものの、雪を壁に押し付けてしまい思わぬところで体が密着してしまった。
雪は戸惑いながら顔を横に背けたことで雪の首筋が私の目の前に顕になる。Vネックの首元から鎖骨をチラつかせて私の瞳孔がひゅっと大きくなる。
そして、うっすらと首元に残るチョーカーの痕を指先で撫でた。
この部屋に引っ越してきた日に雪に贈ったチョーカー。ひとり暮らしをする雪から出された提案、というより条件に近い。
雪は私の気持ちを分からないようでわかっている。チョーカーをしないことで私を不安にさせていることを。だからそんな提案をしてきたんだ。そうすれば許すしかない。けれど首筋に口付けたくとも阻まれてしまうのは不本意だった。
風呂上がりにチョーカーを外して私の目の前にいる雪。
──ふたりだから、私の前だから……?
そう自分に都合のいいような考えが浮かんでしまう。
「雪、チョーカーの痕がついてる、肌に合わないか?」
そう問われ自身の首元に手をやる雪は少し考えて、汗かいたからだと答えた。
「痒いのか?」
「少し」
「素材が合わないのかもしれないな」
「だいたいこういうものですよ?……ずっとしてなかったから慣れないだけですよ、慣れれば……ぁっ!」
そうつらつらと話を続ける雪を無視して私はその痕に口付けた。雪は私の胸を押して抵抗を見せる。表情は見えないが耳が真っ赤になっている。
雪をそのまま抱き上げダイニングテーブルの上に腰掛けさせると、その脚の間に自身の体を滑り込ませた。
雪の視線が私と近くになると戸惑い、睫毛を揺らしてチラリと視線を合わせてくる雪。しばらく見つめ合えば雪が私の名を呼ぼうとその薄い唇が開く、それに私は唇を重ねた。
雪は反射なのか目を閉じ私を受け入れる。雪の舌を見つけて絡めると吐息と共に甘い蜜が溢れた。それを舌と一緒に吸い上げゴクリと飲み込んだ。
「甘い……」
唇を離すと、肩で息をする雪がゆっくりと目を開けた。瞬きをして私と視線を合わせようとしているがその目はとろんとしていて、頬も高揚しピンクに染まり、風呂上がりより蒸気している。
ぷっくりと湿った唇を見つめてまたそこに吸い付けばまた目を閉じる。雪は受け入れてくれた。
私が雪の首に手をかけ、親指で顎を支え顔を上げさせると舌を深く捩じ込んだ。
「ん───……ッ」
キスに慣れない雪が私を受け止めようと追いかけてくる。そんな雪の上顎を舌でなぞるとビクンッと身体が跳ねた。
「んふ……、ふぁ……っ」
鼻から小さくくぐもった息が漏れる。息苦しさを逃がすものとは違う、快感を拾っている甘い声だ。もっとその声が聞きたい。私は唇を離し頬、顎から首筋へとキスを移動してゆく。
そしてニットの衿から覗く鎖骨に口付けるとピクリと足が僅かに跳ねたのが腰に伝わってきた。
雪を見下ろすと鎖骨に手を当てて首を窄めて身体を震わせている
「す、……すがさ……ん」
首を隠すように顔を傾げ戸惑いながら目を潤ませている。
──あぁ、駄目だ。
父親にされていたことは知っているのに。雪の白い肌についていた傷が蘇って思わず雪の胸元を見た。レモン色のニットの下。もう傷は癒えたことは知っている、痕も残っていないと滝から報告は受けていた。
雪に嫌がることはしてはいけない。
けれど……マーキングをしたい。
雪に触れたい。
私だけのものにしたい。
私のαが独占したがってる。
それが雪を困らせて、そんな顔をさせているんだが……。
しばらく固まっていたのか雪がおそるおそる私の腕あたりを掴んだ。はっとしてその手を見ると強く握ったり緩めたりを繰り返している。その腕を辿って雪の顔を見ると雪は心配そうに私を見上げていた。
「すまない、怖い、よな」
そういうと間髪入れず雪が首を横に振った。ぶんぶんと髪が乱れるほどに、子どもっぽい仕草に私は思わず笑ってしまった。
「じゃぁ……気持ちいいか?」
そう聞くと、ぱあっと耳まで赤く染めた。
「続けてほしい?」
「や、……です」
「……そうか」
「は、ずかし……から……、──あっ?!」
俯く雪の腰を掴んで自身に引き寄せた。芯を持ちはじめた自身を雪の腰に当て付けてみる。するとすぐに雪も同じだと分かった。
「あ……っ、ご、ごめ……なさい」
「何故謝る、私はうれしいよ」
もうひとつ引き寄せてお互いの固いものを磨り合わせてみると、雪は上体だけを出来るだけ引いて自分の顔を手で覆い隠してしまった。
「む、無理! はずかしい!」
大きく開かされた足をバタつかせて逃れようとする。その太ももを外側から手で掴み逃さない。すると雪の身体がテーブルに倒れて行く。片肘をついてそれをどうにか止めているが、私がまた腰を押し付け雪に覆いかぶさる。
「本当にやめてほしい?」
「や……っ、……こんなっ」
「本当に嫌なら私もここで止める」
すっかりテーブルに背中を預けている雪が私の目をのぞき込んでいる。真意を確かめているんだろうか。
料理を作る口実で、ひとり暮らしの雪の部屋にやってきて、興奮させたものを擦り付けて大人がなにをやってるんだ。
我慢できるだろ?
我慢しなきゃいけないんだろ。
αよ、それを潜めて雪を愛するんじゃなかったのか。
この先を雪に委ねている私も相当いくじがない。
雪が私を怖がっているなら、やめよう。
でも少しでも私を求めるなら、そこに付け入ってαフェロモンを纏わせたい。誰も近づけないように。
「ぁ────……ッ」
もう駄目だった。私はその首筋を食んでいた。
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