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140 ミストとナーム
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俊也は館に帰り、三幹部に報告。
「ラブミーテンダーに、スパイがいたんだ?
別に驚くことじゃないと思うけど」
エレンがそう言った。
「雇い主は、イスタルトやナームじゃないでしょうね?
私たちが大人しく隠棲してること、イスタルト貴族は知ってる。
雇い主がナームだとしたら、魔物に魔法を使わせるなんていう情報、もらすわけない」
フラワーが続ける。
「一番可能性が高いのはミスト。
俊也をうまくあおって、ナームへの牽制に利用しようとした?」
ルラの分析に、俊也はため息をつく。
やっぱりね……。俊也は国際情勢にほとんど興味はなかったが、そうとも言えなくなってきた。
「正確に教えて。現在の情勢」
俊也は誰にともなく聞いた。ルラに目で促され、エレンは語り始める。
イスタルトから見て、ナームは北西、ミストは南西に位置する国家で、三国は互いに国境を接している。
力関係で言えば、イスタルトは、ナームとミストを足したとしても、なお大幅に上回る力を持っている。
ナームは前述のとおり、はっきり言って貧乏国だ。鉱物資源は豊富だが、販路がほとんど閉ざされている。
自然環境は、とりわけ厳しい。温暖な気候のミストは大穀倉地帯を有し、海産資源も豊富。
商工業もナームよりはるかに発達している。
国力でいえば、ミストが圧倒しているように思えるかもしれないが、軍事力はナームが上回っている。
それというのも、ナームは古い国家で、貴族には高い魔力を持った者が多くいる。
ミストは若い国家であり、国家の上層部は、成り上がり者揃いだという弱みがある。
つまり、簡単に言えば、国力のミスト、強力な魔導軍団のナームということになる。
総合的な力で均衡を保つ両国は、ミスト建国以来犬猿の仲だ。
なぜなら、ミストはナーム王国から分離独立した国家である、という歴史的背景があるからだ。
今でも両国は、国境周辺で小競り合いを繰り返している。そして、イスタルトは両国の争いに、当初は中立を保っていた。
だが、泥沼化しそうな紛争に、三大貴族はしびれを切らした。
戦火で生活の基盤を失った難民が、両国から大勢イスタルトに流入したからだ。
イスタルトは軍を派遣し、強引に停戦に持ち込んだのが、百年前の出来事だった。
「なるほどね。ルラがあのスパイ、ミストが派遣したという理由、わかったよ。
ミストは高い能力を持った魔導師が、喉から手が出るほどほしいんだ?」
エレンの話が一段落し、俊也はそう感想を述べた。
「そういうことね。
だから、ちょっとまずかったかもね。
俊也が秘密を漏らしたこと」
エレンが苦笑を浮かべて言う。
「それはどうかな?
ミストは最初から大体つかんでるんじゃない?
だから、かなり前からスパイを常駐させてる」
フラワーが異を唱える。
「私もそう思う。俊也はその情報に、確証に近い裏付けを与えてしまった。
色仕掛けのアプローチ、排除を徹底すること。
ミネットのこともあるし、いっそう気を引き締めよう」
ルラはそう締めくくった。
もちろんその言葉は、俊也に向けられたものだった。そしてルラの言う「ミネットのこと」とは、ミストに関わるややっこしい事情を指す。
「ラブミーテンダーに、スパイがいたんだ?
別に驚くことじゃないと思うけど」
エレンがそう言った。
「雇い主は、イスタルトやナームじゃないでしょうね?
私たちが大人しく隠棲してること、イスタルト貴族は知ってる。
雇い主がナームだとしたら、魔物に魔法を使わせるなんていう情報、もらすわけない」
フラワーが続ける。
「一番可能性が高いのはミスト。
俊也をうまくあおって、ナームへの牽制に利用しようとした?」
ルラの分析に、俊也はため息をつく。
やっぱりね……。俊也は国際情勢にほとんど興味はなかったが、そうとも言えなくなってきた。
「正確に教えて。現在の情勢」
俊也は誰にともなく聞いた。ルラに目で促され、エレンは語り始める。
イスタルトから見て、ナームは北西、ミストは南西に位置する国家で、三国は互いに国境を接している。
力関係で言えば、イスタルトは、ナームとミストを足したとしても、なお大幅に上回る力を持っている。
ナームは前述のとおり、はっきり言って貧乏国だ。鉱物資源は豊富だが、販路がほとんど閉ざされている。
自然環境は、とりわけ厳しい。温暖な気候のミストは大穀倉地帯を有し、海産資源も豊富。
商工業もナームよりはるかに発達している。
国力でいえば、ミストが圧倒しているように思えるかもしれないが、軍事力はナームが上回っている。
それというのも、ナームは古い国家で、貴族には高い魔力を持った者が多くいる。
ミストは若い国家であり、国家の上層部は、成り上がり者揃いだという弱みがある。
つまり、簡単に言えば、国力のミスト、強力な魔導軍団のナームということになる。
総合的な力で均衡を保つ両国は、ミスト建国以来犬猿の仲だ。
なぜなら、ミストはナーム王国から分離独立した国家である、という歴史的背景があるからだ。
今でも両国は、国境周辺で小競り合いを繰り返している。そして、イスタルトは両国の争いに、当初は中立を保っていた。
だが、泥沼化しそうな紛争に、三大貴族はしびれを切らした。
戦火で生活の基盤を失った難民が、両国から大勢イスタルトに流入したからだ。
イスタルトは軍を派遣し、強引に停戦に持ち込んだのが、百年前の出来事だった。
「なるほどね。ルラがあのスパイ、ミストが派遣したという理由、わかったよ。
ミストは高い能力を持った魔導師が、喉から手が出るほどほしいんだ?」
エレンの話が一段落し、俊也はそう感想を述べた。
「そういうことね。
だから、ちょっとまずかったかもね。
俊也が秘密を漏らしたこと」
エレンが苦笑を浮かべて言う。
「それはどうかな?
ミストは最初から大体つかんでるんじゃない?
だから、かなり前からスパイを常駐させてる」
フラワーが異を唱える。
「私もそう思う。俊也はその情報に、確証に近い裏付けを与えてしまった。
色仕掛けのアプローチ、排除を徹底すること。
ミネットのこともあるし、いっそう気を引き締めよう」
ルラはそう締めくくった。
もちろんその言葉は、俊也に向けられたものだった。そしてルラの言う「ミネットのこと」とは、ミストに関わるややっこしい事情を指す。
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