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34 巻き込まれて悔いなし

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 二日後、宿場町ヤーダ。

俊也はフラワーを伴い、街を散策した。尾行者がいないか、最終確認するためだ。
フラワーは巫女たちの中で、精神魔法に最も長けている。

ルラとエレンが、フラワーに巫女勧誘を当初ためらったのは、そのことも大きかった。

町中で派手な攻撃魔法を使うのは、はばかられる。尾行者がいたとして、撃退するには精神魔法が最も有効だ。よって、尾行者をおびき寄せる意味で、フラワー一人を供に選んだ。


「尾行はいなくなったみたいです。王都から解除の指令が届いたようですね」
 俊也にがっちり腕を組んだ、フラワーが耳打ちする。時刻は夕暮れ前。尾行者の存在は、さっきまで確認していた。フラワーは感知魔法にも長けている。

そのせいか、フラワーの性に関する感度も抜群だ。俊也はひそかに「すっぽんフラワー」と、ニックネームをつけた。


「フラワー、この国の宗教、どうなってるの? 
教会、見たことないんだけど」
 俊也はこの世界へきて「何かが足りない」と、感じていた。自分が漠然と抱いていた「異世界」イメージに比べて。

一つには冒険者ギルドのたぐいだが、それはルラに説明され納得していた。
町中デートに付き物の「肉串」を売る露店も見当たらないが、それはいいだろう。

多く人が集まる市場にはあるかもしれないし、どうしても買いたいとは思わない。

もう一つの違和感。つまり、ゲームなら、記録したり毒や呪いを癒す教会らしき建物、ついぞ見かけなかった。
例の貴族の監視や、尾行の確認で、街中はかなり駆け回ったのだが。

「宗教、ですか? 教会は、いわゆる『神』を祭る建物、ですね。
この国に教会はありません。
他国の中にはあると聞いたことがございます」
 フラワーは、きょとんとした表情で答えた。

 つまり、少なくともこの国の人間は、宗教に無関心ということだ。

考えてみたら当然かもしれない。人間が魔法で「奇跡」を起こせるのだから。

正教分離は、あちらの世界で、いまだ実現していない現実だ。科学がどんなに進歩しても。

 俊也は宗教の価値を、否定しない。だが、宗教、特に一神教の弊害も、決して否定できない。
その意味で、この国は健全といえるだろう。

 健全といえば……、
「町中デートでテンプレの、『あれ』がないな」
 俊也は退屈なので、フラグを立ててみました。

「テンプラ! あれ、超おいしかったです!」
 うふ! いただきました! ギャップ萌え! 学力では、ルラと並ぶと讃えられるフラワーの聞き間違い。


「この辺は内陸だから、海産物が少ないだろうね。向こうの世界へ行ったら、またごちそうするよ」
 俊也はフラワーの可愛いミスを、ただす気になれなかった。


 町中デートテンプレの「不良に絡まれ」イベントは、結局起こらなかった。

それというのも、俊也の優れた洞察力でも見抜けなかった事情がある。デートパートナーがフラワーであったことだ。

 不良さんを含め、イスタルトの庶民は、みんな知っている。貴族の子女が魔法に長けていることを。

さらに、三大貴族のお嬢様方三人は金髪碧眼。それは、王家の血をひく者に、共通する特徴だった。

たとえ傍流だったとしても、金髪碧眼は、まず間違いなく高い魔力を持っている。

そんな者に、下手に絡んだら、超やばいのは常識以前の問題だった。


 翌朝。ナイトは目が覚め、そ~っとエレンの脇の下から抜け出した。

爆乳とはいかないが、エレンの持ち物は、明らかに豊乳の尊称は与えられる。

猫形態は超お得! おっぱいすりすりやり放題! その気になったら、猫形態でも感覚が共有できる。

それにね、なんといっても猫形態のだいご味は、立ち位置の絶対的優位性!

さすがに人間形体やレジ形態で、自然な形であのアングルは望めない。
お財布HPに大打撃を与えた下着代も、全然惜しくない!


ナイトはエレンに鼻つん。ぼふん! 俊也に変身。まだ熟睡中のエレンは、ふにゃ、っと笑った。

美少女は寝顔も絵になる。

 俊也とナイトは脳内会議。
『王都の件は、もう片付いた。そう判断していいだろ?』
 俊也は頭の中のナイトに、心の中で話しかける。

『ああ。そう考えていいだろう。それにしても、とんでもないことに巻き込まれたな』
 ナイトが答える。

『結局は踊らされてたんだ。三大貴族に』

『まあ、そう言うな。結果オーライ。
それでいいじゃないか』
 ナイトは俊也が、状況を大いに楽しんでいたことを知っている。

『なんかさ、自分たちでも始末におえない戦術核を、押し付けられた。
そんな感じしない?』

『ああ、言えてるかもな。
巫女たち、特に三幹部は、お主とちぎって、とんでもない武器になってしまった。
その前から、父親たちは頭を悩ませていただろう。三幹部の嫁ぎ先。
他国へ嫁がせるのは論外。家格が近い三大貴族は、血が濃すぎる。
家格が低い貴族を増長させても面倒だ。
三人とも、相当以上の力があったからな』

『おま言う、って言われそうだけど。
ナイトやナイト2は、戦略核だ』

『まあな……。俊也殿、お主は原子力空母、といったところか?』

『違うね。原子力潜水艦だ』

『なるほどな……。隠棲すると言い出したのは、その意味か?』

『まあね。海の中じゃないけど、ずっと潜っている価値はある』
 俊也は、まだ深く眠っているエレンの乳首に吸い付いた。
「巻き込まれ」の報酬は、十分すぎるほどだった。
 
 俊也は目を覚ましたエレンの腕に、巻き込まれた。

「朝のお情け、ください!」

「諾! ただし、エレン、みんなに伝えて。俺に敬語は不要だ」

「OK! 旦那様」
 んく、ちゅ、ちゅっ……。俊也はエレンの豊なおっぱいを右手に、彼女の唇をむさぼった。「様」ぐらいなら、いいだろう。

敬語を使われ続けるのは、距離を開けられているようで、いやだったのだ。

 やんごとなきおひい様三人も、他のおひい様も、みんな俺のもの!

 は~…幸せ……。
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