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25 三大貴族令嬢最後の刺客

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 ユーノがベッドから抜け、いそいそと着衣する間。

 なんだか緊張する。フラワーにじっと見つめられ、俊也は居心地の悪さを感じていた。

 なんというか、自分という存在をCTスキャンされている、みたいな?

 俊也は初対面の中で、フラワーの存在が一番気になっていた。
 ちょっとおっかない?

 彼女の容姿は、美的見地でルラと双璧をなすだろう。腰に届きそうなほど、長く伸ばした金髪。
ルラより少し細い碧眼は、作り物めいた、と感じさせるほど、冷たく澄んでいる。

ルラは、黙っていれば冷たく感じられるが、感情の動きは目に素直に表れる。

 クールビューティ、という点は、さっきまで腕の中にいたユーノと共通するが、フラワーは「氷」ではない。

 精巧なアンドロドに、生身の肉体を与えたら、こんな感じになるのではないか?

「ユニークな容貌ですね」
 フラワーが、抑揚の乏しい言葉を投げつけた。

 グサッ! 

「一般庶民でごめんなさい!」
 俊也は起き上がって正座。

「いえ、大変興味深いです。黒目黒髪。ローランやエンランと同じですが、全然違ってます」

 そりゃ、全然違ってますよ……。俊也はかなりいじけた。正座を崩す気になれないけど。

「安心しました。
情報によれば、ルラが魔法研究会のメンバーを集め、なにやら密談。
そして、密かにリラーナ公爵家で集合。
何かあるな、と思ってきてみたら、こんな楽しいイベントに遭遇しました」

「あの~、ルラに聞いてなかったんですか?」

「さっきまで、とっちめてました。
私をハブにするなんて。
事情はすべて聞きました。
で、どうしましょうか?」

「何を、でしょう?」

「服です。
脱いだ方がいいですか?
脱がせたいですか?」

 そんなに冷静に語るべき内容でしょうか?

 それはさておき、どうしましょう?

「ゆっくり脱いで、いただけますか?」
 脱がせるのは、なんだか畏れ多い? 俊也はそう依頼して、両手をつき、深く頭を下げた。


 フラワーは一つうなずき、ドレスを脱いだ。上は薄い肌着、下はカボチャパンツ。こちらの一般的最終装備だが、下品に見えない。
俊也がネットで見た、下着ショーのモデルにクラッシックランジェリーを着せてみました、って感じ?
いや、モデル、というより、血の通ったマネキン?

バランスがとれすぎて、かえって不自然に見える。

なんだよ、あの手足の長さ!

腰のくびれ!

おっぱいは、今後がんばろうね! もう少しでいいから! この体に巨乳は似合わないと思うよ。

 フラワーは、ニヤリとかすかに笑った。

 ぞくぞく~~~!

 俊也は背筋に電流が走った。思考がおぼろに。なんだかお花畑でお散歩するワンコ気分。そして、何かにあやつられるように、ベッドから降りた。

 ご主人様だ! 俺がすべてをささげるべき女性!

 ワン、ワン…で、いいのか? いいんだよね!

「フラワー様、俺をどうにでもして」
 俊也は、フラワーの足元にひれ伏した。

「ごめんなさい。
魔法をかけるつもりはなかったのですけど、つい。
悪い癖ですね。
あなたを興味深いと思ったのは本当です。
私こそ、どうにでもしてください」
 フラワーは、しゃがんで俊也の手を取った。

 俊也の思考は晴れた。

 どうしてワンワン? ニャンニャンが正しいはずだけど。

あらま、柔らかい。水仕事など無縁という感じ。

そして、意外、といえば失礼だが、温かい手だった。今の言葉も、温度が感じられた。

 この少女、よくわからん!

 俊也はミステリアス少女を、優しく抱きしめた。

 ところで、どんな魔法を「つい」かけたのだろう?


 ミステリアス少女は、肌着とパンツをゆっくり脱いだ。

 俊也の目を見つめたまま。なんだか、またワンコ気分に。

 俊也はフラワーの足元へ。四つん這いでふくらはぎにすりすり。

「あら、魔法がまだ解けてないのかしら?
俊也さん、大丈夫?」

 俊也はフラワーを見上げる。

「大丈夫でないですワン。
お美しいお体です。なんともいえず」

 心の中でナイトは思う。この女、恐ろしいやつだ。無意識に魅了魔法を放っている。
 まあ、俊也殿にとっては幸せだろう。若干Mの気があるから。

 俺は眠るぞ。勝手にやってくれ。

 ナイトは俊也の中で眠った。

すると……。

「ご主人様ぁ~~~! ぺろぺろ、ぺろぺろ……」
 俊也はフラワーの足をなめまくった。

ナイトのレジストが完全に消え、強魅了状態に陥った俊也だった。



 隣室のSAメンバー。

「もう二時間よ。あれはまだ突入してないね?」
 エレンがあきれ顔で言う。隣室からは、間断なくフラワーの喘ぎ声が聞こえるが、ギシギシ音が混じらない。

「もしや……。フラワー、魅了の魔法かけた?」
 ルラは、ようやく気付いた。これまで俊也の、前もっての戯れは、長くて十数分。
 ユーノなんか、速攻ギシギシアンアンだった。

「私たち、どうしてくれるんですか!」
 ブルーが、半泣きで訴えた。

ドキドキ! 今日で処女を卒業する。

やってやろうじゃん! ブルーは相当の決意でこの場に臨んでいた。

「ブルー、フラワーさんを止められる?」
 同じく次を予定していたイザベルが言う。

「ぐっ……。そんなのできないよ~~~!」
 ほぼほぼ怖いものなしのブルーでさえ、フラワーは苦手だ。

ブルーは、最後の頼みの綱、ルラを物欲しげな目で見つめる。

「私でも無理!
フラワーだけには、教えていなかったし。
ブルー、イザベル、明日でいいかな?」
 ルラだけは、なんとか暴走フラワーをコントロールできる。ただし、さっき散々責められた。どうして仲間はずれにしたのか、と。

 それはもう、チクチクと……。

「そんな~~~」
 膝から崩れ落ちるブルーだった。イザベルは、がっくりと肩を落とし、うなだれた。


隣室からは、アンアンと、気持ちよさそうな喘ぎ声が、延々と漏れ続けた。
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