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23 ハーレムの予感?

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 ハウス広間。あらたに招いた客人歓迎のため、晩飯会が開かれた。カリンは、さすがに手料理で皇女を歓待する気になれなかった。したがって、料理はすべて調理担当ロボットに任せた。

「ジャック、一言挨拶しろ」
 エリオスは息子に放り投げた。 

「えっ、俺が?」
 ジャックは焦る。

「お前、ハウスの跡取りなんだぞ?
もっと自覚しろ!」
 エリオスは教育的指導を装った責任転嫁。

「まあ、そうなんだけどさ……、
え~、ようこそ。いくらでも食って飲んでください。以上!」
 一言ではなかったが、見事なまでに簡潔な挨拶。客人は吹き出しそうになるのを必死で我慢した。

「すばらしいご挨拶、いたみいります。
皮肉ではないですよ?
正直、パーティの長ったらしい挨拶、大嫌いでした。
遠慮なくいただきます」
 客人を代表し、エリナが返す。

 歓迎会はバイキング形式。それは客人の好み調査を兼ねてAIが決めた。この客人、当分居座るだろうし。

「ところで皇女様、どうしてこの星へ?」
 カリナがズバリと聞く。

「もちろん、ジャックさんとよしみを通じるためです。
皇帝陛下から、貞操をかけてコダカーラと縁を作れと命じられました。
わたくしは二番目ですから、側室ということになりますね」
 エリナはあっけらかんと明かす。この素朴に焼いただけのお肉、超そそるんですけど!

 エリナは謎肉をトングで小皿に取り分ける。自分の手で料理を取り分けるのは初めての経験。なんだか超新鮮!

ソースも色々。どれにしようかな?

「はぁ? 俺と?」
 ジャックは驚く以上にあきれた。よく知らないけど、皇女様って偉いんだろ?

「そうですけど、何か?」
 パクリ。ふぉ~~~! 何、このお肉。柔らかくて口の中で溶けちゃいそう。脂身が甘い。ソースも食べたことがないお味。エリナ、感激!

 ちなみに、エリナが食べた謎肉は、ハウス牧場で品種改良されたシモフーリ種のカウカウロース。ソースはミソゴマダレ、隠し味にユーズの皮を入れ風味を効かせている。
味噌や醤油は、ハウス限定品である。

「マジで?」
 ジャックは唾を飲み込んで聞く。
「マジです。陛下はわたくしの嫁ぎ先として、ジャックさんが一番だと判断しました。
わたくしもそう思います。
フィアもお願いしますね?
あなたのことを、たいそう尊敬しているようです」

「私もですかぁ~~~!」
 エルフィアは、びっくりして叫んだ。

「そうですよ? いやですか?」
 
「いやでないですけど……。ごにょごにょ……」
 真っ赤になってもじもじする、純情プリンセスガードだった。


 隅の方でオリビアの料理をよそうセレナの手が止まった。
「お嬢様。どさくさに紛れて、ジャックさんの側室になるのも手じゃないですか?
このハウスなら、安心して暮らせると思うのですが?」
 セレナはオリビアの耳元でひそひそと。

「なるほど……。いいかもしれない。ジャックさん、かわいいですし……」
 半分その気になったオリビアだった。どうせ妾になる予定だったのだ。五十のオヤジより、ジャックさんがよっぽどいい。

 オリビアは、ジャックの年齢を知る由もなかった。


「ねえ、エリナ様。治安がよくて住みやすい星、知りませんか?」
 エルが歩み寄って聞いた。

「治安がよいといえば、オリオール星が一番だと思います。
わたくしが他の星を訪ねる時は、厳重な警備を敷きますから、事情はよく存じませんが」
 エリナは慎重に答えた。皇族である自分が訪問しても、ごく表面的な部分しか見せてくれなかった。どうやら三姉妹は、やはり他の星へ移りたいようだ。うかつなことは言えない。

「そうなりますか……。たとえば、カナリア星、どう思います?」
 エルは重ねて聞く。

「あの星はダメですね。警備の者から、絶対外出してはいけないと言われておりました。
治安で言えば最低じゃないでしょうか?
予定外の行動でしたが、現に皇室専用艦が襲撃されました」
 衝撃から立ち直ったエルフィアが、エリナの言葉にコクコクとうなずく。近衛団長から、カナリアは危ないから、くれぐれも用心しろと注意を受けていた。

辺境伯の挙式ともなれば、本来なら皇帝か皇太子、少なくとも男性の皇族が、出席してしかるべきところだ。
エリナが皇族の中で一番暇だし、万が一のことがあっても、実害が少ないということで、彼女にお鉢が回ったのだ。

「そんな物騒な星、どうして取り締まらないんですか?」
 エルは素朴な疑問をぶつけた。

「耳の痛い言葉です。最大の理由は遠すぎる、ということですね。
軍を派遣するとしたら、莫大な経費がかかります。
辺境伯ですから、強力な軍も持っています。
本気で抵抗されたら、双方かなりの被害が出るでしょう。
恥ずかしい話ですが、ガダル辺境伯は、帝国軍部や閣僚に強いコネも持っています」

「つまり、付け届けが帝国中枢部にいきわたっていると?」

「はっきり言えばその通りです。いったい何で稼いでいるのでしょうね?」

「そんなの変だろうが!」
 単細胞男子ジャックは激しく憤る。

「はい。絶対変です」
 エリナは悲しそうな目で答えた。

 ジャックの勢いは肩すかしされた。すごすごと離れる。コダカーラ遠征軍事件のこともあり、ジャックは帝国にいい感情を持っていない。それが今の怒りの言葉だった。

だが、エリナの目で冷静になってしまった。矛盾を抱えていることがわかっていても、どうしようもない。たとえ皇族の一員であったとしても。

つまり、帝国は大きくなりすぎたのだ。帝国という巨人の、足指の先が腐っていても手が出せない。そんな感じなのだろう。

「ジャックさん。いい人ですね。
わたくしの選択は間違ってない。いっそう自信が持てました」
 エリナはジャックを追いかけ、背後から抱き付いた。

「なななな……」
 ジャックはピキーンと固まった。背中にあたる幸せのふにゅ感!

「よろしければ今晩からでも、かわいがってくださいませ」
 皇女様はこうと決めたら超大胆になれる女性だった。腹の座りようがハンパないのだ。

「こ、こ、心の準備が……」
 ヘタレジャックは、それしか反応できなかった。

「そうですよね? お会いしたばかりなのに、はしたない振る舞いでした。
わたくしはいつでも歓迎です」
 エリナは心の中で、ガッツポーズをとっていた。つかみはOKでしょ!

 ジャックは、やんごとなき幸せのふにゅが遠ざかり、ひどく後悔した。皇女様のおっぱい、見た目より存在感がありナイスでした!

 家族以外初めて触れた人間のおっぱい。たしかに純情ジャックの心を、がっちりつかんでいた。
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