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13 苦戦、後、楽勝

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緊急連絡通路、出入り口付近では、重装備の賊とクルーが激しく剣を交えていた。火器使用を両陣営とも控えているのは、後のことを考えているから。賊は乗っ取る予定の船を傷つけたくない。

クルーはもちろん、船を無傷なまま賊を撃退したい。そこで剣を使用して迎え撃っているわけだが、装備を整える余裕がなかった。
選び抜かれたクルーだけに、かろうじて持ちこたえているが、乱戦に慣れている賊に大苦戦。

クルーの中には斬り伏せられ、すでに息絶えた者も数名。負傷者多数。

「クルーの皆さん、下がってください」
 リンが告げる。
「私たちにお任せ!」
 マミが張り切って言う。

「誰?」
 後づめのクルーは、三人娘を見てきょとん。ごく一部にしか、彼女たちの存在は知らされていなかった。

「私たちの戦闘力なら、一分以内に片づけられます。
じゃまです。どいて」
 エルがにっこりと微笑んで、クールに言う。

「いや、しかし……」

『エリナです。三人の言う通りにしなさい!』
 艦内放送が響く。

 クルーは賊をけん制しながら、皇女の命令通り下がる。

「参ります!」
 クルーに入れ替わり、リンが駆け出す。リンが駆け抜けた後に、硬い装甲の賊の首が、遅れてぼとぼとと落ちていく。

「ちょっと~!
姉さん、私たちにも残してよ!」
 マミが慌てて追いかける。
 
「あの二人は戦闘狂ですから。
負傷者の手当てを」
 そう言ってエルは、死体をぴょんぴょんと避け、緊急通路出入り口ですらりと立った。

 クルーたちは、あっけにとられ呆然と見ていたが、エルの言葉で我に返った。急いで負傷者を看る。

「あら。こんなところにポーションが。宙賊が持っていたのかな?
使ってください」
 エルが引き返し、医療バッグを差し出した。もちろん腰の袋から出したものだ。
 
「宙賊のポーションなど信用できない。
タンカで運べ!」

「いいから使え!」
 エルが叱責する。

『その者の言う通りにしなさい。
三人は私の客人です』
 艦内放送が流れる。

 半信半疑のクルーたちは、エリナの命に従った。

「傷口に半分かけて。意識が回復したら残りを飲ませなさい」
 そう言って、エルは出入り口に引き返した。エルは思う。後片付け、大変だろうな……。


 貴賓室では……、

「フィア、彼女の戦闘力、どれほどのものでしょう?」
 モニターで様子を見ていたエリナは、震える声で聞いた。グロそのものの死体や負傷者を見たこともある。同時に、リンのすさまじい戦闘力に圧倒されていた。

「見当もつきません」
 細剣の名手と言われるエルフィアにも、リンの実力が計れなかった。一つだけ言える。人間業ではない。

『エリナ様、通信が入りました。あの星に置いてきた輸送艇が、突然出現しました。
送信はルカさんからです』
 管制室に残っていたクルーから通信。

「どういうことですか?
……いえ、つなぎなさい」
 エリナは不審に思ったが、そう命じた。

『ルカです。宙賊との戦闘、どうなってます?』

「艦内に乗り込んできた宙賊は殲滅しました。
リンさんとマミさんが、宙賊の船に乗り込んだようです」

『だから言ったじゃん。
もう終わってるよって』
 ジャックの声が割り込んできた。

「ルカ、どうやって追いついたんですか?」
 エリナが聞く。この艦がコダカーラから離れて、もう丸一日経っている。

『私にも意味不明です。
あっという間に追いついちゃいました。
ジャック、どういうことなの?』

『そんなの知らね~。
ロボットたちが、何かしたんじゃね?
あいつら、いつも好き勝手に何かやってるから』
 ジャックの声がもれる。

『前のマスターの意思ですにゃん。
ジコマンのビガクだそうですにゃん』
 かわいい女の子の声が、かすかに聞こえる。

『何それ?』
 ルカとジャックの声が重なる。

『これ以上は秘密ですにゃん!
ごめんにゃさい。
そういうふうに、プログラムされてるですにゃん』

 とりあえず、宙賊襲撃イベントは終息した。
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