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168 意地を通せば窮屈だ

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※もうすぐ完結予定です。多分、明日か明後日当たり?


 夜の王宮、謁見の間。主だったメンバーは、すでに集合していた。

「ケーン、言うまでもないことだけど、私や父ちゃんは介入できない。
あなたの嫁も、今は大切な時」
 夜の女王が、まず釘をさした。

「わかってる。
父ちゃん、F75改の火器、載せ換えられる?」
 ケーンの言葉に、ケンイチはニヤリと笑った。

「任せろ!
十二時間以内に入れ替えてやる!
ただし、Gは抑えきれないぞ。
お前の体なら大丈夫だとは思うけど」

「了解!
パイロットスーツは、俺が工夫してみる」
 超ノリノリの親子だった。

 ケーンを見守る嫁たちは思う。

これでこそケーン! 超生き生きしてる。さすがに生身で戦争介入は心配だけど、あの戦闘機に乗るなら問題なし。


翌日。ケーンは父親から、F75改に積んだ火器の説明を受けていた。

「あんまり火力がありすぎても困るだろ?
主武器は重機関銃程度の威力に抑えている。
弾倉が空になったら自動で交換される。
アイテムボックスの応用だ。
ミレーユが手伝ってくれた。
クラスターミサイル、使用はあまり勧められない。
着弾地点半径二百メートル、多分何も形が残ってない。
どうしてものときは遠慮なく使え」

「まあ、俺が広域魔法使うよりましだね。
俺は謎のエルファード星人だから、魔法は使えないけど」

 そうなんです! 人族間の紛争は、本来人族だけで片付けなければならない問題。
 夜の王宮も光の女神も、手を出してはいけないのです。

唯一の調停機関は人族首脳会議。
 ところが、首脳会議は対魔族戦においてのみ結束する。辺境小国同士の紛争なんて対岸の火事。地球の国連以上に役立たず。

 超国家組織の勇者パーティも、現在のところあてにできない。

 そこでケーンは考えた。異星人なら、介入してもいいんじゃね?

 愛と平和の戦士、エルファード星人、なんちゃって。

 ちなみに、ケーンは今、長いつけ耳を装着している。何事も、形から入らなければ、気が済まないのがケーンだった。

「ケーンさん、二番機も改装してもらいました。
私もついて行きますから!」
 アンドロイド、モリミゾレが、ケーンに腕を組んでくる。

 けっこうな、お乳加減ですこと!

「いいよ。だけど、これを着けることが条件」
 ケーンは、アイテムボックスから、一対のつけ耳を取り出した。

「いいですけど、何か意味はあるんですか?」
 ミゾレはちょっとひいた。

「意味なんかあるわけないだろ!
俺の趣味の問題!」

 そのやりとりを見ていたユリは、ミゾレの肩をポンポンとたたく。

「あんた、ケーンと付き合い短いから知らんやろけど、意味なんて考えたらあかん。
オタク趣味は、合理を無視することから始まるんや」

 なかなか含蓄深い、ベテラン嫁のアドバイスだった。

「ところでケーン、ヘルメットかぶったら、そのつけ耳、邪魔にならんか?」
 ユリがにんまりして言う。

「ぐっ……」
 ケーンは言葉に詰まる。ヘルメットかぶること、考えてなかった。

「こうすれば問題ない!」
 ケーンはヘルメットを装着し、上からつけ耳をくっつける。

「ケーン様、やっぱり私も?」
 ミゾレがジト目で言う。決まり過ぎたパイロットスーツにヘルメット。それにつけ耳?
どう見てもかっこわる~~~!

「ミゾレ、俺と君の仲だよね?
コスプレは、みんなでやれば怖くない!」
 合理性と羞恥心を、完全無視することにしたケーンだった。

 明治の文豪曰く。

『智に働けば角が立つ。
情に竿させば流される。
意地を通せば窮屈だ』
※夏目漱石 『草枕』の冒頭 

 全くの真理だ。
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