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163 チャリティバザールでござ~る
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光の神殿分院前の広場。広場には日よけテントが数多く設置され、チャリティーの品が販売されている。
その品は、一点金貨一枚以内相当という条件で、貴族や商家から提供されたものだ。
王家や光の神殿、ギルド肝いりのチャリティー。貴族も商人も、こぞって出品した。
見返りは期待していなかったが、なんとギルドから、シャンプー&リンス、せっけん。中級ポーションが、出品数や額に応じた返礼品として提供された。
もっと出品していたらよかった、というのが、貴族や商人の感想。
セッケンやシャンプー・リンスは、奥方や御令嬢たちに大好評。ギルドに問い合わせても、現品限りとはねのけられた。
ポーションは、レミの薬屋の品。主に冒険者に販売され、どれほど社会的な地位が高くても、ごり押しで入手できない。
超痛い目にあった貴族もいることだし。
チャリティーのテントに並んで、十軒の屋台が軽食を販売している。数日前から、王都各所で人気を博している屋台だ。
ラーメン・ハンバーガー・たこ焼き・イカフライ・ソフトクリーム&プリン。各二軒が大盛況。
はっきり言って、類をみないお祭り騒ぎ。
広場中央の特設ステージ。
「さあさあ! ただいま竜王国で人気沸騰中!
ボンビークローバーXのミニライブ、始まるよ~~~!」
蝶ネクタイのケーンが、マイクで叫ぶ。
♪愛する フォーチュンキャンディ
未来は 悪くないかもよ~~~ はははぁん~♬
ステージでは、ボンクロXの四人が、きゃぴきゃぴダンス。衣装はもちろんカワユイ狙いのそれ系。
当初あっけに取られていた客は、ステージに引き付けられる。
騎士・冒険者・シスター・孤児院の子供たちが、脇からステージ上へ。歌とカラオケに合わせ、ボンクロの振り付けをまねる。もちろん、ケーンの仕込みだ。
取り巻く客も、思わずリズムに合わせスイング。
ごめんなさい! アキモト先生……。ケーンは心の中で、そうつぶやいた。
チャリティーバザールは、ケーンの狙い通り大盛況のうちに終わった。
ギルド主催で、オークション出品者を招き、立食形式の打ち上げが行われた。もちろん、影の主催者はケーンだ。
王族や貴族、大商人たちは、一般庶民に混じって、屋台を冷やかすのははばかられた。本音を言えば、食べたことのない屋台メニューに心惹かれていた。
「本日は王家の皆様を始め、貴族の方々、ならびにライラックで店を構える商人の皆様。
ご協力、厚く御礼申し上げます。
孤児院の子供の中には、クエストで親を失った者も、多く含まれております。
皆様のお力で、身寄りのない子供たちが、どれほど救われるか。
重ねて感謝申し上げます。
今夜は、現在王都で評判の屋台グルメ、試しに楽しんでいただけたら幸いです。
調理は、すべて夜の王宮料理係が行います。
安心して召し上がってください」
ギルド長は、ケーンが用意した挨拶を述べた。
打ち上げ参加者たちは驚いた。
夜の王宮の料理係?
つまり……、食べなければ超怖い! それに、食べてみたいし!
ライラックのハイソ諸兄は、屋台に列を作った。
ケーンは、ハイソたちが舌つづみを打つ光景を、満足げな表情で眺めていた。
なんか、やり遂げた感?
料理コンテストなんて、もうどうでもいいんじゃね?
提供した「粗品」も、出所は俺だとわかってるだろうし、わいろを贈ってるみたいで、なんかやだ。
料理の鉄人に、なりたいわけじゃないし。
急速に意欲を失ったケーンだった。
「ケーン様、このソフトクリーム、おいしいですね!
こんなの、食べたことございません!」
貴族御令嬢風の女性が近寄ってきた。
マジで金髪ドリル、いるのね?
「さようでございますか。
屋台販売なので、お嬢様には買いにくいと思いますが、どうかごひいきに」
ケーンはそつなく応える。ドリルヘアーも定番だが、なぜだか触手が動かない。
触手でからめてみたい気もするが。
「よろしければ、お茶会でも……。
できたらセッケン、リンスとシャンプー、どこで買い求めたらよいのか、教えていただけません?」
「そうですわ!
いくらお金がかかっても大丈夫ですから」
「是非販売してくださいくださいませ!」
ケーンの周囲を、貴族令嬢や豪商の娘と思われる女性が取り巻いた。
「あれは父が古代遺跡で発掘したものです。
時間停止機能が付いた箱に入っていました。
現品は残り少なく、ただちにお分けすることはできません。
研究してみます」
ケーンは、下心見え見えの御令嬢たちに辟易した。いつもの言い逃れで押し通すことに。
「さようでございますか……。残念ですわ」
「なるべく早く、ご研究くださいませ。
開発できたら、是非ともガイアー商会で……」
「ギムレット商会の方が、幅広く商いをしております!」
「考えておきます」
ケーンは日本的な婉曲拒絶法でその場を逃れた。
ダメだ、この子たち……。いっこうに触手が動かない。
まとめて触手で絡めたい気もするが。
その品は、一点金貨一枚以内相当という条件で、貴族や商家から提供されたものだ。
王家や光の神殿、ギルド肝いりのチャリティー。貴族も商人も、こぞって出品した。
見返りは期待していなかったが、なんとギルドから、シャンプー&リンス、せっけん。中級ポーションが、出品数や額に応じた返礼品として提供された。
もっと出品していたらよかった、というのが、貴族や商人の感想。
セッケンやシャンプー・リンスは、奥方や御令嬢たちに大好評。ギルドに問い合わせても、現品限りとはねのけられた。
ポーションは、レミの薬屋の品。主に冒険者に販売され、どれほど社会的な地位が高くても、ごり押しで入手できない。
超痛い目にあった貴族もいることだし。
チャリティーのテントに並んで、十軒の屋台が軽食を販売している。数日前から、王都各所で人気を博している屋台だ。
ラーメン・ハンバーガー・たこ焼き・イカフライ・ソフトクリーム&プリン。各二軒が大盛況。
はっきり言って、類をみないお祭り騒ぎ。
広場中央の特設ステージ。
「さあさあ! ただいま竜王国で人気沸騰中!
ボンビークローバーXのミニライブ、始まるよ~~~!」
蝶ネクタイのケーンが、マイクで叫ぶ。
♪愛する フォーチュンキャンディ
未来は 悪くないかもよ~~~ はははぁん~♬
ステージでは、ボンクロXの四人が、きゃぴきゃぴダンス。衣装はもちろんカワユイ狙いのそれ系。
当初あっけに取られていた客は、ステージに引き付けられる。
騎士・冒険者・シスター・孤児院の子供たちが、脇からステージ上へ。歌とカラオケに合わせ、ボンクロの振り付けをまねる。もちろん、ケーンの仕込みだ。
取り巻く客も、思わずリズムに合わせスイング。
ごめんなさい! アキモト先生……。ケーンは心の中で、そうつぶやいた。
チャリティーバザールは、ケーンの狙い通り大盛況のうちに終わった。
ギルド主催で、オークション出品者を招き、立食形式の打ち上げが行われた。もちろん、影の主催者はケーンだ。
王族や貴族、大商人たちは、一般庶民に混じって、屋台を冷やかすのははばかられた。本音を言えば、食べたことのない屋台メニューに心惹かれていた。
「本日は王家の皆様を始め、貴族の方々、ならびにライラックで店を構える商人の皆様。
ご協力、厚く御礼申し上げます。
孤児院の子供の中には、クエストで親を失った者も、多く含まれております。
皆様のお力で、身寄りのない子供たちが、どれほど救われるか。
重ねて感謝申し上げます。
今夜は、現在王都で評判の屋台グルメ、試しに楽しんでいただけたら幸いです。
調理は、すべて夜の王宮料理係が行います。
安心して召し上がってください」
ギルド長は、ケーンが用意した挨拶を述べた。
打ち上げ参加者たちは驚いた。
夜の王宮の料理係?
つまり……、食べなければ超怖い! それに、食べてみたいし!
ライラックのハイソ諸兄は、屋台に列を作った。
ケーンは、ハイソたちが舌つづみを打つ光景を、満足げな表情で眺めていた。
なんか、やり遂げた感?
料理コンテストなんて、もうどうでもいいんじゃね?
提供した「粗品」も、出所は俺だとわかってるだろうし、わいろを贈ってるみたいで、なんかやだ。
料理の鉄人に、なりたいわけじゃないし。
急速に意欲を失ったケーンだった。
「ケーン様、このソフトクリーム、おいしいですね!
こんなの、食べたことございません!」
貴族御令嬢風の女性が近寄ってきた。
マジで金髪ドリル、いるのね?
「さようでございますか。
屋台販売なので、お嬢様には買いにくいと思いますが、どうかごひいきに」
ケーンはそつなく応える。ドリルヘアーも定番だが、なぜだか触手が動かない。
触手でからめてみたい気もするが。
「よろしければ、お茶会でも……。
できたらセッケン、リンスとシャンプー、どこで買い求めたらよいのか、教えていただけません?」
「そうですわ!
いくらお金がかかっても大丈夫ですから」
「是非販売してくださいくださいませ!」
ケーンの周囲を、貴族令嬢や豪商の娘と思われる女性が取り巻いた。
「あれは父が古代遺跡で発掘したものです。
時間停止機能が付いた箱に入っていました。
現品は残り少なく、ただちにお分けすることはできません。
研究してみます」
ケーンは、下心見え見えの御令嬢たちに辟易した。いつもの言い逃れで押し通すことに。
「さようでございますか……。残念ですわ」
「なるべく早く、ご研究くださいませ。
開発できたら、是非ともガイアー商会で……」
「ギムレット商会の方が、幅広く商いをしております!」
「考えておきます」
ケーンは日本的な婉曲拒絶法でその場を逃れた。
ダメだ、この子たち……。いっこうに触手が動かない。
まとめて触手で絡めたい気もするが。
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