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155 おいしすぎる獲物

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 このダンジョン、出てくるモンスター種は限られている。ミーちゃん無双は続く。

さすがにこのままではまずい。そう思ったケーンは、セオリーを無視して、マリアを先頭に立てた。

 それでも魔法学校屈指の秀才。客観的に言って、冒険初心者の火力ではない。

 だけどね……。

「ハァ、ハァ、ハァ……」
 三十分も経たないうちに、マリアはよれよれだ。

「ここは特にだけど、ダンジョン内はエンカウント率が高い。
上位冒険者を目指すなら、ダンジョン挑戦は避けられない。
どうすればいいと思う?」
 ケーンはマリアに問う。

「魔力の節約。体力の強化」
 マリアは、ぼそっとつぶやく。

「そのとおり。
認めるよ。マリアは短時間なら強い」

 ケーンにほめられちった……。マリアの疲れた表情が、わずかにほころぶ。

「俺が装備を与えたら、マリアはAランク以上の魔法使いになれる。
だけど、今はやれない。
わかるな?」

「装備に頼りすぎるな。
そういうことであろう?」
 
「そのとおりだよ。
マリアに必要なのは経験だ。
ガンバ!」
 ケーンは、魔導師の指輪を差し出した。マリアの装備している魔法の指輪の上位アイテムだ。魔力を補い、威力を高める。

 魔法の指輪でも、もちろん高価だ。

だが、魔導師の指輪は一桁違う。

「わらわにくれるのか?
装備に頼っては、いけないのであろう?」
 
「頼りすぎるのはいけない。
だけど、経験を積むために、魔力切れでは話にならないだろ?」
 ケーンは、マリアの頭をポンポンとたたいた。マリアの長い金髪は、二つ分けで丁寧に編み込まれていた。

 最後のお約束、縦ロールの貴族令嬢属性ではないが、マリアには似合わない。

「Bランクになったら、これをプレゼントする」
 ケーンは、アイテムボックスから魔玉の指輪を取り出した。

「それ、ほしい!」
 さすがは魔法学校屈指の秀才。マリアはその指輪が、神話級の代物だと、瞬時に見て取った。

「あ~げない!
頼り過ぎはよくない」
 ケーンは指輪をすぐさまアイテムボックスにしまった。

「そう言えばケーン、お主、どこからアイテムを出しておる?」
 マリアは、ふと気づいて聞いた。

「マリアさん、気にしちゃ負けですにゃ~。
ご主人様は、なんでもアリですにゃん」
 ミーちゃんは、ケーンに寄り添って、彼の腕に頬すりすり。

「たしかにな。考えるだけアホらしい。
おっ、この指輪、思ったとおり、なかなかのものじゃ!」
 マリアは、ケーンからもらった指輪を、左の薬指にいれていた。

すると、枯渇しかけた魔力が、みるみる回復していく。

「マリア、君の攻撃魔法は一流だ。
だけど、回復と補助魔法は、からっきしだろ?
今夜は先約があるけど、明日にでもしごいてやる」
 ケーンは、マリアに水魔法のリカバーと、身体強化魔法をほどこした。

「お、お、お~~~!
疲れがとれる!
体が軽い!」

「冒険者にとって、火力より、回復や身体強化魔法が、より大きな武器となる」

「うむ。納得じゃ。
ケーン、わらわの指導を、任せてもよいぞ。よきにはからえ」
 どこまでもかわいい、のじゃロリ少女だった。


 ダンジョンを三分の一ほど進んだ、セーフティゾーン。ケーンは休憩を指示した。

 当然ながら、マリアの息はあがっていた。ミーちゃんは、神装備の恩恵で、まだまだ余裕がありそう。

「ケーン、そろそろ最奥部も近いのか?」
 マリアは、ぐったりした顔で聞く。

「最初に言った通り、このダンジョンは一層しかないけど、やたら長いんだ。
まだ三分の一ぐらい」

「今のところ、オークやリザードマンしか出てきてないが。
最後までこんな感じなのか?」
 マリアがさらに聞く。

「これも最初に言った通り。このダンジョンは、耐久力を鍛えるため、光の女神が用意した。
ボスモンスターまで、ずっとこんな感じ」
 ケーンは、ポカ〇を出しながら答える。

「ちべたい!
これはなんじゃ?」
 マリアは、アルミ缶入りのポカ〇を受け取った。

「汗の成分に近い飲み物だよ。
こうやって開けるんだ」
 ケーンは、プルトップを開けて、ミーちゃんに渡す。

「これ、汗をかいたとき、超おいしく感じられるのですニャン」
 ケーンからポ〇リを受け取り、ミーちゃんは、ごくごくと飲み干す。

「猫娘よ。お主はケーンのなんなのじゃ?」
 マリアが、遠慮気味に聞く。

「ペット兼、メイド嫁ですニャン」
 ミーちゃんは、あっさり答える。

「さようか……。
ケーンと、どのように知り合ったのじゃ?」

「貧乏だから、お水をやってたですニャン。
ご主人様は、なぜだか気に入ってくださって」

「フム……。
ところでケーンよ。
わらわは、……、その~……。
何回ぐらい、相手をすればよいのじゃ?
なんというか、指導料?
それに、この指輪」
 貴族社会で生まれ育ったマリアにとって、無償の親切などということは、全く考えられなかった。

 自分が代償として、ケーンに提供できるのは体だけだ。

ケーンも当然自分の体目当てだと、思い込んでいた。

「もちろんマリアはお気に入りだけど、指導料や指輪の代償はいらない。
俺は嫁しか抱かない。
嫁になる気になったら言ってよ。
その時は、思い切り抱かせてもらう」

「フム……。
案外身持ちが固いのじゃのう。
猫娘一筋か……」

「嫁はミーちゃんの他にも、たくさんいるよ。
マリアが知ってる範囲なら、ジャスミンとアリス」

「なん…じゃと?
ヤリチン?」

「そのとおり!
エッチとバトルは、俺の生きがい!」
 すがすがしいまでに、開き直ったケーンだった。

「ところでマリアさん。
どうして冒険者に?」
 愕然と肩を落としたマリアが気の毒で、ミーちゃんは話題をそらした。

「詳しくは話しとうない。
兄から手切れ金を渡され、家から出た。
はっきり言えば、生活のためじゃ」
 マリアは自虐的な笑いを浮かべ、そう答えた。

 キタ~~~!
 のじゃロリに加え、追放系属性! メガネっ娘属性は、個人的な好みだけど。

 ケーンの触手が、いやでもうごめく。

 いや、耐えるんだ、俺!

 代償としてのエッチなんて、不本意だ。それに、マリアをエルファード艦隊討伐につれてはいけない。

 マリアは、冒険者として自立することを求めている。アリスと同じように。

「マリア、アリスのパーティに、入るのは間違いない?」
 
「もちろんじゃ!
ジャスミンもいるし、ライラックギルドでも赤丸急上昇と聞く」

「あ~……、ジャスミンは、一年ぐらいで、二年ほど抜ける。
ジャスミンがいなくても、あのメンバー、頼りになると思うぜ」

「抜けるのか? なぜじゃ?」

「俺や他の嫁と、遠征に出る」

「そうか……。
二年なら、嫁を放ってはおけぬな。
アリスはどうするのじゃ?」

「アリスの腕は、まだまだだから。
腕を磨きながら、待つと言ってくれてる」

「さようか……。まあ、アリスも若いし、二年くらいなら待てるであろう。
アリスのことは、わらわに任せるがよい!」
 小柄で童顔なわりに、ボリューミーなおっぱいを、これでもかと張るマリアだった。

この子、欲しい! 絶対落とす!

固く決意したケーンだった。

「アリスを守ってもらえるなら、頼みがある。
今は宿暮らしだろ?
アリスと同居しないか?
古いけど、空いている家がある」
 ケーンは、そう提案した。実はレミの伯母が営んでいた薬屋、現在は無人なのだ。

 ギルドへのポーション卸は、ミーちゃんが継続しているが、みんな宇宙旅行に出かける。
 アリスの副業に、ポーションの卸を任せるつもりだったが、一人暮らしさせるのもどうかと思う。

 アリスとパーティメンバーを、同居させるのも問題がある。キキョウの家の地下にある、ポーション製造システムを、嫁以外に教えるつもりはないから。
 同居していたら、多分副業を隠し切れないだろう。

 ケーンは、マリアも嫁にするつもりなのかって?
 
もちろんですとも! こんなおいしすぎるターゲット、見逃せるケーンではありません!

「乗った! 実は宿暮らし、うんざりしていたのじゃ!」

 おいしすぎる獲物は、網の中へ入ってしまった。
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