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154 のじゃロリはいじってこそ価値がある

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 ケーンは、ミーちゃんと、のじゃロリ魔法少女を伴い、「長い長いダンジョン」に転移した。


「どうして転移魔法が使える!
おぬしは聖神女か!」
 のじゃロリ少女は興奮して叫んだ。

「聖神女の転移魔法とは違ってるよ。
一度行った所にしか転移できない」
 ケーンが残念そうに答える。

「そうか…それは不便じゃ…なわけあるか!」
見事なノリツッコミで、マリアは地団太踏む。王立魔法学校屈指の秀才であった彼女ですら、転移魔法は、挑戦するという発想すらなかった。

一般的な魔法使いにとって、転移魔法は禁呪に近い魔法なのだ。

かわいくいじける彼女の名前は、マリア・クリスティ。王立魔法学校を中退し、冒険者登録をしたばかりだった。

 当然Fランクだが、魔法学校でも一二を争う秀才。プライドだけは天井知らずに高い。

 そこで、いきなり赤の森にチャレンジ。強いモンスターに遭遇し、中位魔法を撃ちまくった。当然のごとくあえなく魔力切れ。

さすがにまずいと気づき、助けられたアリスのパーティに加わろうと勝手に決めた。

アリスのパーティは、現在Dランクだ。新人の自分が加わっても、あまり無理はないだろう。
それに、なんといっても、ベテラン冒険者ジャスミンの存在が心強い。


少し落ち着いたマリアは、ミーちゃんの装備に気づく。いつの間にか、変わっていた。

「ケーン、なんなのじゃ!
猫娘のその装備!」
 マリアは肩を震わせて抗議。

 ピンクのフリフリミニメイド服。胸元きっちりの白のブラウスに、ピンクの大きなリボンネクタイがアクセント。すそに黒猫の刺繡が入った、白のエプロンがかわいい。
白のニーハイソックス。茶色のハーフブーツには、白い羽が一対生えている。おなじみの天使の羽ブーツだ。
超かわいいだけに、余計に腹が立つ。

ダンジョンに挑む装備じゃない!

「一見紙装甲?
だけど、実は神装甲!
うそだと思うなら、御自慢の魔法で攻撃してみろよ」
 ケーンは、のじゃロリ少女をあおる。

「わらわはこう見えても、魔法学校一の攻撃魔法使いじゃぞ!
ホントに攻撃するぞ!」
 マリアは、怒りで顔を真っ赤にして言った。

「どうぞ」
 ケーンは涼しい顔で応える。

 ミーちゃんは、顔を引きつらせる。

ケーンさん、信じていいんだよね?
 
「マジでやるからな?」
 のじゃロリは、少し腰が引けた。人間に…獣人だけど…、魔法攻撃をぶつけた経験がなかったから。

「フッ、だからやってみろよ」
 ケーンは鼻で笑った。

「どうなっても知らんぞ!
アイスジャベリン!」
 マリアは、やけくそで中級魔法を放つ。長さ約二メートル、一握りもありそうな太さの、氷の槍がミーちゃんを目掛け……、体にあたる寸前で消失した。

「うそ~~~!」
 マリアとミーちゃんは、思わずそう叫んだ。

「イージスの指輪だけでも、やわな攻撃は通らない。
後は推して知るべし?」

「イージスの指輪!
イージスシリーズは、国宝…いや、神話級のアーティファクトではないか!
どこで手に入れた!」
 マリアは、小さな体を震わせて叫んだ。聖神女だけが光の女神に授けられると、風の噂で聞いている。

「ないしょ。
さあ、行こうか!」
 ケーンは、あっけに取られていたミーちゃんの肩を抱いて、ダンジョンに入った。

 あやつ、何者だ? 

マリアは、頭の上にハテナマークをいくつも飛ばし、ケーンの後を追った。


「このダンジョンは、名前の通り超長い。
出てくる魔物は大したことないけど、時間はかかる。
つまり、耐久力勝負のダンジョンだ。
魔力の配分、間違えるな」
 ケーンは、マリアに注意を与える。

「ケーンさん、こんなスティックで戦えるものなんですか?」
 ミーちゃんが、恐る恐る聞く。

ケーンから与えられた武器?は、長さ四十センチ、親指の太さほどの、スティックだった。
頭に猫の手の飾りがついている。肉球がふにゅふにゅで気持ちいい。

「ここのダンジョンボス、オークキング程度なら、一撃で倒せる。
敵の頭をめがけて振ってみろよ。
当てる必要はない。
有効射程五メートルだ。
マリアに当たらないように。
おっと、多分オークかな?
一体だからミーちゃんに任せる」
 ケーンがあっさり応える。


 ズン、ズン、ズン。重量感ある足音が迫る。

 マジでオークだ!

 ミーちゃんは、体をこわばらせながらも身構える。

 こ、怖いんですけど!

 ケーンさん、信じていいんですよね?

 オークがいっそう迫る。射程五メートルとケーンさんは言った。もう少し……。

 今だ! 
 ミーちゃんは、目を固く閉じてスティックを振った。

 シャー! 

 スティックから、黒い光の爪が三本伸びて……、オークの頭は三等分された。総子のフレア斬に、インスパイアされた武器。闇魔法でアレンジしてみました。
 もちろん、フレア斬と比較したら話にならない威力だが、このダンジョンに出てくる魔物の装甲程度なら、十分以上話になる。

「うそ~~~!」
 ミーちゃんとマリアは、思わず叫んだ。

「その武器、名前はまだない。
ちょっとしたものだろ?」
 ケーンが趣味で作ったその武器は、国宝級の代物。魔力や攻撃力に乏しい者でも、きわめて扱いやすい。
 素人さんの護身用武器としては、最高峰と評していい。

 イージスの指輪は、ミレーユに作ってもらったけど。神話級の装備は、まだケーンに作れなかった。


「えい! えい! え~~~い!」
 調子に乗り切ったミーちゃんは、出てくる魔物をもれなく葬っていく。
 ダンジョンの魔物は、それほど血が飛び散らないし、内臓・脳みそぐじゅ、なんてことにはならない。戦闘超初心者であるミーちゃんも、ほとんど抵抗を感じなかった。

 もちろん、フィールドでは、全然話は違うのだが、ミーちゃんは戦闘タイプの嫁でない。
 レベリングの目的は、基礎体力の充実と、一人のときでも身の安全を最低限?守れることだ。

 獣人はとにかく蔑まれやすい。それに、なんといっても超かわいいしね!

「なあ、ケーンよ。
わらわのレベリングでは、なかったのか?」
 マリアがジト目でケーンをにらむ。なにせ、魔法を準備する前に、ミーちゃんが全部倒してしまうのだ。

「さっきから思ってたんだけど、魔法学校の秀才って、その程度なの?」
 ケーンは、やれやれ、という顔で応える。

「その程度とは、どういうことじゃ!」
 マリアは、また興奮して地団太踏む。ケーンがわざとあおっているのは、その様子が、なんともかわいいからだ。

「こういうことなんだけど」
 ケーンが、ミスリルの剣を一振り。光の矢、炎の矢、氷の矢、雷の矢。四本の矢が、文字通り矢継ぎ早に放たれた。
四体のリザードマンの硬い装甲を、矢は突き破った。

「無詠唱で…四属性を……。しかも、猫娘をよけた……。
お主、なにものじゃ~~~!」
 マリアは、小さな体全体で叫んだ。

「ボクはケーン。犬じゃないやい!
知らなかった?」
 ケーンは、マリアいじりを、やめられそうになかった。
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