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150 エルフ攻略へのファーストステップ

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 ケーンとエミリーは、でっかいスクリーンが備えられた部屋で二人きり。
スクリーンには、アンジェラが映し出されている。

「きれいな星だね。
深い緑色の宝石みたいだ」
 ケーンが、隣のシートのエミリーに語りかけた。ケーンの父ちゃんの星は、青く見えるという。
アンジェラは、魔素の影響で緑色に見える。

「初めて見ました。
あんな美しい星に、住んでるんですね」
 エミリーは美的な感動が、枯れているわけではなかった。ケーンは少しほっとする。

「自分が住んでる星を、外から見るなんて、普通できないんだけどね。
大体、アンジェラという名前さえ、普通は知らない」
 
「それはそうですね。
私も初めて知りました。
というか、自分が星に住んでいるということ自体も」
エミリーは、心から感動していた。自らが住む星の美しさに。

そして思う。あの星を奪おうとする侵略者は、絶対許せない。

「あのさ、『仕方なく嫁になる』って言ったよね?
無理しなくていいから。
ただ、家族には、なってもらいたい」

「そんなに無理ではないんですけど。
みなさんと一緒にいたら、メイサ様と二人でいる以上に、安心できます」

「そうか……。それならいいんだ」

「はい。あんまり興味はないでしょうけど、抱いてくださってもいいですよ」

「俺に興味を持たれる努力、してみる?」

「そうですね。頑張ってみます」

「頑張らなくてもいいよ。
とりあえず、スキンシップしてみようか?」

「はい。お嫁さん達、みんな楽しそうです。
ちょっぴりうらやましいかな。
そんな気分もあるんです」

 エミリーの反応に、なんだかいけそうな気がしてきたケーンだった。


 エミリーとスキンシップしよう作戦、第一弾。

 ケーンは、「あ~ん」イベントを、仕掛けてみようと思った。その前に、二人でクッキング。

エミリーは、なかなか料理上手だと、ケーンは聞いていた。ケーンもやろうと思ったら、一流シェフ並みの腕を持っている。

「父ちゃんが生まれ育った日本では、嫁心得に『三つの袋をつかめ』ということわざがある。
オフクロ、イブクロ、給料ブクロ。
まず姑にうまくこびて、嫁ぎ先に溶け込む。
料理の腕で、夫の心をつなぎとめる。
そして、家計をがっちり握れ、ということだね。
かなりアナクロ発想だけど。
ちなみに、給料袋の代わりにタマブクロ、なんていうお下品な言い方もある」

「タマブクロ?
あ~!
ケーンさんについていた、あれですか?」

「そうだね……」
 ケーンは笑ってしまった。お下劣ジョーク、全然通用せず。即物表現で見事にスルーされた。

「で、何を作るんですか?」
 エミリーは、にこりともせず聞いた。

 ケーンは思う。やっぱり最大の強敵だ。

「イブクロつかみの定番肉じゃが。
料理初心者でも作れるし、煮物は家庭を感じさせるから」
ケーンはアイテム庫から、材料を取り出す。

王宮直通のアイテム庫が、どれほど離れたら使えなくなるか、それは研究テーマの一つでもある。
ちなみに、ミレーユが王宮直通のアイテム庫を開発したのは、前回の討伐の後だったらしい。


ケーン指導の下、エミリーは肉じゃがを完成。味付けだけはケーンが行った。

「味見してみる?」
 ケーンは、じゃがいもを菜箸ではさみ、エミリーの口元へ。

 エミリーは大きく口をあ~ん。
「スキヤキに少し味が似てますね?
あれよりあっさりしてるけど。
おいしい」
 エミリーは、そう感想を述べた。

「しょう油ベースの甘辛味だから。
単純な料理だけど、家庭によって、味付けは変わるみたい。
この味は父ちゃんの家の味。
いわばお袋の味だね」

「お袋ですか。
子宮のイメージでそう呼ばれる?」

「それもあるだろうけど、多分包み込むイメージじゃないかな?」

「なるほど。いい言葉です。
タマブクロより」

 ケーンはびっくり。エミリーが下ネタジョークを言った!

 多分ジョークだよね? 表情は変わらないけど。

「エミリー、今度は俺にあ~ん」
 ケーンは、おねだりしてみた。

 エミリーはケーンから菜箸を受け取り……。

「無理です!
どうやったら、二本の棒でつかめるんですか?」
 箸に慣れてないエミリーは、ジャガイモがはさめない。

「刺してみようか?」

「あ、なるほど。箸はフォークの代わりにもなるんだ?
だけど、フォークの方が、刺しやすくないですか?」

「フォークでもいいんだけどね。
だけど、あ~んイベントは、同じ道具を使う。
これ重要!
日本には間接キスという発想がある。
唇チューに至る前段階?
それでときめくらしいよ」

「へ~……。
そんなのでときめくんですか?」

「だね……」
 相変わらず即物オンリーのエミリーだった。

そして、ケーンの恐れた通り、あ~んイベントは、淡々と進行した。ペットのエサやりより味気ないかも……。


「次、混浴いってみよう!
なんといっても裸のお付き合い!」
 機械的あ~んイベントを終え、ケーンは最終手段を提案した。

「メイサ様と温泉で、洗いあっていましたね。
メイサ様もケーンさんも、欲情なさっていたように見受けられました。
やってみましょう」
 ケーンはエミリーと、何度か混浴したことがある。したがって、エミリーの裸体は目撃したが、正直欲情はそそられなかった。
きれいではあるが、まるで大理石の裸婦像って感じ?

しかも、幼児体型をそのまま引き延ばしたような。つまり、女性的な曲線美に乏しい。パーツは、たしかに女性だね、という感じ?


ケーンの要望で、急遽夜の王宮から取り寄せた浴室ユニット。全面宇宙空間を映したリアルプラネタリューム。
これ以上ないロケーションは整えられた。


「洗ってよろしいでしょうか?」
 エミリーは、両手をせっけんで泡立ててそう言った。

「やさしくしてね」
 ケーンは潔く?応えた。

 エミリーは、混浴時のメイサを思い出し、ケーンの裸体に、おもむろに手を這わす。

 なんだろう? 全然反応しない……。ケーンは不思議に思った。自らの御子息は大人しいまま。やさしく洗われても。

「やっぱり私、ダメなのでしょうか?」
 エミリーはしょぼん。ケーンの好色ぶりは、嫁たちから散々聞かされている。

「あのさ、思うんだけど。
別に性的なつながりがなくても、いいんじゃない?
おいで」
 泡だらけのケーンは、両腕を広げる。

「はい」
 エミリーは、ケーンの腕に包まれる。

 うん。気分は悪くない。なごむ……。エミリーは、ケーンに裸の体をいっそうくっつける。
 温かい。心臓の鼓動が伝わってくる……、って…あれっ?

 どういうわけだか、ケーンの一部が反応し始めた。

 うれしい! エミリーは、いっそう体を押し付ける。ケーンのごく一部は、一層強固に。

 エミリーは、体を揺すってみる。なんだか変な感じ……。硬いけど、どこかしら柔らかい。

 ケーンは少し体を離し、エミリーの目を見つめた。エミリーは、上目遣いでケーンを見る。
 ケーンは、エミリーの目の中に、かすかな欲情の光を認めた。

 そっと口づける。

 ぎこちないながらも、エミリーは口づけに応え、腕の力を強める。

なんだかいけそうな気がする。そうか、エミリーは、俺を受け入れ始めた。
俺の息子は案外賢い。全然求めていないエミリーに、反応しなかっただけなんだ。

だけど、焦ってはいけない気がする。ゆっくり解きほぐしていこう。

エミリーが、真に求めるまで。

ゴーイングマイウエイのケーンも、少し大人になれたようだ。
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