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139 お前何者だぁ~~~!

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その後、ケーンと正義は、二度戦闘を行った。装甲リザードマン二頭と、ハイ灰ウルフ七頭。

いずれもケーンが、あきれるほど見事に、弓で援護してくれた。そして、とどめは必ず正義に譲ってくれた。

戦闘後の部位採取も、ケーンがこなしてくれた。リザードマンの装甲やハイ灰ウルフの毛皮は、かなり高く売れるはずだ。

戦いやすい。それが正義の偽らざる実感だった。戦闘を重ねるにつれ、自らの筋力が高ぶり、俊敏性が研ぎすまされていった。

それまで、半ば力ずくの打撃攻撃だった剣技も、形になってきた。

チャラいトリプルSの冒険者と、組んでいたときは、おこぼれにあずかっていただけ、という印象。

女の「おこぼれ」を勧めてきたのには、超むかついた。

もったいない気もしたが……。

あの女神官は、やけに偉そうだった。

回復魔法やバフ、魔法のシールド、いざというときの光魔法は、見事というしかなかった。

だが、「守ってさしあげてますのよ」感も、ハンパなかった。

義正は戦闘を「楽しい」と感じたことはなかった。それが、この高揚感はなんだろう?

義正は、ハイ灰ウルフの皮を、はぎ終えたケーンを見た。

ポカ〇飲んでるし……。

お前、何者なんだよ~~~!


 帰り道。正義は疲れ果てていたが、ケーンは元気そのもの。とてもDクラスの体力だとは思えない。

弓や剣の実力。火魔法の高威力。素材回収の手際よさ。絶対高位の冒険者だ。

どうして俺をパーティに誘った? ケーンなら、どんなパーティでも喜んで迎えるだろう。魔法のバッグも持ってるし。

正義は、職務質問したい衝動にかられた。今は警官じゃないけど。

「なあ、ケーン、真面目に答えろ。
お前、何者なんだ?
シャドーの手先か?」
 クオークの城壁が遠くに見えたころ、正義はそう聞いてみた。

「シャドーじゃないよ。
お前のこと気にかけてる、ある人に頼まれた。
お前の潜在能力はピカ一だ。
黙って一週間、俺の指導を受けろ」
 
「俺を気にかけてる人?
教会関係者か?」

 ケーンは、少し迷った。自重しきれなかった自覚はある。正直、自重する気もなくなっていた。怪しまれても当然だ。

めんどくさいから、少し開き直るか。

「お前をこの世界に召喚した人…、つまり、光の女神だ」

「はあ?」

「別に信じなくてもいい。
俺はお前の想像もつかないような、修行を積んできた。
黙って修行を受けろ」
 ケーンは、それ以上説明する気はなかった。かたくなに拒まれたら仕方ない。

 正義は、何か言いたげな表情だったが、黙ってうなずいた。

ケーンは、この世界で生きていくため、これ以上ない指導者だと直感したから。
 
「俺は人間関係で小細工は苦手だ。
細工物は超得意なんだけどね。
めんどくさいから、転移魔法使うぞ」
 ケーンは魔法陣を描き、正義と共にギルドへ跳んだ。


 ギルド前。正義は二度目の転移魔法を体験し、青ざめていた。

存在が消えて、また存在する違和感。

 一度目はもちろん召喚された時。

転移魔法は、この世界でもごく限られた者しか使えないと聞いている。あの女神官でさえ使えなかった。

「お前、何者なんだよ~~~!」
 正義、心の叫び。

「合コンやるぞ!
俺、実はクオークで結構有名人なんだ」
 ケーンは、立てた策略にこだわる、ちっちゃな人間ではなかった。
 いい加減だともいえるが。


「セイギクンの、ちょっといいとこ見てみたい!
イッキ、イッキ、イッキ、イッキ!」
 ギルド直営お食事処。ケーンは、例の女冒険者たちと合コンをしつらえた。
 正義も、いやいやを装って参加。地球の日本では「アルハラ」そのもののノリで、ケーンは正義をあおる。

「正義、飲みま~~~す!」
 ごく、ごく、ごく……。正義はジョッキになみなみと注がれたワインをあおる。

 正義は地球年齢で三十歳のとき召喚された。

男子高出身の柔道部、体育大学で全日本選手権個人の部優勝。交番勤務を経て、所轄のマル暴担当部署に配属。つまり、ガチ体育会系のエリート?コースを歩んできた。
コンパに臨んだら、アルハラ・パワハラどんとこいの経験値を積んでいた。
 ましてや、彼女いない歴三十年。海千山千の女冒険者たちでも女は女。

 つまり、舞い上がって調子に乗り切っていた。

ワイン程度のアルコール度数なら、光の女神が改造した肉体だから、どうってことはない。

「きゃ~! すてき~~~!」
 女冒険者たちは、嬌声をあげる。女冒険者たちからしたら、正義は、恩義のあるケーンの連れだ。
それに、最高級ポーションセットを、それぞれ一ダースわいろにもらっている。

 正義はお堅すぎて面白みに欠けていたが、しだいに、いい感じにこなれてきた。
 つまみ食いならいいかも、とは、女冒険者たちの感想。

「おみごと~~~!
次はポッ〇ーゲーム、やっちゃう?」

「ポ〇キーゲーム?」
 女冒険者たちは、好奇心の目をケーンに注ぐ。

 正義はごくりと唾を飲み込む。あの禁断のゲームじゃないか!

「じゃ、じゃ~ん!
細くこんがり焼かれたプレッツェルに、チョコを優しくコーティング!
試食してみる?」
 ケーンが持つワイングラスには、某有名菓子(もう某と言えないかもしれないが)が。女冒険者たちは一本ずつ抜いて、カリ!

「おいし~~~!
これ、どうするの?」
 リーダーが、ケーンに聞く。

「よし、やってみよう。
マリンちゃん、ポッキ〇、の端をくわえて」
 ケーンは、一番のお気に入りマリンちゃんを指名。おっぱいは「ワリンちゃん」だけど。

「うん」
 おっぱいはワリンちゃんのマリンちゃんは、指示通り端をくわえる。

「同時に食べる!」
 ケーンはマリンちゃんの頭を両手で包み……。かり、かり、かり……。

 ちょぴり、ちゅっ!

「きゃ~! チューされちゃった!」
 マリンちゃんは、両手で頬を包み、白々しく叫ぶ。

 正義は思う。ケーン、お前、日本生まれだろ! しかも、憎むべきリア充属性だ!
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