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133 落としどころ?

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 ケーンはキキョウを始め、ユリ、総子、メイサ、テレサを引き連れ、リッテン伯爵邸の正門前に。

「ケーン、ほんまにやる気か?」
 ユリが苦笑して言う。ケーンの気持ちはわかるが、正面切って軍の最高幹部に挑んだら、大事になるのは避けられない。

「もちろん!
リゾット王がぐだぐだ言うようなら、騎士団も壊滅させる」

 実はリッテン伯爵、監獄島送りぎりぎりで、目こぼししていた貴族だった。大国リゾット軍部の実権を握る存在を、お縄にするのもどうかと思い見送った。

 体を張って国を支える冒険者をぞんざいに扱う、その思いあがった貴族根性、断じて許しがたし。

「冒険者のケーンだ!
リッテン伯爵に面会を乞う!」
 ケーンは守衛にそう言い放った。

 守衛は、びっくりして邸内に駆け込んだ。

 数分後、門が開いた。数十名の槍を構えた騎士たちが、槍衾を作る。

「無礼者め!
ギルドでのいきさつ、聞いておる!
伯爵に楯突く者は反逆者とみなす!」
 少し偉そうなおっさんが、槍衾の向こうで叫んだ。

「おもしろい! ドンパチ、やってやろうじゃん!」
 ケーンは、「宍道湖」と彫ってある木刀を構える。「洞爺湖」ではないからね!
 それに、着流しの片肌の脱ぎ方も、逆の方だからね!
 髪も銀色じゃないからね!
 なんのこっちゃ? よくわからない方は流してください。

 ある作品に、インスパイアーされていることは事実だと付記する。

 ドカッ! ガスッ! ボコッ!

 ケーンは木刀で騎士たちを叩きのめす。不意のカチコミに、騎士たちは鎧を着用してなかったが、瞬く間に戦闘不能。

「おのれ~~~!」
 偉そうなおっさんは、剣を構えた。

 おっ、意外と根性あるじゃん。ケーンはおっさんをちょっぴり見直した。

 じりっ、じりっ……。おっさんは剣を構えたまま後ずさる。

 そして……、きびすを返し、邸内に駆け込もうとする。

 やっぱり根性なかった!

 タタタタタ! ヒュッ! シュタッ! 

キキョウがおっさんを飛び越え、行く手を遮る。

「ケーン様の正妻キキョウ!
これを伯爵に見せるがよい!」
 キキョウは、ノリノリ。伯爵の不正の証拠書類を突きつける。

その内容は、収賄と息子たちの非行のもみ消し。
 少なくとも、公になれば、総督の地位は危うくなる。

 おっさんは、キキョウからひったくるように書類をつかみ、邸内へ駆け込んだ。

「ケーン、なんなら竜の姿に還ろうか?」
 メイサがケーンに腕を組んで言う。

「その必要はない」
 ケーンは空を仰いだ。大型船並みの飛空艇が、影を落とした。夜空城の宙船(そらぶね)だ。

 あれが来たということは、父ちゃんのオートマタたちが、ごっそり乗っているはず。宙船の火力は伯爵邸に過剰だが、自分たちとオートマタがちょっぴり暴れたら粉々にできる。

 母ちゃん、過保護なんだから……。今なら俺一人でも、伯爵の私兵なんてボコれるのに。
 気合入れたら、四つの騎士団を壊滅させることも可能だろう。

 まあ、そんな事態を恐れての介入だろう。

 圧倒的な力で、戦う前にねじ伏せる。一番穏当な収拾のつけ方だ。

 そう思うものの、ケーンは若干不完全燃焼だった。

 叩いて埃が出ない貴族なんて、ほぼほぼいない。問題は「誰が」「どのような埃」を出したかだ。

 伯爵は宙船を一目見て、己の運命を悟った。つまり、ジエンド。

 夜の女王の眷属が収集し、光の女神の神託によって裏付けられた不正の証拠。リゾット王国としても、握りつぶせる余地はなかった。

 リッテン伯爵の運命は、言うまでもないだろう。男爵に降格され、一地方領主として余生を送ることとなった。

 ケーン的には、軽すぎるだろ、という心境。だが、ど派手な手段を選んだのは自分だ。
 これまで腐敗貴族たちの粛清は、隠密裏に粛々と遂行した。リゾット王国の体面を考慮したら、このへんが落としどころだろうと、納得するしかなかった。
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