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126 ドラゴン討伐と反省会

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 翌朝。ケーンは嫁たちに集合をかけた。

「ドラゴンの居場所は感知した。
あの山の中腹。
洞窟か穴を掘ったのか、隠蔽の結界もガチガチに張ってる。
魔力感知レーダーでも、発見できないほどの用心深さだ。
つまり、やつは臆病だ。
恐れることはない!」
 ケーンは、嫁たちに檄を飛ばす。

 嫁たちは思う。たしかに……。今のケーンなら、さもありなん。

「ドラゴンの最大火力は、言うまでもなくブレスだ。
まず俺が口を叩く。
後は好きにかわいがってやれ。
以上!」

「了解!」
 力強く応える嫁たちだった。

「最大の目的は、総子ちゃんの経験値稼ぎや!
とどめは総子ちゃん!
ばっちり決めたり!」
 ユリが総子に告げる。

「諾!」
 総子は自信満々に応えた。

現在の総子は、火力においてキキョウに匹敵する。つまり、もう少しで、一人前勇者の域にあった。


その日の昼過ぎ。ケーンは「おすそわけ」のために、ピッコロへ跳んだ。
討伐した竜のうろこを何枚か、贈りたいそうだ。死んだ冒険者の家族に。
四十頭強のブラックウルフの素材だけでも、相当の金額になるが、四人で割ったら、十分な保障とは言えない。

嫁たちは、キキョウとユリのテントに集合。今日の反省会議。

「拍子抜けするほど、あっけなかったな」
 ユリが微妙な表情で、そう切り出す。最強種であるはずのドラゴンと、わずか一分弱の戦闘で決着がついた。

 ドラゴンのねぐらは、天然の洞窟を魔法で拡張強化したと思われる。隠蔽魔法で気配を消したケーンとキキョウが、先陣を切って急襲。

 シッポを除いても、体長五メートルを超す、ドラゴンの巨体では、狭い洞窟内で十分戦闘力を発揮できなかった、ということもあるだろう。
 だが、それだけの問題ではなかった気がする。

 ケーンは、黒い光の矢を放ち、問答無用でドラゴンの口を焼いた。

狭い天然の洞窟内でブレスを吐いたら、ドラゴンも無事では済まない。だが、とっさにブレス攻撃をされたら、ヒカリちゃんのジャンヌが張ったマジックシールドでも、洞窟内にこもった高熱を防ぎきれないだろう。

つまり、ケーンの先制攻撃は大正解。

ケーンが魔法を放った次の瞬間、キキョウは、ドラゴンを満身創痍に切り刻んだ。

武器は月影刀。夜の女王に授けられた宝剣。与えたダメージに比例し、体力や筋力だけでなく、魔力を削り取る。

後は総子が、フレア斬一閃。ドラゴンの首はぽろり。
フレア斬の真の恐ろしさは、刀身以上の範囲を切り裂けることにある。キキョウの斬撃と威力は同等でも、太い竜の首を落とせるほど、切断面は広がる。
フレア斬は、前に触れたとおり、光と炎の属性を持つ。これまでは一見炎属性単独と見まがう技だったが、今日は明らかに違って見えた。
強いて形容すれば、まばゆいほど輝く炎。ヒカリちゃんによれば、フレア斬の完成系は、超高熱の青白い光になるという。
そうなれば、間合いは全く量れなくなる。一言でいえば、超おっかない技なのだ。

結局ユリや、ヒカリちゃんのジャンヌの、出番はなかった。

一番時間をとったのは、ブラックの解体作業だったこと、付記しておく。


「ケーンの攻撃魔法、初めて見た。
光と闇の違いはあるけど、あれ、威力は私とどっこいどっこいよ」
 ヒカリちゃんのジャンヌが、あきれ顔で言う。

「私、ケーン様を見くびってたところある。
そんな自分を戒めるために、『様』をつけるようにしてたの。
今は、『様』と自然につけてしまう。
はっきり言えば、往年のケンイチ様以上ですか?」
 キキョウは、ヒカリちゃんのジャンヌをうかがう。

「魔法は確実だね。
多分、剣技や体術も。
一度能力を落としたこと、無駄ではなかったようね」

「ということで、私たちが今後注意すべきことは一つ。
油断大敵。
それだけは忘れんようにしとこ」
 
 ユリの言葉に、全員深くうなずいた。

「さてと、お仕事に帰るか……」
 ヒカリちゃんが、そうつぶやいた。

「ヒカリちゃんも、大変やな。
どんな仕事しよるんや?」
 ユリがなにげなく聞いた。

「今はわりと暇なの。
Aクラス以下低級ダンジョンの管理は、天使たちに任せられるし、召喚の仕事もない。
総子を召喚した時は大変だったけど」
 そう言ってジャンヌのヒカリちゃんは、総子とキキョウを見る。

総子は頬を赤らめうつむき、キキョウは苦笑を浮かべる。召喚時の総子のこだわり。キキョウのトリプルSダンジョンアタック。
それが重なってヒカリちゃんの過労につながった。そして、現在の総子とジャンヌ、さらにはヒカリちゃんの立ち位置につながる。

「ま、結果的によかったんやない?
瓢箪から駒、いうやつや。
そんで、最新の勇者様、どないな感じや?」
 ユリがヒカリちゃんに振る。

「それがね……。
今のところ唯一の悩みの種。
頑固すぎて融通が利かないというか……。
まあ、魔王側も今は積極的に動けない」

「上に立つもんも、大変やな?」
「そうなのよ……。
じゃ、次のエッチ当番に、またお邪魔するから」
 そう言って、ヒカリちゃんは天上界へ昇天した。
 
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