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96 ヒカリちゃんのケアを

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 魔王領国境沿いのクオーク平原。

勇者パーティ四人は、全裸になって野獣のように乱交していた。

周囲を取り巻くオークやハイオークと、彼らを指揮するオークキングが攻撃できないほど、異様な気が四人を取り巻いている。

ケーンとキキョウは魔物に襲いかかり、ヒカリちゃんのテレサは、強魅了状態の四人を回復させた。

ムサシに騎乗位でまぐわっていたメアリー。ライアンとバックでつながっていたリンダ。

四人は狂気と喜悦の表情のまま気絶した。

「こんなにひどい魅了状態は初めて見ました。
魔王の仕業としか考えられません」
 ヒカリちゃんは、つぶやくように言う。

「魔王はないと思うよ。
メアリーとリンダも魅了されてた」
 最後の一頭となったハイオークを倒し、ケーンが応えた。

キキョウはオークキングを仕留めたが、気絶した四人から目をそらした。
四人の表情を形容するなら狂気のエクスタシー。その言葉しか思い浮かばなかった。

「ですが、状態異常耐性を持つ四人が魅了されたのです。
魔王が更なる進化を遂げたとしか……」

 ミレーユが夜空城から転移してきた。

「魔王の娘の仕業です。
このおとしまえ、女王様と私たちに任せて下さい。
ヒカリちゃんは四人のケアを。
ケンイチ様は、いまだにトラウマを残しています」 
 その言葉を残し、ミレーユは転移した。

 テレサのヒカリちゃんは、自分を責めた。憑依状態が楽しすぎるから、ムサシたちをつい放置してしまった。
 もう少し早く気づいていたら……。

彼らを加護する女神失格ですね……。

「ケーン、キキョウ、少し離れた場所で警戒にあたって下さい。
あなたたちに、見られたくないでしょう」
 ケーンとキキョウはうなずき、ヒカリちゃんの要望に従った。


 ヒカリちゃんは、周囲に散らばるオークたちの死体を消し、四人に装備を着せた。

強結界を張り、周囲と隔絶した。

いわば擬似天上界を作り、テレサの肉体から抜け出した。

そしてリカバーの魔法を四人にかけた。

意識を取り戻した四人は茫然自失。

魅了されていた時の記憶は、残っているようだ。

純粋精神体となった光の女神は、四人にどう声をかけていいのかわからなかった。

多分どんな慰めの言葉も、力を持たないだろう。

「これからどうしますか?」
 女神の問いに、四人は答えられなかった。

「忘れろといっても…忘れられないでしょうね。
ミレーユが言ってました。
ケンイチもいまだにトラウマを残しているそうです。
あなたたちの心の傷は、ケンイチ以上でしょう」

「パーティを解散します。
しこりを残したまま、パーティを維持できませんから。
勇者を解任してください」
 ムサシは力なく応えた。

他の三人は、無言を貫くことで同意を示した。

「一か月後、もう一度確認をとります。
いずれにしても懲罰は下しません。
テリーヌの神殿前に送ります」
 女神はそう言って、四人と彼らの愛馬を転移させた。


「ヒカリちゃん、どうする?」
 テレサの肉体に帰り、結界を解除したヒカリちゃんにケーンは聞く。

「とりあえず一か月は、私たちで代行するしかないと思う。
夜の女王がおとしまえをつける以上、魔王もしばらく立ち直れなくなるでしょ?」
 ケーンとキキョウは、うなずいて同意を示した。

「ケーン様、ヒカリちゃんを」
 キキョウは、ヒカリちゃんの心境を慮って言う。彼女を取り巻く光のオーラが、やけに悲しそうに見える。

「いえ、わたくしは……」
 ヒカリちゃんは首を横に振る。

「いいから!
ヒカリちゃんは俺の嫁だ!」
 ケーンは、キキョウとテレサのヒカリちゃんの手を取って、別荘のテントに転移した。

 今ヒカリちゃんを、一人にしてはいけない。ケーンの思いはそれだけだった。


 メイサの別荘。現在ケーンと嫁たちの生活拠点はメイサの別荘となっている。なにせ露天風呂があるから。

ケーンはテントの中で、テレサのヒカリちゃんをケアしている。メイサの別荘は、それほど広くないし、テントの方がはるかに快適。

 キキョウは嫁たちに事情を報告。

「あんなに悲しそうで、弱々しいヒカリちゃんのオーラ、初めて見た」
 すべてを語り終えたキキョウは、そう付け加えた。

「テレサやジャンヌちゃんに憑依して、ケーンとエチエチ重ねるうち、人間臭うなった、ということやろな?」
 ユリは思う。ヒカリちゃんは、完璧なはずの最高神だった。以前の彼女なら、ためらいなくムサシを解雇していただろう。

「ヒカリちゃんは、ある意味弱い女神になってしまった。
だけど、今のヒカリちゃんには、ケーン様がいる。
ヒカリちゃんにとって、幸せなことだと思う」
 キキョウの言葉に、深くうなずく嫁たちだった。
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