改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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91 ドラゴンプリンセスの恋

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「なんで、なんで! ケンイチがこんなにひ弱なわけない!」
 人化したホワイトドラゴンは、自分の別荘へ帰りパニック状態。「やさしく」つかんだはずなのに、ケンイチと思い込んでいる人族は、血まみれでぐったりしていた。

「エミリー! どうにかして!」
 ドラゴンは、慌てて隣室に控える従者を呼んだ。

 
 ケーンは目を開けた。体中がずきずきし、力が入らない。

「気が付きましたか? 
主が大変失礼しました。
なにせ脳筋ですから」
 やけに長身で、耳の長い水色髪の美人さんが、ベッド際に座っていた。
エルフのようだ。全く思いがけない形の出会いフラグ。

目的のエルフだが、正直気乗りしない。あの無表情、父ちゃんのオートマタの方が、人間っぽい、みたいな?

「ホワイトドラゴンに、襲われた気がしたんだけど」

「我が主を呼んでまいります。
主に悪意はなかった。それだけはお含み下さい」
 エルフの女は、表情一つ変えずそう言い残し、部屋を出た。


「よかった~! ケンイチじゃないよね? あなた誰?」
 プラチナブロンドの超美人さんが、ドアを開け飛び込んできた。

こちらは感情が正直に表れていた。心底心配し、状況にとまどっていたことがうかがわれる。

彼女がしでかしたことなのだが。

「ケンイチの息子、ケーンです。あなたは誰?」

「ごっめ~ん! ケンイチと勘違いしちゃった。
てへ……」
 てへ、じゃないだろうが! 

超きれいだから許すけど……。

「レイサ様、カチコミです! 
レイサ様の結界魔法、あっさり破られました。
私ではとうていかないません!」
 黒焦げになったさっきのエルフが、部屋に飛び込んできた。ずいぶん頑丈なようだ。黒焦げは服だけだった。

もろにおっぱいが出ている。

だけど…ちっちゃ! 

誤差以上あると認められるから、ケーン的にかろうじてセーフ。

「なんだと~! いい度胸してるじゃん!」
 レイサと呼ばれた女は殺気だった。

「待って! きっと俺の嫁たちだ。
俺は無事だと伝えて」
 ケーンは苦笑して止めた。

「な~んだ。嫁がいるのか……」
 レイサは、がっくりと膝から崩れ落ちた。

ケーンの出会いフラグは、ビンビンに立っていた。


 レミとメイ以外の嫁は全員集合していた。

ジャンヌのヒカリちゃんが治癒魔法を施し、ケーンの傷は全快。

神聖魔法が使えないエミリーの治癒魔法は、自然回復力を高めるだけで、根治させるものではなかった。

「で、なんでケーンを拉致したんや?」
 ユリが土下座するメイサにそう聞いた。

「ケンイチと勘違いしちゃったの。
考えてみたら変だということ、さっき気づいた。
もう六十年以上前のことだし…」

 そう前置きし、メイサはケンイチとの出会いを語り始めた。

ケンイチはこの世界に召喚され、仲間を集める前、レベルアップの修行に取り組んでいた。

その修行の途中に出会ったのが、ホワイトドラゴンのメイサだった。
メイサはひたむきなケンイチの姿勢に好感を持ち、半年にもわたって彼の修行に協力した。

メイサ自身も幼竜で、人化の魔法も使えなかったが、時には稽古相手となり、時には魔物との戦いのバックアップをし、二人は気の置けないバディーだった。

メイサはいつしかケンイチを慕うようになり、恋心を抱き始めた。

だが、ドラゴンの体では、小さなダンジョンに潜れないし、当然セックスのお相手もできない。

このままではケンイチの修行の妨げになる。メイサは泣く泣く姿を消した。

成長すれば完全に人化が可能になるし、ケンイチの子供を産むこともできる。
その時にはケンイチの嫁になる。そう心に固く誓っていた。

お間抜けなことに、自分の成長の遅さと、ケンイチの老化ということが、全く頭になかったのだ。

五十年ほどでメイサは、人化の魔法が使えるようになっていた。

メイサは懸命になってケンイチをさがした。

彼女は、人間の町で情報を集めるという方法を思いつかず、ひたすら上空からケンイチを探した。

森で魔物の群れに襲われかけていた、幼いエミリーを助けたのも、ケンイチ探しの途中だった。

エミリーはメイサから話を聞いて、あまりにも一途な彼女の思いに、「探しても無駄ではないでしょうか」と言えなかった。

黙って脳筋主人の世話をし続け、今に及んでいる。

そして、別れたころのケンイチと瓜二つのケーンを発見し、後先考えず拉致に及んだというわけ。


「俺は今、モーレツに感動している! 
メイサ、父ちゃんは今、夜の王宮にいるよ。
夜の王宮に連れていこうか? 
子供はもう無理だけど」
 ケーンはメイサの手を取って、滝の涙を流した。

「子ども、無理なの? ケーンは?」
 メイサは茫然として聞いた。

「俺は今、避妊魔法を使ってエッチしてる。
その気になったら、ばっちり仕込めるけど?」

「私は竜王の娘なの。
竜族は極端に子孫を残しにくい。
ただし、人族との間では簡単に妊娠できるの。
しかも優秀な能力を持った子どもが。
私の父親も人族。
だから超優秀な私が生まれた。
私は王族の義務として、人族との間に子供をもうける必要がある。
ケーン、私にあなたの種をちょうだい!」
 メイサはケーンに抱きついた。

「もちろんOK! さっそく……。構わない?」
 ケーンは成り行きを見守る嫁たちに聞いた。

「勝手にせ~や。
心配して損した。
ほな盗賊団の片づけ、やってまおか?」
 半笑いでユリは他の嫁を促す。


「メイサさん、一つだけ聞きたい。
ケーン様の種だけでいいの?」
 キキョウが聞く。竜王のプリンセス。嫁に迎えるのもやぶさかではない。それが正妻としての考えだった。

「できたらケーンと一生添い遂げたい。
多分未亡人確定だろうけど、それは仕方がない」
 竜族の寿命は五百年以上。中には千年以上生きている者もいる。

バイオレットやガーネットの飲み友、古竜もその一人だ。

「ケーンは夜の女王の息子です。
嫁との子作りが終わったら、永遠の生が約束されています」
 ジャンヌのヒカリちゃんが言う。

「もしかして、光の女神様? まさかね……」
 メイサは今さらながら気づいた。ヒカリちゃんの圧倒的なオーラに。

「まさかもなにも。私はケーンの立派な側室です。
みんな、行きましょうか? 
ケーンは血を流し過ぎています。
後一日は安静が必要です。
その間、襲ってはダメですよ」
 ジャンヌのヒカリちゃんは嫁たちを促し、別荘を後にした。
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