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72 日輪刀と太陽剣スキル

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 ケーンは、総子のレベリングのため、Cランクダンジョンに付き合っていた。相方はいつもの通りユリ。そしてブラック&ホワイトのペガサス夫婦。
 総子は、まだFクラス冒険者だが、Sランク四人が付き添う。問題なくチャレンジ可能。
 そして、ケーンが見たところ、総子は既にBランクに届きそうな実力。
 天性の才に加え、日本でいたころのたゆまぬ鍛錬。さすがに星五つのキャラだ。
 もっとも、召喚候補者の「星設定」まで、ケーンの知るところではない。

「総子、来るぞ!
オーク五体。獲物は槍だ。
油断するな!」
 ケーンの言葉に、「諾!」と、総子は応える。

 総子はパーティの先頭に立ち、刀の鯉口を切る。光の女神から与えられたのは、三大名刀の一振り日輪刀。

 そして、総子に与えられた最強スキル名も「太陽剣」という。この世界の恒星は「ヒカリ」と呼ばれるが、被召喚者になじむ銘が付けられている。

 太陽剣スキルが最強たるゆえんは、炎と光属性の複合技「フレア斬」を放てる点にある。
 最強スキルであるがゆえ、実戦経験の少ない総子だから、まだその真価は発揮できない。だが、熟達すれば炎の剣と変わり、最終的には、長射程のレーザービームが、斬撃軌道に合わせ伸展する。

 光の女神的にも大サービスだ。そのスキルを与えるだけの器を、総子が持っていたからでもあるのだが。

 オーク五体が槍衾を作り直線的に迫る。この洞窟型ダンジョンはかなり広いが、五体横並びになったら、背後に抜ける隙間はない。
 まごまごしていたら、槍衾に囲まれる最悪の状況が生まれる。
 冒険初心者には相当以上に、厳しいシチュエーションだ。

「総子、二体引き受けようか?」
 さすがにまずいかもと、ケーンが提案する。
「大丈夫です」
 総子は冷静に応え、高速で踏み込み居合一閃。三本の槍の先が吹っ飛ぶ。次の瞬間、総子はジャンプし、オークの突撃をやり過ごした。
 そして、中のオーク三体の背後から三閃。三体の首が飛んだ。

 首無しオークの体を蹴って、左のオークにぶつけ、同時に右の槍先を切り飛ばす。
 余裕を持って、うろたえる左オークを袈裟懸け。横に飛んで右オークの背後に。
「じゃ!」
 ヒュン、ズバ!

「お~~~!」
 感動の声を漏らしたケーンたちだった。まるでベテラン凄腕剣士だ!
 さすが剣聖のスキルは伊達じゃなかった。現時点でも達人級だ。

「ホワイト、清浄の魔法を」
 ケーンが命じる。ダンジョンの魔物は、フィールドのそれほど、血や臓物はまき散らさない。
また、総子の技は確かで、返り血はあまりかかってないが、それでもね。やっぱり女の子だから。
ホワイトは一つうなずき、清浄魔法をかけてやる。

「ゴブリンとスライムは、何体か倒しましたけど……。
平気な自分が怖い」
 総子は血振りして納刀。オークの死体は銀貨を残して風化していった。

「敵に委縮したり、血を恐れるようじゃ、すぐに死んじゃうよ。
光の女神が召喚した勇者は、最初から戦いを恐れないように生まれ変わってる。
ただし、総子は勇者の中でも、多分規格外だろうね」
 ケーンは総子の華奢な体を、ぎゅっと抱きしめた。危険を大きく伴う戦闘を、総子は初めて経験した。

「そうなんですか……」
 総子はケーンに抱き付く。戦闘が終わった今の方が、なんだか怖い。

 自分が自分で、なくなっているようで……。

「光の女神、説明しなかったの?」
 ケーンが総子に頬ずりしながら言う。
「あ~……、結構忙しかったものですから……」
 肉体改造に夢中で、ろくに説明を聞かなかったのは自分だ。そのせいで、女神様の意図と大きな齟齬が生まれた。あれは黒歴史と言うべきだろう。

 まあ、結果オーライ。戦いが自己目的化する勇者業。側室としてケーンと共に生きる方が、はるかに幸せ!

 総子は、一人で魔物を倒し続けた。しだいに力がたぎり、スピードが増していく実感があった。

 勇者の成長速度は、一般人の十倍。そのようにできている。

 そして……、
「剣が炎をまといました!」
 日輪刀は、高熱を放つ能力を発揮した。総子が今倒したウエアウルフは、まるで豆腐を斬るようだった。

「フィールでは、なるべくそのスキル使わないでください。
多分素材回収ができなくなります。
ヒヒン……」
 ブラックが、悲しそうな顔でつぶやいた。
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