上 下
72 / 170

72 日輪刀と太陽剣スキル

しおりを挟む
 ケーンは、総子のレベリングのため、Cランクダンジョンに付き合っていた。相方はいつもの通りユリ。そしてブラック&ホワイトのペガサス夫婦。
 総子は、まだFクラス冒険者だが、Sランク四人が付き添う。問題なくチャレンジ可能。
 そして、ケーンが見たところ、総子は既にBランクに届きそうな実力。
 天性の才に加え、日本でいたころのたゆまぬ鍛錬。さすがに星五つのキャラだ。
 もっとも、召喚候補者の「星設定」まで、ケーンの知るところではない。

「総子、来るぞ!
オーク五体。獲物は槍だ。
油断するな!」
 ケーンの言葉に、「諾!」と、総子は応える。

 総子はパーティの先頭に立ち、刀の鯉口を切る。光の女神から与えられたのは、三大名刀の一振り日輪刀。

 そして、総子に与えられた最強スキル名も「太陽剣」という。この世界の恒星は「ヒカリ」と呼ばれるが、被召喚者になじむ銘が付けられている。

 太陽剣スキルが最強たるゆえんは、炎と光属性の複合技「フレア斬」を放てる点にある。
 最強スキルであるがゆえ、実戦経験の少ない総子だから、まだその真価は発揮できない。だが、熟達すれば炎の剣と変わり、最終的には、長射程のレーザービームが、斬撃軌道に合わせ伸展する。

 光の女神的にも大サービスだ。そのスキルを与えるだけの器を、総子が持っていたからでもあるのだが。

 オーク五体が槍衾を作り直線的に迫る。この洞窟型ダンジョンはかなり広いが、五体横並びになったら、背後に抜ける隙間はない。
 まごまごしていたら、槍衾に囲まれる最悪の状況が生まれる。
 冒険初心者には相当以上に、厳しいシチュエーションだ。

「総子、二体引き受けようか?」
 さすがにまずいかもと、ケーンが提案する。
「大丈夫です」
 総子は冷静に応え、高速で踏み込み居合一閃。三本の槍の先が吹っ飛ぶ。次の瞬間、総子はジャンプし、オークの突撃をやり過ごした。
 そして、中のオーク三体の背後から三閃。三体の首が飛んだ。

 首無しオークの体を蹴って、左のオークにぶつけ、同時に右の槍先を切り飛ばす。
 余裕を持って、うろたえる左オークを袈裟懸け。横に飛んで右オークの背後に。
「じゃ!」
 ヒュン、ズバ!

「お~~~!」
 感動の声を漏らしたケーンたちだった。まるでベテラン凄腕剣士だ!
 さすが剣聖のスキルは伊達じゃなかった。現時点でも達人級だ。

「ホワイト、清浄の魔法を」
 ケーンが命じる。ダンジョンの魔物は、フィールドのそれほど、血や臓物はまき散らさない。
また、総子の技は確かで、返り血はあまりかかってないが、それでもね。やっぱり女の子だから。
ホワイトは一つうなずき、清浄魔法をかけてやる。

「ゴブリンとスライムは、何体か倒しましたけど……。
平気な自分が怖い」
 総子は血振りして納刀。オークの死体は銀貨を残して風化していった。

「敵に委縮したり、血を恐れるようじゃ、すぐに死んじゃうよ。
光の女神が召喚した勇者は、最初から戦いを恐れないように生まれ変わってる。
ただし、総子は勇者の中でも、多分規格外だろうね」
 ケーンは総子の華奢な体を、ぎゅっと抱きしめた。危険を大きく伴う戦闘を、総子は初めて経験した。

「そうなんですか……」
 総子はケーンに抱き付く。戦闘が終わった今の方が、なんだか怖い。

 自分が自分で、なくなっているようで……。

「光の女神、説明しなかったの?」
 ケーンが総子に頬ずりしながら言う。
「あ~……、結構忙しかったものですから……」
 肉体改造に夢中で、ろくに説明を聞かなかったのは自分だ。そのせいで、女神様の意図と大きな齟齬が生まれた。あれは黒歴史と言うべきだろう。

 まあ、結果オーライ。戦いが自己目的化する勇者業。側室としてケーンと共に生きる方が、はるかに幸せ!

 総子は、一人で魔物を倒し続けた。しだいに力がたぎり、スピードが増していく実感があった。

 勇者の成長速度は、一般人の十倍。そのようにできている。

 そして……、
「剣が炎をまといました!」
 日輪刀は、高熱を放つ能力を発揮した。総子が今倒したウエアウルフは、まるで豆腐を斬るようだった。

「フィールでは、なるべくそのスキル使わないでください。
多分素材回収ができなくなります。
ヒヒン……」
 ブラックが、悲しそうな顔でつぶやいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

処理中です...