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66 光の女神の指輪

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 ダンジョン最奥部。

 ケーンは、大ダメージを負いながらも、ダンジョンボスにとどめを刺した。

ボスの攻撃は、前衛の彼がほとんど引き受け、装備もそこそこだった結果、彼はぼろぼろ。大量の出血のため、体力は風前のともし火だった。

「若くてもさすが赤竜だ。けっこうきつかったな」
 そう言って、ケーンはばたりと倒れた。

「いけない!」
 テレサは気力を振り絞り、蘇生魔法をケーンに試みる。

今の彼女にとって、究極の治癒系魔法は大きな負担がかかる。蘇生魔法の結果を見ないまま、気を失った。

「うわ~! ケーン、帰って来ぃ~~~!」
 ユリはケーンを抱き起す。血まみれになったケーンの頬に、涙でぐしゃぐしゃになった自らの頬をすりつける。

固く閉じられたケーンの目が、うっすら開いた。

「久しぶりにお花畑が見えた」

「うわ~~~ん!」
 ユリは号泣し、ケーンの顔をしっかり胸の中に抱きしめる。

「ハハ……。お花畑より、ユリのおっぱいがいいかも」
「あたりまえやん! 今晩嫁総出で天国に行かしたる!」
 そう言って、ユリはケーンに激しく口づけた。

お花畑から帰ったばかりのケーンにとって、嬉しくも苦しいご褒美だった。

 赤竜は風化し、後には大量の金貨、ダンジョンクリアメダル、そして二個の指輪が残された。

黄金色に輝くその指輪には、光の女神の姿が刻印されていた。

意識を取り戻したテレサは、その指輪をつまみ上げる。

見たことも聞いたこともない指輪だ。

その瞬間、指輪は光り輝き、テレサの左薬指にすっぽり入った。

テレサの頭に、次のデータがもたらされた。

『光の女神の指輪。
テレサ、ジャンヌのみ装備可能。
光の女神から最高レベルの加護を受ける。
ただし、ケーンの嫁である限り、はずすことはできない。
隠れ特殊効果、ヒ・ミ・ツ。
BY 光の女神』
 テレサが気づいたら、もう一個の指輪は消えていた。


 同時刻、青の森。
 
「あれっ? なんだろう?」
 ペンペンソウを採集していたジャンヌの左薬指に、光の女神の指輪が入り、黄金色に輝いた。

テレサの時と、同様の情報がもたらされた。

光の女神様が、どうして? 
私は裏切り者なのに。

ジャンヌは混乱した。だが、不思議な感覚があった。なんと形容すべきか……。

そう、全能感? なんでもできちゃう気がする。

「ジャンヌ様、ゴブリンです。倒してみますか?」
 ジャンヌのボディーガードを務めているホワイトが言う。

「そうですね。え~っと、アイスアロー」
 ジャンヌは初級攻撃魔法を唱える。

「あっ……」
「えっ……」
 レミとホワイトは固まる。そして誰よりも驚いたのはジャンヌ本人。

ぽかんと口を開けたまま、言葉が出てこない。

ゴブリンの体を貫いた氷の矢は、背後の木々をも貫き、森の奥の方まで飛んでいった。

「何! あの氷の矢。
もしかして、ジャンヌちゃんの魔法?」

「それはありえません。
初級魔法であれほどの威力、王宮へ来られた時の、ミレーユ様並みの……」
 氷の矢の威力に驚いた総子とブラックは、少し離れた場所から帰ってきた。

だが、その場にいるのは仲間三人だけ。初級魔法であの威力はホワイトでも無理だし、レミでは絶対ありえない。

「なんか光の女神様の加護を得たみたいです。最高レベルの。
どうして?」

 ジャンヌの問いに、答えられる者はいなかった。
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