改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

文字の大きさ
上 下
58 / 170

58 勇者二世との遭遇

しおりを挟む
 ライラック、城門近く。総子とジャンヌは、ケーンの本拠地がわからないので、街道の外れにテントを張って待ち伏せしていた。
 
 ライラックギルドで、問い合わせたら多分わかるだろうが、もしかしたら神殿から触れが回っているかもしれない。
 ジャンヌの話をよく聞いたら、神殿側が素直に認めるとは思えない。
 召喚しょっぱなから大失敗をしたようだと、総子は若干後悔している。
だが、聖神女の重すぎて窮屈な立場に縛られるジャンヌが、気の毒でならない。
ここは乗りかかった舟。当初の計画を推し進めるしかないと、総子は判断した。


「総子さん、勇者様の臭いがします!」
 ジャンヌは目を輝かせて総子に言った。

「えっ……。そんなに臭う? 朝シャワー浴びたんだけど」
 総子は脇の下を嗅ぐ。

「違います! ケーンが近づいているはずです。
さすがケンイチの息子です。
勇者臭がハンパない! 
いえ、臭いと言ったら変に聞こえるかもしれませんね。
オーラの気配と言い換えます」
 ジャンヌは幼いといえど聖神女。そして才能の器は、ミレーユに匹敵するほどのものだった。

 勇者オーラを感受し、その器を計ること。それは、聖神女に欠かせない能力の一つだ。
 ジャンヌが総子に出会ったとき、彼女の勇者感受メーターはマックスに達した。だからジャンヌは、総子との旅に踏み切れた。

 そして今、勇者オーラ感受メーターは振り切っていた。

「そうなんだ? じゃ、出迎えよう」

「そうですね。出ましょう」
 二人はテントから出た。

城門近くに張ったそのテントは、もちろんケーンのテントと同等の機能を持つ、総子こだわりのテントだった。

おねだりテントともいう。


「ケーンさん御一行とお見受けします。止まって下さい!」
 総子は道の真ん中に立って、馬車を停めた。御者がいないので、かなり怖かったが。

「誰?」
 ケーンが馬車から降りる。

「私、沖田総子と申します。
こちら、ジャンヌ・モロー様」
 総子が道端のジャンヌを手招きする。

「おはちゅにお目にかかります。
ジャンヌ・モローでちゅ」
 ジャンヌは真っ赤になってカミカミ自己紹介。

「ふ~ん……。
二人とも、超可愛いね! 
いや、ジャンヌちゃんはそういう意味じゃなくって…、って、どういう意味だよ」
 ケーンは一目で二人を気に入り、ノリ突っ込みしてみました。

彼はユリの悪影響を露骨に受けている。

「私たち二人のパーティに入って下さい。実は……」
 総子はケーンに歩み寄り、彼の耳元で自分とジャンヌの立ち位置を説明する。

「びっくり! だけど大歓迎! 
二人とも今日から仲間だ!」
 ケーンは総子をがっちりハグ。

「あの~……」
 案外うぶな総子は頬を染める。だけど、生まれて初めてのハグ、この男の感触、悪くないかも……。

もちろん、父親とアニキたちは除外。小さいころの話だが。

「ケーンさん、私も!」
 ジャンヌがケーンのズボンを引っ張る。

「はいはい。だけど、ここじゃ変態と誤解されるから。
後でゆっくりね」
 ケーンはジャンヌの頭をなでた。

「は~い!」
 素直に微笑むジャンヌだった。

こうして、ケーンに新しい仲間が加わった。

 後日、光の女神が怒り心頭に発し、夜の女王がガッツポーズをとったこと、付け加えておく。

 
 ケーン達一行は、総子のテントに招かれ、自己紹介を終える。

「ふ~ん。光の女神がね……。
しかも黙って抜け出したか。
きっと大騒動になってるよ。テリーヌ。
多分追手もかかってるはず。
冒険者登録は無理だな。
ジャンヌちゃんは年齢も年齢だし」
 ケーンの言葉に、総子はうなずく。

そうでしょうね……。


「夜の王宮へ行こう。母ちゃんになんとかしてもらう」

「なんとかなります?」
 総子は恐る恐る聞く。

「母ちゃんは夜の女王だよ。
なんともならなくても、なんとかする」
 ケーンは胸を張って答えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...