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58 勇者二世との遭遇
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ライラック、城門近く。総子とジャンヌは、ケーンの本拠地がわからないので、街道の外れにテントを張って待ち伏せしていた。
ライラックギルドで、問い合わせたら多分わかるだろうが、もしかしたら神殿から触れが回っているかもしれない。
ジャンヌの話をよく聞いたら、神殿側が素直に認めるとは思えない。
召喚しょっぱなから大失敗をしたようだと、総子は若干後悔している。
だが、聖神女の重すぎて窮屈な立場に縛られるジャンヌが、気の毒でならない。
ここは乗りかかった舟。当初の計画を推し進めるしかないと、総子は判断した。
「総子さん、勇者様の臭いがします!」
ジャンヌは目を輝かせて総子に言った。
「えっ……。そんなに臭う? 朝シャワー浴びたんだけど」
総子は脇の下を嗅ぐ。
「違います! ケーンが近づいているはずです。
さすがケンイチの息子です。
勇者臭がハンパない!
いえ、臭いと言ったら変に聞こえるかもしれませんね。
オーラの気配と言い換えます」
ジャンヌは幼いといえど聖神女。そして才能の器は、ミレーユに匹敵するほどのものだった。
勇者オーラを感受し、その器を計ること。それは、聖神女に欠かせない能力の一つだ。
ジャンヌが総子に出会ったとき、彼女の勇者感受メーターはマックスに達した。だからジャンヌは、総子との旅に踏み切れた。
そして今、勇者オーラ感受メーターは振り切っていた。
「そうなんだ? じゃ、出迎えよう」
「そうですね。出ましょう」
二人はテントから出た。
城門近くに張ったそのテントは、もちろんケーンのテントと同等の機能を持つ、総子こだわりのテントだった。
おねだりテントともいう。
「ケーンさん御一行とお見受けします。止まって下さい!」
総子は道の真ん中に立って、馬車を停めた。御者がいないので、かなり怖かったが。
「誰?」
ケーンが馬車から降りる。
「私、沖田総子と申します。
こちら、ジャンヌ・モロー様」
総子が道端のジャンヌを手招きする。
「おはちゅにお目にかかります。
ジャンヌ・モローでちゅ」
ジャンヌは真っ赤になってカミカミ自己紹介。
「ふ~ん……。
二人とも、超可愛いね!
いや、ジャンヌちゃんはそういう意味じゃなくって…、って、どういう意味だよ」
ケーンは一目で二人を気に入り、ノリ突っ込みしてみました。
彼はユリの悪影響を露骨に受けている。
「私たち二人のパーティに入って下さい。実は……」
総子はケーンに歩み寄り、彼の耳元で自分とジャンヌの立ち位置を説明する。
「びっくり! だけど大歓迎!
二人とも今日から仲間だ!」
ケーンは総子をがっちりハグ。
「あの~……」
案外うぶな総子は頬を染める。だけど、生まれて初めてのハグ、この男の感触、悪くないかも……。
もちろん、父親とアニキたちは除外。小さいころの話だが。
「ケーンさん、私も!」
ジャンヌがケーンのズボンを引っ張る。
「はいはい。だけど、ここじゃ変態と誤解されるから。
後でゆっくりね」
ケーンはジャンヌの頭をなでた。
「は~い!」
素直に微笑むジャンヌだった。
こうして、ケーンに新しい仲間が加わった。
後日、光の女神が怒り心頭に発し、夜の女王がガッツポーズをとったこと、付け加えておく。
ケーン達一行は、総子のテントに招かれ、自己紹介を終える。
「ふ~ん。光の女神がね……。
しかも黙って抜け出したか。
きっと大騒動になってるよ。テリーヌ。
多分追手もかかってるはず。
冒険者登録は無理だな。
ジャンヌちゃんは年齢も年齢だし」
ケーンの言葉に、総子はうなずく。
そうでしょうね……。
「夜の王宮へ行こう。母ちゃんになんとかしてもらう」
「なんとかなります?」
総子は恐る恐る聞く。
「母ちゃんは夜の女王だよ。
なんともならなくても、なんとかする」
ケーンは胸を張って答えた。
ライラックギルドで、問い合わせたら多分わかるだろうが、もしかしたら神殿から触れが回っているかもしれない。
ジャンヌの話をよく聞いたら、神殿側が素直に認めるとは思えない。
召喚しょっぱなから大失敗をしたようだと、総子は若干後悔している。
だが、聖神女の重すぎて窮屈な立場に縛られるジャンヌが、気の毒でならない。
ここは乗りかかった舟。当初の計画を推し進めるしかないと、総子は判断した。
「総子さん、勇者様の臭いがします!」
ジャンヌは目を輝かせて総子に言った。
「えっ……。そんなに臭う? 朝シャワー浴びたんだけど」
総子は脇の下を嗅ぐ。
「違います! ケーンが近づいているはずです。
さすがケンイチの息子です。
勇者臭がハンパない!
いえ、臭いと言ったら変に聞こえるかもしれませんね。
オーラの気配と言い換えます」
ジャンヌは幼いといえど聖神女。そして才能の器は、ミレーユに匹敵するほどのものだった。
勇者オーラを感受し、その器を計ること。それは、聖神女に欠かせない能力の一つだ。
ジャンヌが総子に出会ったとき、彼女の勇者感受メーターはマックスに達した。だからジャンヌは、総子との旅に踏み切れた。
そして今、勇者オーラ感受メーターは振り切っていた。
「そうなんだ? じゃ、出迎えよう」
「そうですね。出ましょう」
二人はテントから出た。
城門近くに張ったそのテントは、もちろんケーンのテントと同等の機能を持つ、総子こだわりのテントだった。
おねだりテントともいう。
「ケーンさん御一行とお見受けします。止まって下さい!」
総子は道の真ん中に立って、馬車を停めた。御者がいないので、かなり怖かったが。
「誰?」
ケーンが馬車から降りる。
「私、沖田総子と申します。
こちら、ジャンヌ・モロー様」
総子が道端のジャンヌを手招きする。
「おはちゅにお目にかかります。
ジャンヌ・モローでちゅ」
ジャンヌは真っ赤になってカミカミ自己紹介。
「ふ~ん……。
二人とも、超可愛いね!
いや、ジャンヌちゃんはそういう意味じゃなくって…、って、どういう意味だよ」
ケーンは一目で二人を気に入り、ノリ突っ込みしてみました。
彼はユリの悪影響を露骨に受けている。
「私たち二人のパーティに入って下さい。実は……」
総子はケーンに歩み寄り、彼の耳元で自分とジャンヌの立ち位置を説明する。
「びっくり! だけど大歓迎!
二人とも今日から仲間だ!」
ケーンは総子をがっちりハグ。
「あの~……」
案外うぶな総子は頬を染める。だけど、生まれて初めてのハグ、この男の感触、悪くないかも……。
もちろん、父親とアニキたちは除外。小さいころの話だが。
「ケーンさん、私も!」
ジャンヌがケーンのズボンを引っ張る。
「はいはい。だけど、ここじゃ変態と誤解されるから。
後でゆっくりね」
ケーンはジャンヌの頭をなでた。
「は~い!」
素直に微笑むジャンヌだった。
こうして、ケーンに新しい仲間が加わった。
後日、光の女神が怒り心頭に発し、夜の女王がガッツポーズをとったこと、付け加えておく。
ケーン達一行は、総子のテントに招かれ、自己紹介を終える。
「ふ~ん。光の女神がね……。
しかも黙って抜け出したか。
きっと大騒動になってるよ。テリーヌ。
多分追手もかかってるはず。
冒険者登録は無理だな。
ジャンヌちゃんは年齢も年齢だし」
ケーンの言葉に、総子はうなずく。
そうでしょうね……。
「夜の王宮へ行こう。母ちゃんになんとかしてもらう」
「なんとかなります?」
総子は恐る恐る聞く。
「母ちゃんは夜の女王だよ。
なんともならなくても、なんとかする」
ケーンは胸を張って答えた。
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