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41 よかった、よかった

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 翌日、日が傾きかけた時刻のギルド内は、クエスト達成の報告や、素材持ち込みの冒険者たちでにぎわっていた。

「テレサ、言いにくいんだけどさ、あんたここを離れた方がいいよ」
「神聖魔法は使えるけど、すぐに魔力切れをおこしちゃう。
別の町なら、回復役として重宝されるよ」

「リーダー、はっきり言ってやんなよ。
足手まといだって。
だから私は反対だったのよ」
 三人の女の言葉に、テレサはうなだれる。

「お金が必要なんです」
 テレサは半ベソで言う。

「そんなの誰でも同じだよ。
残酷だけど、これ以上ウチのパーティに置いておけない。
商人のキャラバンにでも入れてもらって、この町を離れなさい。
行こうか?」
 リーダー格と思われる女は、仲間を促し、ギルドから出ていった。

少女はうなだれた顔をキッと上げ、昨日ケーンが助けたパーティに歩み寄る。

「お願いですから、私を仲間に入れて下さい。
神聖魔法が使えます!」

「悪いけど、ウチは間にあってるから」
 今のやりとりを見ていて、仲間にいれるほど、その女はお人好しでなかった。

「あの~……、仲間に入れて下さい! 
女の人がいるパーティがいいんです!」
 テレサは、その女と軽口をたたいていたケーンの腕にすがりつく。

「いいよ。俺好みだし」
 ケーンは、あっさり認める。

「ちょっと、ケーン!」
 ユリが血相を変えて詰め寄る。

「俺がいいと言ってる。いいんだよ」
 ケーンはわけあり顔で、ユリにウインクする。

ユリは気づいた。そうか、この女、ゆうべケーンが言ってたテリーヌの間者か……。

ケーンに何か考えがあるのだろう。ユリは口を挟まないことにした。

もちろんブラックやホワイトは、基本的にケーンの意思に任せている。苦笑してケーンに軽くうなずいた。

なんだかミレーユ様に、感じが似てるし。よかったですね、ケーン様。

ブラックは、素材引き取りカウンターに歩いていった。


 ケーン達は、テレサを自分たちの宿に連れて帰った。自分とユリが借りている部屋に、テレサを通す。

「荷物は?」
 ケーンが聞く。

「そうですね……。取ってきます」
 テレサは、ほっとした顔で応える。どうやら本当に自分を迎える気らしい。
 よかったと言えるか、微妙だけど。

「うまく潜り込めたと報告しなよ。
そして、俺は想像通り、夜の女王とケンイチの息子だ。
聖神女略奪はあきらめた。
ひょっとして、その情報がゲットできたら任務完了?」
 ケーンの言葉に、テレサはピキーンと固まった。

「シャドーと、いったっけ? 
間諜なんてつまんない仕事、やめた方がいい。
本当に金が必要ならやるよ。
君はどことなくミレーユに似てる。
それだけでも金をやる価値がある」

「ケーン、いきなり放りだしたら、信じてくれんで。
あんた、ケーンは気にいったみたいやし、『うまく潜り込めた』とだけ報告し。
しばらくウチらのパーティで腕磨いたら? 
ケーンはドスケベやけど、いやがる女に手は出さん。
貞操は保証したるわ」

「どうして?」
 テレサは、複雑な思いを込めて聞いた。

「ケーンの目的は、冒険のスリルを楽しむことと、嫁探しや。
今んとこ三人の嫁はゲットしとる。
あんた、たしかにミレーユ様と感じ似とる。
あんたの気持ち次第やけど、嫁候補と認めたる」
 ユリはケーンの意を汲んでそう言った。

それは自分の気分でもある。この純情そうな乙女、どうやってこましたろ? 

ケーンの嫁となり、他の嫁とも百合仲間となって、ある意味ユリの百合趣味は、一層磨かれていた。

 テレサは考え込んだ。信じていいものだろうか? 

話がうますぎる。だが、「うますぎる話」に乗っても、自分にデメリットがあるとは思えない。

どうせこの男に、抱かれる予定なのだし。

「荷物、取ってきます」
 テレサは腹をくくって部屋を後にした。


 テレサは、先輩間諜が詰める宿へ帰った。

「どうだった?」
 シャドーの分隊長が聞く。
「あっけなく成功しました」
 テレサはうつむいて答えた。

「性交したのか?
早すぎない?
まあ、あの若さだ。早くても当然か」
 分隊長は、少し誤解した。

「私、なぜだか気に入られたみたいです」
 テレサはうつむいたまま答えた。

「そうか。それはよかった。
で、よかったか?」
 安心した分隊長は、下ネタを仕掛けてみた。全くウブな女だ、と、思いながら。
つまり、やましさからくるテレサのおどおどした感じ、処女をなくしたことが原因だととらえていた。

「まあ、よかったのではないでしょうか……」

「そうかそうか、よかったよかった」
 
 二人の会話は、かみ合わないままだった。
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