上 下
34 / 170

34 正妻が帰ってきた

しおりを挟む
「おはようございます。もうお昼ですよ」
 キキョウは、ご機嫌でベッドの三人に声をかけた。

ケーン様が一挙に、二人の女をものにした。

エッチの負担は、かなり解消される。

ウフ…、適度な負担は大歓迎だし。

「おはよう。キキョウ、帰って来たんだね」
 ケーンが跳ね起き、ベッドから降りて、大きく腕を広げる。

キキョウは、ケーンの胸に飛び込んだ。がっちりと抱き合い、濃密なキスを楽しむ。

「どなた、ですか?」
 レミが布団で裸の胸を隠し、恐る恐る聞く。

「ケーンの正妻や。
あの女に逆らったらあかんで。
トリプルSの冒険者や。
ウチとあんたはあくまで側室。分はわきまえよう」
 ユリは苦笑して、そう答えた。側室、ね……。「側」が付いていても、少し前の自分なら、妻というポジションに着く日がくると、想像もしなかった。
 くすぐったくもあるが、それほど居心地は悪くない。

「トリプルS。クノイチキキョウさんが正妻か……。
私、ホントにこの家で暮らしていいんですか?」
 レミは仕事柄、冒険者はお得意様だ。当然ながら、トリプルSクノイチ・キキョウの勇名は知っていた。

「ケーンの正体知ったら、もっとビビるで。
ケーンはな……」
 ユリはケーンの正体を明かす。

ユリの言葉通り、超ビビってしまったレミだった。


 四人は食卓を囲み、キキョウ心尽くしの昼食を味わう。食後の紅茶を飲みながら、キキョウが今後のプランを語る。

「これは夜の女王様からのお言葉です。
私はしばらく、夜の王宮で、魔法の修行をこのまま続けます。
レミさんも、いっしょに薬師と錬金術師の修行を積みませんか? 
それと、自分で身を守るだけの修行を積んだ方が、いいと思います。
もちろん、女王様かミレーユ様の転移魔法陣で、いつでもここに帰れますから。
私もちょくちょく帰って、ケーン様のお情けをいただきます」

「私も夜の王宮で?」
 レミは顔をひきつらせて言う。庶民にとって、ある意味光の女神が治める天上界より、ファンタジーの世界だ。
実体がありながら、全く想像もできない世界、という意味で。

「そうです。ミレーユ様が直接指導にあたってくれます」

「ミレーユ様……。あの伝説の聖神女? 
そうか、今でもケンイチ様のおそばにいるのですか。
畏れ多いですが、是非お願いします!」
 レミは超乗り気になった。伝説の元聖神女、ミレーユは、実感できる存在だ。薬師見習いである彼女の、究極的な目標だという意味で。

ミレーユ様は、神聖魔法をはじめ、あらゆる魔法のオーソリティーと聞く。薬師と錬金術師としても最高峰だと聞いている。彼女直々の指導を受けるなんて夢のようだ。

「じゃあ、そういうことで。
ケーン様はどうしますか?」
 キキョウはケーンに振る。

「当分今のまま、ユリと狩りをする。
スリルがあってなかなか楽しいし。
ただ、足が不便でね。
ブラックとホワイト、ずっとつけてただろ? 
足と回収だけでいいから、このまま付いてくるよう言って」

「やっぱりおわかりでしたか。
私から女王様に伝えておきます。
ミレーユ様のアイテムボックスは、自由に使ってくださいとのことです。
では食事を終えたばかりですが……」
 キキョウは濃艶な目でケーンを見つめる。エッチ抜きで独り寝なんて、久しぶりなんだもん!

「了解。おいで」
 ケーンとキキョウは、寝室へ直行した。


「ミレーユ様のアイテムボックス使い放題! 
レミ、伯母さんにも生活があるやろ? 
これで楽隠居させたり」
 すっかり気が大きくなったユリは、ブラックバッグから金貨の入った革袋を取り出した。

「こんなに!」
 レミは革袋の中をのぞきびっくり。

「これはウチらが正当に稼いだ金や。
気にせんといて」
 ユリは気分よく胸を張る。

ちなみに、ユリが稼いだ額は、ほんのわずかだ。金貨一枚にも届かないだろう。ほとんど解体を手伝っただけだから。


寝室からキキョウのあえぎ声が、盛大に漏れ始めた。

「ケーンは根っからの好きもんや。
それだけは覚悟しときや」

「ど~んとかかってきなさい、ですよ!」
 頼もしく応えたレミだった。

この金貨、一度に渡したら伯母さんも困るだろう。
少しずつ渡せばいいか。

まだら蛇にかまれ、レミの世界はすっかり変わってしまった。
サンキューです! まだら蛇様。

今頃一部が伯母の胃袋の中で、消化されているであろうまだら蛇に、感謝の祈りを捧げるレミだった。


 寝室から延々と続く喘ぎ声を後に、レミはキキョウの家を辞した。
 ゆうべは受け手が二人だった。「ど~んとかかってきなさい」と言ったものの、自信は若干揺らいだ。

ケーンさんに、マンツーマンでかかってこられて、大丈夫だろうか?
 死んだ夫も、強い方だったと思うが、ケーンさんは、強さの次元が違っているようだ。
 ゆうべは二人がかりで「朝まで」、だったのに、あの調子なら「夜まで」だろう。
ひょっとしたら、二連荘で朝まで?

 ちょっと怖いかもしれない……。キキョウさんが、「側室が二人もできてほっとした」という理由、実感を持って納得。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号
ファンタジー
ラノベ作家志望の俺、トオル・ユウキ17歳。ある日、夢の中に謎の金髪の美少年神スパイラルが登場し、俺を強引に神の使徒とした。それどころか俺の顔が不細工で能力が低いと一方的に断言されて、昔のヒーローのように不完全な人体改造までされてしまったのだ。神の使徒となった俺に与えられた使命とは転生先の異世界において神スパイラルの信仰心を上げる事……しかし改造が中途半端な俺は、身体こそ丈夫だが飲み水を出したり、火を起こす生活魔法しか使えない。そんな無理ゲーの最中、俺はゴブリンに襲われている少女に出会う……これが竜神、悪魔、人間、エルフ……様々な種族の嫁を貰い、人間の国、古代魔法帝国の深き迷宮、謎めいた魔界、そして美男美女ばかりなエルフの国と異世界をまたにかけ、駆け巡る冒険の始まりであった。

処理中です...