上 下
29 / 170

29 実は意外な縁があったのです

しおりを挟む
読者の皆様、あけましておめでとうございます。正月の暇つぶしにお読みいただけたら幸いです。
 
 猫又 拝


 ユリは湯船の中で、う~んと体を伸ばした。

お湯を張った風呂なんて久しぶり。さすがトリプルSの家は違う。なんか泡が出てるし……。
じぇっとばす、というそうだ。「ジェットだけど飛ばないよ」という、ケーンの説明は意味不明。

 なんでも、「ジェット機」という、空を飛ぶ魔道具が地球にあるそうだ。
まあ、手のひらに載る魔道具で、複雑なゲームコンテンツが詰め込める世界だ。特別に驚きもしない。
ユリは知らなかったが、実はゲーム〇ーイアドバンス、先代、つまりユリの母親が、呪いを解く代償として、受け取ったものだ。ケンイチから。

ケンイチが夜空城から下界へ遊びに下りた時、ユリの母親と出会った。
母親は既に既婚者で、しかもケンイチは四人の嫁に対し、絶対的な貞節を守っていた。正確に言えば、守らざるをえなかった。

したがって、ロマンスは生まれなかった。ユリの母親も幸せいっぱいのころ。ためらいなくゲー〇ボーイアドバンス一台で手を打った。

キキョウの家の大きさは、3LDKと小ぢんまりとした平屋だが、内装や設備は凝っていた。

なにせ伝説のシャワートイレがあったのだから。ケーンはあれでなければ大の用が足せないから、設置し直したそうだ。

たしかにあれを一度使うたら、そんな体質になってまうな。

シャワートイレあるあるで、最初びっくりして立ち上がってしまったが、慣れたらやみつきだ。

ユリはわからなくなってしまった。ケーンが恵まれているのか、不幸なのか。

落ちこぼれ、もしくは落ちこぼし家系に生まれた自分から見たら、うらやましすぎの一言。

超エリートの父親と、光の女神に匹敵する、母親の間に生まれた子供。

その二人の力や財力を、受け継いだだけではない。

夜の女王の力で、地球のハイテク技術を手に入れるのも朝飯前。
そして、トリプルSの嫁までゲットしてしまった。


この家のドアに貼られた紙を見て、ユリはすぐさまキキョウの武器庫を開けてみた。

思わずケーンに突っ込んでしまった。

「なんで最初から、この武器庫の装備使わんかった! 
嫁が『なんでも使ってください』言うとるのに」

ケーンは、憤ってこう言い返した。
「知らなかったから、しょ~がねぇじゃん。
もっと上等なやつが、いくらでもあったんだ」

言われてみたらその通りだろう。なにせ夜の王宮から、直にお取り寄せ可能だったそうだから。

だが、それほど恵まれた男は、地獄ともいえる修行の結果、その力を得ていた。

そしてたどりついた境地が、「絶対強者の退屈」だったとは皮肉なものだ。


 ユリは自分のおっぱいを両手でつかむ。

ユリにとっては、有難迷惑そのもの。男には興味がないし、おっぱいだけで寄ってくる女もいなかった。

このFカップおっぱいは、男がらみのトラブルしか生まない。

キキョウの中パイが、なんとうらやましく思えたものか。

ユリがキマイラスーツの上に装備した、毛皮の胸当てやパレオは、戦闘のたびふっとんだ。

即席で作ったものだから、仕方なかったが、男によっては素っ裸より刺激的だっただろう。

ケーンはチラ見していたが、意識的に視線をそらしていた。

その様子がかわいく思えたのは内緒だ。

フフ、明日もあの装備やめられんな……。

ユリはふと気づいた。

なんだか勇者への恨みは、消し飛んでしまった。

まあ、ええか。

ユリにとっても、明日からの冒険が楽しみになっていた。
 

キキョウの家の外。長身の男女がたたずんでいた。

「キキョウ様の伝言ぐらい、セーフだよな?」

「まあ、この家に帰ったら、武器庫ぐらいあの女は見つけてるでしょ。
かろうじてセーフ。
あなた、よく我慢したわね。
地上の野外セックスも、ありじゃない?」
 二頭のペガサスは、くんずほぐれつの一戦に突入した。


ベッドで休みながらケーンは思う。

母ちゃん、ホワイトまでよこしたのか。

全く親バカなんだから。

不器用なブラックの尾行には、とっくに気づいていたケーンだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

処理中です...