暗い水の中を壊して逃げていく

Me-ya

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本心がわからない横顔、納得いかないロマンス

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-目の前に映画のチケットが2枚。

「これ、樹生がちょ~楽しみにしていた映画のチケット。あげる」

ちょ~に力を込めて、笑顔で映画のチケットをオレに差し出してきた彰。

オレが樹生を狙っている事を知っていての彰のこの態度。

-嫌な予感しかしない。

オレが見たところ、樹生と彰のカップルは皆が思っているほどにはラブラブじゃない。

いや、樹生は確かに彰に惚れているみたいだけど。

(とはいえ、オレが意味ありげに見詰めただけでぐらつく程度の気持ちって事だけど)

彰の方は樹生にそんなに惚れている…とはオレには見えない。

だが、そうはいっても幼馴染みらしいし、嫌っているようにも見えない。

ふたりでいる時はほどほどに仲が良さそうに見えた。

それなのに。

そんな彰が樹生を狙っているオレに映画のチケットを…?

樹生を襲うチャンスをオレにくれるって…?

確かにオレは樹生を狙っている。

樹生を抱きたいと思っている。

抱くだけじゃなく、あんな事やこんな事もしたいし樹生が知ったら烈火のごとく怒りそうな恥ずかしい台詞だって言わせたい(だが、樹生は烈火のごとく怒るかもしれないけど内心はそういう事が嫌いじゃないと…いや、好きなんじゃないかとオレは思っている)。

そんな邪なオレの気持ちを彰はうすうす気付いているはず。

(…何を企んでいる…?)

(まさか惠と治朗を交換しようなんて言うんじゃないだろうな?)

彰が惠を気にしている事には気付いていた。

最近、惠の周りをちょろちょろしていて目障りだと思っていたけど。

差し出されたチケットを手を出さずに見詰めたままのオレに彰は。

「大丈夫。その代わりに何かしてくれなんて言わないから…僕もたまには息抜きしたいし…それに樹生も治朗の事が気になるらしくて…気付いているんでしょ?樹生も治朗を意識しているって…あんなに樹生を見ているんだからさ」

ニッコリと笑ったまま樹生を裏切る彰を凝視する。

-確かに。

樹生がオレを意識しているのには気付いていた。

オレが樹生を見ると必ずといっていいほど樹生もオレを見ていて、目が合うとぎこちなくオレから視線を逸らす。

オマケに不自然なほどに露骨にオレを避けているし。

オレを意識しないでおこうとして、余計に意識しまくりなのが丸わかり。

-オレを気にしているのはバレバレだ。

それなのにオレが声をかけようとすると逃げるから、なかなかお近づきにはなれずにいた。

どうしたもんかと思っていたけど。

「………いいのか?」

-樹生を抱いても?

オレの問いに。

「いいよ」

迷わず答える彰に。

差し出されていた映画のチケットに、手を伸ばした。
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