僕が玩具になった理由

Me-ya

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ずれてゆくこわれてゆく-優紀の章-

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「…おい、大丈夫か?」

…いったい、どのくらいの間そうしていたんだろう…?

気がつくと…いつの間に来ていたのか…和巳が心配そうな顔をして、僕の顔を覗き込んでいた。

「……………和巳……?」

ぼんやりと和巳の名前を呼ぶと、和巳はホッとした顔をした。

「大丈夫か?…心配したぞ…何度、名前呼んでも返事がないから」

窓から外を見ると、いつの間にか西日が射している。

…昨日、学校から帰ってきて丸1日、同じ場所に座り込んでいたらしい…。

「…大丈夫か?今日、珍しく学校へ連絡もなく休んだから…眞司に聞いたら、知らないって鍵、渡されたから…来てみたけど…」

「………眞司……学校へ来たの…?」

「…え?ああ、来たけど…?」

(…そっか…学校へ行ったんだ…)

学校へ行けば、眞司に会えたのか……。

眞司に聞きたい事…言いたい事は沢山ある…。

昨日はどこに泊まったのか…とか、僕はどこに行ったらいいの…とか、僕を捨てるのか…とか…。

…でも……。

実際に眞司に会うと、何も言えなくなるだろう事も知っている。

「眞司がマンションを出たって、本当だったんだな」

和巳がテーブルの上に置かれた手紙を手に取り、呟いた。

「………ない……」

「………え?」

「…出ていったんじゃない…眞司は帰ってくる…っ!!」

自分でも吃驚する程、大きな声が出た。

和巳も吃驚した顔で僕を見ている。

でも、止まらない。

「…だって…この手紙にはしばらくって書いてある…しばらくって事は、その内、帰ってくるって事じゃないかっ!!眞司は帰ってくるっ!!」

和巳はそんな僕を困ったような、哀れむような目で見詰めた。

…分かっている…。

それが僕の願望だって。

でも。

認めたくない。

眞司が出ていったまま、戻ってこないなんて…認めたくないんだ…。

「…とにかく…学校には出てこい…心配するから」

そう言った後、少し照れた顔をした和巳を、僕は見なかった。

「…それと、ちゃんと寝て、ちゃんと食べろ…顔色、悪いし…どうせ食べてないんだろ?」

そう言ってお粥を作ってくれた和巳には悪いが、僕は食欲なんて全くなかった。

それより、眞司が残していった手紙の事で頭の中は一杯だった。

(…ねえ、眞司…しばらくって、いつまで…?)

(いつまで待ってたら、眞司は帰ってくる…?)

(…学校で…遠くから姿を見る事も、駄目なの?)

僕の目から涙が零れ落ちた。

(…眞司…)

話せなくてもいいから…。

(会いたい…)

遠くから見るだけでもいいから…。

眞司に………。

(会いたい…)
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