雨のナイフ

Me-ya

文字の大きさ
上 下
26 / 60

1ー25

しおりを挟む
-そんなある日、彼が部屋に来た。

最初、部屋のドアが開く音がした時、俺は当然、速水が入ってきたと思った。

だが、振り向いたら見慣れた速水の精悍な顔じゃなく、綺麗な晃の顔があって驚いた。

「なんだ。元気そうじゃん」

「………晃」

どうして晃がここに…?

「馨に聞いたんだ。ここに居るって」

晃は、まるで俺の心を読んだみたいなタイミングでそう言った。

「………馨って……どうして、晃が速水のことを…」

「だって僕、馨と付き合っているからね」

淡い薄茶の髪をかきあげながら、なんでもないことのように晃が言う。

「付き合っているって…じゃ、脅されているって言っていたのは…嘘?」

「当然でしょ…由貴が僕と一緒に居たところを馨が見たらしくて、会わせろって言うからさ…仕方なくね。全く、由貴のどこをそんなに気に入ったんだか…いつもの気紛れで、すぐ飽きると思っていたのに…」

晃は今まで見たことがないようなキツい瞳で俺を睨み付けた。

「泥棒猫!!」

そう言うなり、晃は右手で俺の左頬を張り倒した。

「………あ…っ」

いきなりのことに呆然としていた俺は左頬を叩かれ、勢い余って無様に全裸のままベッドから床に転がり落ちる。

「どうやって、馨を誑かしたのさ!?」

「…して…してない…そんな…誑かすなんて…」

床に全裸で座り込んだまま、俺は叩かれた頬を押さえて晃を見上げる。

「どうして僕じゃなく、由貴なんだ!!」

今度は、右頬を叩かれた。

「由貴のどこがいいんだ!!」

次は左頬を叩かれた。

「どうして!!」

次は右頬を…。

俺は抵抗することも忘れて、晃の顔を見上げるばかり。

「どうして…!!」

晃が泣いている。

俺を叩きながら、泣いている。

「…何だよ、その目は?」

泣いて、怒っていても晃は綺麗だった。

「僕に同情しているわけ?由貴に同情なんか…!!」

晃が手を振り上げた。

叩かれる!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大親友に監禁される話

だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。 目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。 R描写はありません。 トイレでないところで小用をするシーンがあります。 ※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。

隣/同級生×同級生

ハタセ
BL
輪廻転生モノです。 美形側が結構病んでおりますので病んでる美形が好きな方には是非読んで頂けると有難いです。

割れて壊れたティーカップ

リコ井
BL
執着執事×気弱少年。 貴族の生まれの四男のローシャは体が弱く後継者からも外れていた。そのため家族から浮いた存在でひとりぼっちだった。そんなローシャを幼い頃から面倒見てくれている執事アルベルトのことをローシャは好きだった。アルベルトもローシャが好きだったがその感情はローシャが思う以上のものだった。ある日、執事たちが裏切り謀反を起こした。アルベルトも共謀者だという。

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

本ばっか読んでたら死ぬぞ

BL
本ばかり読む僕といじめっ子の幼馴染と精神疾患のお兄さんの薄暗い話。 恋愛要素は薄目です。

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

頼れる仲間はみんな目が死んでるので頼りたくない

ベポ田
BL
平均平凡文科省指定男児の冬樹くん。重い後輩と、重い同級と、暴力性がすごい同級に包囲されて死にたい。 ○冬樹陽成(フユキ ハルナリ)くん 高2。ぼけぼけした文科省指定顔。たいやきは頭から食べる。 ○秋庭優斗(アキバ ユウト)くん 高2。重い。つんつんしたイケメン。たいやきは尻尾から食べる。 ○春江千晶(ハルエ チアキ)くん 高1。重い。はんなりしたイケメン。家では一生ピーピーラムネをピーピーしてる。たいやきはあたまだけ残す。 ○夏目丙(ナツメ ヒノエ)くん 高2。重い。まっすぐしたイケメン。最近飼い犬のおしりを噛んだ。たいやきは一口で食べる。

【BLーR18】5人との、甘美で危険な戯れ

奏音 美都
BL
ねぇおいで、見せてあげよう。 僕の城。僕の世界を…… この扉の先に何が待ち受けているのか。 戻るなら、今のうちだよ? *君は、誰に愛されたい?* 癒しのショタ天使 僕の可愛い天使、素直《すなお》 10歳。 「夕貴お兄ちゃま、大好き!」 素直になれないツンデレ俺様 僕の愛しい騎士団長、勝太《しょうた》 19歳。 「夕貴、お前は俺に黙って抱かれてりゃいーんだよ!」 溺愛キラッキラ王子 僕の優しい貴公子、ロイヤル 22歳。 「Yuki, my sweetheart. I'll do anything for you」 (僕の可愛い人、夕貴。貴方の為なら何でもしてあげる) 世話焼き色欲淫(オカ)魔 僕の愛すべき道化師、ダリア 28歳 「うふっ、私のここに夕ちゃんの入れてあげる♪」 君臨する支配者、ドS帝王 僕の崇拝する帝王、創一《そういち》 25歳 「夕貴。裸になり、鏡の前で膝立ちになりなさい」 君たちがいる、ここが僕の桃源郷。 君たち全員を、愛しているよ…… <作品概要> エロティックで甘美でありながらスリリングで、切ないほどに身を焦がす狂気的な純愛ストーリー 5人との絡みの後、急激に話が展開します。 エロも重視しますが、ストーリーも同じくらい重視してます。 <警告> BL好きで拘りのある方、リバありです!(相手により変わります) 無理やりはありませんが、縛り、媚薬、玩具攻めありです! 苦手だこれ、と思ったら回れ右で逃げてください!お願いします。 この話はフィクションであり、独自の見解に基づいて話を描いているため、現実とはそぐわない内容もありますのでご理解頂ける方のみお読み下さい。

処理中です...