107 / 151
6.瞳の中、君に
17
しおりを挟む
「本当は黙っていようと思ったんだけどね…この事を知ったら、隼人が悲しむだろうから…でも、寧音がそうやって隼人を追い詰めるつもりなら、俺も容赦はしないよ」
「………酷い」
寧音の瞳から、涙が零れ落ちる。
だが、その涙を見ても治夫は何も感じないのか平然としている。
「…酷い?どっちが?…俺が記憶をなくした時に俺と付き合っていると俺や周りに嘘を吐く事?それとも俺に近付く為に、隼人を好きな振りをして付き合う事?それとも…隼人を階段から突き落とそうとした事?」
その言葉を聞いた瞬間。
寧音の顔から表情がなくなり、唇が震え始める。
「……………記憶が…?」
寧音の震える唇から、囁くような声が零れ出た。
「お陰さまでね…全て思い出したよ…まったく、やってくれるよな。人が記憶をなくしている間に…だいたい俺の記憶が戻ると思わなかったわけ?こんな、すぐバレるような事…寧音らしくない」
「………だって……仕方がないじゃない…」
「……は…?」
……仕方ない………?
「…仕方がないじゃない!!…どうやったって、治夫は振り向いてくれないし…いつも隼人、隼人って。隼人のどこがいいのよ!!同じ男じゃない!!それなのに…こんなの、おかしいわ!!間違っている!!」
涙を流し、地団駄を踏みながらヒステリックに喚く寧音を、治夫は冷たく見返す。
「…悪いけど、誰にどう思われようとかまわない。男とか、女とか関係ない。理屈じゃないんだ。それに俺は一途でね。初めて会った時からずっと隼人だけを見てきた。隼人が俺の事を好きにならなくても、この気持ちは変わらない…ずっとね」
「…何よ…隼人、隼人って…治夫は昔から隼人ばかり…横にいる私の事に気付きもしない…私だって初めて会った時からずっと治夫が好きだったわよ!!」
「…………………………」
「…隼人が私の事を好きになった時にやっと治夫は私の存在に気付いた…だったら…治夫に私を意識させる為には隼人と付き合うしかないじゃない!!…そうしないといつまで経っても治夫は私を見てくれないんだもの!!」
そこで一気に喋ったところで寧音は両手で顔を覆うと、わっと泣き出してしまった。
病室前の廊下で壁にもたれたまま寧音の叫びを聞いていた隼人は、そっとその場を立ち去った。
「………酷い」
寧音の瞳から、涙が零れ落ちる。
だが、その涙を見ても治夫は何も感じないのか平然としている。
「…酷い?どっちが?…俺が記憶をなくした時に俺と付き合っていると俺や周りに嘘を吐く事?それとも俺に近付く為に、隼人を好きな振りをして付き合う事?それとも…隼人を階段から突き落とそうとした事?」
その言葉を聞いた瞬間。
寧音の顔から表情がなくなり、唇が震え始める。
「……………記憶が…?」
寧音の震える唇から、囁くような声が零れ出た。
「お陰さまでね…全て思い出したよ…まったく、やってくれるよな。人が記憶をなくしている間に…だいたい俺の記憶が戻ると思わなかったわけ?こんな、すぐバレるような事…寧音らしくない」
「………だって……仕方がないじゃない…」
「……は…?」
……仕方ない………?
「…仕方がないじゃない!!…どうやったって、治夫は振り向いてくれないし…いつも隼人、隼人って。隼人のどこがいいのよ!!同じ男じゃない!!それなのに…こんなの、おかしいわ!!間違っている!!」
涙を流し、地団駄を踏みながらヒステリックに喚く寧音を、治夫は冷たく見返す。
「…悪いけど、誰にどう思われようとかまわない。男とか、女とか関係ない。理屈じゃないんだ。それに俺は一途でね。初めて会った時からずっと隼人だけを見てきた。隼人が俺の事を好きにならなくても、この気持ちは変わらない…ずっとね」
「…何よ…隼人、隼人って…治夫は昔から隼人ばかり…横にいる私の事に気付きもしない…私だって初めて会った時からずっと治夫が好きだったわよ!!」
「…………………………」
「…隼人が私の事を好きになった時にやっと治夫は私の存在に気付いた…だったら…治夫に私を意識させる為には隼人と付き合うしかないじゃない!!…そうしないといつまで経っても治夫は私を見てくれないんだもの!!」
そこで一気に喋ったところで寧音は両手で顔を覆うと、わっと泣き出してしまった。
病室前の廊下で壁にもたれたまま寧音の叫びを聞いていた隼人は、そっとその場を立ち去った。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる