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6.瞳の中、君に
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「………う……」
意識が浮上すると、体のあちこちが痛い。
「……治夫…」
俺の名前を呼ぶ、聞き覚えのある声。
泣くのを堪えているような声に、俺は目を開く。
「…隼人……」
「…治夫!…気が付いたか?」
目を開けると、そこには心配そうに俺の顔を覗き込む隼人の顔。
その顔が今にも泣きそうに、クシャリと歪む。
「…俺は大丈夫だから…泣くなよ」
「……泣いてない」
俺の言葉に、隼人は慌てて顔を擦り答える。
……………………………………………………。
…………………………。
……………。
「…治夫!!」
叫び声と同時に、病室の扉が凄い勢いで開かれる。
「…寧音」
そこには青い顔をした寧音が立って、病室のベッドの上にいる治夫を見詰めていた。
「階段から落ちたって聞いて…大丈夫!?」
「…どうしてここが?」
ベッドに近付きながら、寧音は答える。
「先生に聞いたの…それより治夫、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。いちよう念のために今日1日、入院しなきゃいけないけどね」
「…そう」
「…それより隼人は?」
「………え?」
「隼人は一緒じゃないの?」
治夫が隼人の名前を口にした途端、寧音の表情が変わった。
「…どうして隼人と一緒に来なきゃいけないのよ…隼人のせいで治夫がこんな事になっているのに…!!」
「…寧々」
「隼人を庇ったせいで…そうよ!この前だって、隼人を庇って車に跳ねられて、大怪我したじゃない!今回だって、隼人を庇って階段から落ちてこんな事に…それなのに、治夫は隼人、隼人って…」
話している内に、怒りが振り返してきたのか、寧音の言葉に熱が入ってくる。
「…寧音…もしかして、隼人に何か言った?」
治夫の質問にも、寧音は当然の事のように頷く。
「治夫に近付かないでって言ったわよ。当たり前でしょ」
その寧音の言葉を聞いた途端、それまで平静だった治夫の顔色が変わった。
「…どうしてそんな、余計な事を…」
「だって、こんな事になったのは隼人の…」
「………寧音」
治夫がゆっくりと寧音の言葉を遮る。
「…今回の事は、隼人に責任はない。それは寧音の方がよく知っているんじゃないか?」
「…何を…私は何も…」
治夫に詰め寄られ、言葉を詰まらせた寧音は少しの間、視線を彷徨わせていたがやがて悪戯を見付かった子供のような顔で、治夫の顔色を窺うような、悔しそうな色を瞳に滲ませて唇を噛み締めた。
「…隼人は気付いてないよ。気付いているのは俺だけ。あそこには隼人と俺しか居なかったし、隼人は上の空で階段を下りていて寧音に気付いてなかっただろうしね」
治夫の言葉を聞いている寧音の顔は青ざめ、その瞳には涙が滲んでいる。
意識が浮上すると、体のあちこちが痛い。
「……治夫…」
俺の名前を呼ぶ、聞き覚えのある声。
泣くのを堪えているような声に、俺は目を開く。
「…隼人……」
「…治夫!…気が付いたか?」
目を開けると、そこには心配そうに俺の顔を覗き込む隼人の顔。
その顔が今にも泣きそうに、クシャリと歪む。
「…俺は大丈夫だから…泣くなよ」
「……泣いてない」
俺の言葉に、隼人は慌てて顔を擦り答える。
……………………………………………………。
…………………………。
……………。
「…治夫!!」
叫び声と同時に、病室の扉が凄い勢いで開かれる。
「…寧音」
そこには青い顔をした寧音が立って、病室のベッドの上にいる治夫を見詰めていた。
「階段から落ちたって聞いて…大丈夫!?」
「…どうしてここが?」
ベッドに近付きながら、寧音は答える。
「先生に聞いたの…それより治夫、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。いちよう念のために今日1日、入院しなきゃいけないけどね」
「…そう」
「…それより隼人は?」
「………え?」
「隼人は一緒じゃないの?」
治夫が隼人の名前を口にした途端、寧音の表情が変わった。
「…どうして隼人と一緒に来なきゃいけないのよ…隼人のせいで治夫がこんな事になっているのに…!!」
「…寧々」
「隼人を庇ったせいで…そうよ!この前だって、隼人を庇って車に跳ねられて、大怪我したじゃない!今回だって、隼人を庇って階段から落ちてこんな事に…それなのに、治夫は隼人、隼人って…」
話している内に、怒りが振り返してきたのか、寧音の言葉に熱が入ってくる。
「…寧音…もしかして、隼人に何か言った?」
治夫の質問にも、寧音は当然の事のように頷く。
「治夫に近付かないでって言ったわよ。当たり前でしょ」
その寧音の言葉を聞いた途端、それまで平静だった治夫の顔色が変わった。
「…どうしてそんな、余計な事を…」
「だって、こんな事になったのは隼人の…」
「………寧音」
治夫がゆっくりと寧音の言葉を遮る。
「…今回の事は、隼人に責任はない。それは寧音の方がよく知っているんじゃないか?」
「…何を…私は何も…」
治夫に詰め寄られ、言葉を詰まらせた寧音は少しの間、視線を彷徨わせていたがやがて悪戯を見付かった子供のような顔で、治夫の顔色を窺うような、悔しそうな色を瞳に滲ませて唇を噛み締めた。
「…隼人は気付いてないよ。気付いているのは俺だけ。あそこには隼人と俺しか居なかったし、隼人は上の空で階段を下りていて寧音に気付いてなかっただろうしね」
治夫の言葉を聞いている寧音の顔は青ざめ、その瞳には涙が滲んでいる。
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