学生時代

Me-ya

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6.瞳の中、君に

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隼人が初めて見せた笑顔に、ドキッとしてしまう。

嬉しそうな顔をして、テテテッと俺の側に走ってくる隼人。

…隼人のお尻から(幻の)尻尾が見える…。

時々、可愛いんだよな、隼人って。

本人には内緒だけど。

…先刻、隼人の笑顔にドキッとした事も秘密。

それより…。

「…あのさ、そんなに気を使わなくてもいいから」

隼人と表面だけじゃなく本当に親しくなる為に、これだけは言っておかないと。

「俺も寧音と居たいと思えば、そう言うし。だいたい俺が隼人と昼を食べたいと思って声をかけたんだしさ…まあ…隼人が嫌だってんなら…」

「そんな事、ない!!」

隼人の力一杯の否定に、俺は少し吃驚する。

…まあ…嫌われていないだろうとは思っていたけど…俺が近付いたり、話しかけると隼人は逃げるような素振りをしたり、困惑した顔をするから…実は少し、ヘコんでいたんだよな。

「…じゃ、これからは俺達の間に遠慮はなしという事でいい?」

「…うん」

俺の言葉に、少し頬を紅くして隼人は頷く。

少し戸惑っているような態度は気になったが…それは、以前の…隼人の記憶にある俺と、記憶をなくした今の俺が若干、違うから違和感を感じるのかもしれない。

あまり心配する事もないだろう。

そういう事は、時間が経てば感じなくなるだろうし。

そう軽く考え、とりあえず隼人に嫌われてないと分かって安心した俺は…昼間の事もあり…寧音に誘われるまま、その日の放課後は寧音と一緒に帰る事にした。

寧音が嬉しそうに、俺の腕に自分の腕を絡めて歩く。

そうやって下校する俺達の姿を、隼人がどんな表情で、どんな思いで見詰めていたのかなんて…俺は気付かなかった。

―俺の腕に腕を絡めて嬉しそうに歩く寧音に気をとられていたから。

記憶がなくなる前は寧音と付き合っていたかもしれないが、今の俺にはその時の記憶がないし…。

こんな風に腕を組まれても、何とも思わない。

かといって、記憶がないから付き合いを解消しようというのも…。

…寧音が女子の間で孤立している事には、気付いていた。

その原因の一因が、俺にある事も…。

だから、ますます意地になっているのか…。

それが分かるだけに…今は言えないよな。

付き合いを止めようなんて。

かといって、このまま付き合いを続けていても…。

たぶんこの先、俺が寧音を好きになる事はない…ような気がする。

付き合っていた記憶が戻らない限り。

…寧音には、悪いけど。

今は、寧音も意地になっているだけだろうし。

そんな時に別れを切り出せば(俺に付き合っている記憶はないけど)、ますます意地になるだろう。

だから、寧音に距離を置こうと言うのはもう少し…時期をみた方がいいとは思うが…。

時期をみて距離を置き、そして離れていけば…。

そしたら…今は三年で、受験勉強が忙しくなるから、寧音も俺に構わなくなるだろう。

そう考えて、少しづつ寧音と距離を置き始めた矢先―。

隼人が、俺を避けはじめた。

それも、露骨に。

…いや、今迄も俺を避ける素振りをみせる事はあったが、声をかけると立ち止まり俺を振り返っていた。

それが、今は俺が声をかけると、一目散に走り去ってしまう。

…何故だ…?

オマケに、それと同時に、隼人はアイツと一緒に居る事が多くなった。
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